ピアジェ/ピアジェ アルティプラノ

FEATUREアイコニックピースの肖像
2020.08.18

PIAGET ALTIPLANO
最もシンプルな意匠を持つ現行2針モデル

ピアジェ アルティプラノ

ピアジェ アルティプラノ
1998年発表のCal.430Pを搭載したのが、同年からスタートしたピアジェ アルティプラノ コレクション。ピアジェらしい薄型ケースに、現代風のディテールを接ぎ木している。手巻き(Cal.430P)。2万1600振動/時。18石。パワーリザーブ約43時間。18KWG(直径38mm)。3気圧防水。202万5000円。

 1998年のキャリバー430Pで、再び薄型ムーブメントの開発を試みたピアジェ。大きな成功をもたらしたのが、新コレクション「ピアジェ アルティプラノ」であった。

 ちなみにアルティプラノとは、スペイン語で「高原」の意味。アルゼンチン、チリ、ペルー、ボリビアの4カ国にまたがるアルティプラノ高原をイメージしたとピアジェは説明するが、アルティプラノが真に意味するのは、実のところ、ジュウ渓谷の高台であるラ・コート・オ・フェではなかったか。

 そう解釈して差し支えないほど、このコレクションはピアジェの原点に立ち返ったものであった。一例が、61年モデルと同様の2ピースケースだろう。かつてのモデル同様、裏ブタとラグを一体成形して、ケースに剛性を持たせていることが分かる(頑強さを重視するのはピアジェらしい)。またベゼルの側面を絞って時計をより薄く見せる手法や、申し訳程度にラグを伸ばす手法も、かつてのピアジェが好んだものだ。

 とはいえ細部を見れば、アルティプラノが最新の時計であることは容易に理解できる。まずは文字盤の仕上げ。昔風の強いサテンではなく、ブラスト処理された文字盤を備えている。加えて文字盤のツヤを大きく落としたのも、ここ最近のトレンドを汲んだものだろう。また文字盤がボンベ状に成形されたのも、かつての薄型時計では考えられなかったことだ。薄型時計でさえ立体感には無関心でいられなくなった現代ならではのモディファイといえるかもしれない。

 過去のモデルに敬意を払いながらも、過剰にならない程度にトレンドを盛り込んだアルティプラノ。これほどパッケージングの巧みな薄型時計は、過去のモデルを含めても希だろう。筆者は、現行のあらゆる薄型時計の中で、アルティプラノが最も好きである。

ピアジェ アルティプラノ

(左)1961年のモデル同様、側面を絞ったベゼル。ラグをベゼルより一段低く取り付けて、側面をいっそう薄く見せるという手法もやはり同じである。(右)ブラスト処理された文字盤。高級時計でさえも、あえて光り方を抑えるという現代のトレンドに即した処理だ。またわずかにボンベ状になった文字盤も、現代風と言える。なおこの時計で興味深いのが、インデックスの処理。文字盤が大きくなったことを踏まえて、インデックスも目立つものに変更された。とはいえ、ただ線を太くすると針とのバランスが崩れてしまう。そこで1本線と2本線を交互に配することで、視認性と細さを巧みに両立させた。文字盤の大きさに比して針はやや短いが、薄型ムーブメントのトルクを考えればやむを得ないところか。(中)ケースの側面。ラグと一体成形した裏ブタを、ベゼルにねじ留めしていることが分かる。剛性と防水性を持たせるための手法である。(左下)やはり現代風に改められたバックル。薄型でさえ立体感を考慮せざるを得なくなったことが、形状からもよく分かる。(右下)裏ブタ側。この時計で注目すべきは、ストラップの処理である。1990年代の時計だけあって、ケースとの間隔はまだ開いている。しかしケースとの間が間延びしないよう端末を丸く整形している。老舗らしい細やかなアップデートだ。