ダイバーズウォッチは日常生活で使える? シチズン プロマスターをテスト

2022.05.30

ダイバーズウォッチを評価する際、どうしてもスペック面を軸にレビューしがちだ。しかし、ダイバーズウォッチといえども、本来は日常生活でも使用するもの。そこで今回は装着感を中心とした時計全体の“着用感”に着目して、シチズンの「プロマスター CC5006-06L」を2週間着用。普段の生活のお供として、どれだけの実力があるかを測る。

佐藤しんいち:文・写真
Text & Photographs by Shinichi Sato
2022年5月30掲載記事

プロマスター マリーン CC5006-06L

大型ながら腕への収まりが良いケース形状は高評価。視認性の高いダイアルデザインも良い。また、今作のデザインはアウトドアウェアとの相性が良いことも特徴だ。


 シチズンがハイスペックなツールウォッチを作る際、表面処理を施したチタンケースに光発電の「エコ・ドライブ」を組み合わせるのが定石だ。また、そこへGPS衛星電波受信機能も加えられる場合がある。今回インプレッションする「プロマスター CC5006-06L」は、まさにこれらを網羅した構成を持つダイバーズウォッチであり、シチズンらしいモデルである。このようなモデルの場合、どうしてもスペック面に注目しがちであるが、今回は装着感をはじめとした使用感に着目してインプレッションをしてみたい。ツールウォッチに長年取り組んできたシチズンの実力はいかほどであろうか?


シチズンのハイスペックツールウォッチの黄金比

 今作は「光発電GPS衛星電波時計として世界初のISO6425に対応した200m防水ダイバーズウォッチ」である。もう少し詳しく述べれば、光発電の「エコ・ドライブ」によって潜水中における計時機能の停止が予防でき、GPSを捕捉していれば正確な時刻表示を実現するだけでなく、世界各地で作業を必要とせずに時刻自動修正が行われる機能を有する本格的なダイバーズウォッチである。パワーリザーブは針が稼働状態で約2年であり、パワーセーブ時には約7年となる。

プロマスター マリーン CC5006-06L

シチズン「プロマスター マリーン CC5006-06L」
光発電電波クォーツ(Cal.F158)。パワーリザーブ通常稼働時約2年(パワーセーブ時約7年)。スーパーチタニウム+デュラテクトDLC+デュラテクトMRK+DLC(直径47.0mm、厚さ15.6mm)。200m防水。16万5000円(税込み)。

 ケースはシチズンが得意とするスーパーチタニウム製であり、チタニウム素材にガスを表面から浸透させて素材表層を硬化させるデュラテクトMRKを施し、その上にデュラテクトDLCを重ねることで艶のあるブラックカラーとしている。これらの組み合わせにより軽量で、打ちキズに強く、滑らかかつ擦りキズ強いケースが仕上がっている。

「エコ・ドライブ+チタンケース+デュラテクト」の組み合わせ、あるいはここにGPS衛星電波受信を付け加える手法はシチズンのハイスペックモデルの黄金比である。今作のように、機能や素材、表面加工で注目ポイントが多いと見落としがちになるが、ツールウォッチは着用感をはじめとした使用感の良さが重要であると筆者は考えている。その実力はどれほどだろうか?


非常に大きいケースの割に優れる着用感

 今作は直径47.0mm、厚さ15.6mmとかなり大型である。軽量なチタン素材で作られているとはいえ、厚手のラバーストラップとの組み合わせにより重量は101gで、手に持った時にしっかりとした存在感がある。チタン製との前情報があったため「素材の割に重い」と筆者は感じたほどだ。ケース径は、ダイアルを広く取って視認性を高めるのと同時に、発電面積を大きくするために必要であったとして、はたしてこの厚さは必然であったのだろうかと疑問が残る。

プロマスター ケースサイド

ケースは直径47mm、厚さ15.6mmと大ぶりな印象。加えて、重量もチタンとしてはそこそこある。しかし、実際の着用感は良好だ。これはケース直径に対して全長がそこまで長くないこと、ストラップのグリップ感が高いためだろう。

 腕に載せてストラップをタイトに調整してやると、手に取った時の印象とは少し異なってくる。筆者の周長17.5cmの手首では、今作は大柄ではあるがラグが短くて飛び出しが小さく、手首へのフィット感が良い。気になる厚みやケースバックの飛び出しも、ラグ形状やストラップによって着用感が上手くコントロールされている。このフィット感であれば、筆者よりもう少し腕の細い人でもマッチする可能性があるので、数値や手に取ったイメージだけでなくて試着してみることをお勧めしたい。ただし、このモデルで袖への収まりを語ることが野暮であることは、着用すればすぐに分かるだろう。

 また、着用してしまえば重量も気になるほどではないため軽快感がある。ケースバックの飛び出しが大きく厚みもあるため重心は高い傾向にあるが、チタン製でサイズの割に軽量に抑えられており、着用時の暴れを小さく抑えることができている。ステンレススティール製であると着用感が破たんしていたかもしれないので、チタン製とした効果があらわれている。

プロマスター マリーン CC5006-06L

ストラップはウレタン製。通常時用の波模様付きのもののほかに、ダイビング用のより長いものも付属される。いずれも厚みがあり、強度は十分だ。

 ストラップの表面には海を思わせる波の模様が刻まれており厚みのあるウレタン製だ。柔らかくてコシがあり、着用感も良い。バックルもチタン製で見映えと手触りが良い。ストラップはやや長くて筆者の手首でも余りが生じるが、本格的なダイビング用モデルであるのでウェットスーツ着用時にも適応する長さなのだろう。そう思って調べると、ここからさらに延長バンドも付属するらしい。おそらく北極の海に潜れるほどの極厚ウェアを想定しているのだろう。

 また、ストラップのグリップ力が高い。これは着用時に滑りにくい利点があるが、遊革への挿し込みがタイトで引っ掛かりが生じてしまう原因にもなっている。また、同じ原理で抜けにくい。これはダイビング中の事故防止の観点から必要な仕様であったと考えている。

プロマスター マリーン ストラップ

シチズンのダイバーズウォッチ全般に言えることだが、日常での使用で付け外しが困難なほどにストラップの遊革、定革へのグリップが高い。しかしこれは逆に言えば、ダイビング中に不意に外れる心配がないということだ。すべてのダイバーズウォッチにISO6425の新規格を適用させるほど、真摯にこの分野へ取り組むシチズンらしい配慮と言える。