ウブロ/ビッグ・バン[ウニコ&コンプリケーション編]

FEATUREアイコニックピースの肖像
2018.07.31

広田雅将、鈴木裕之:取材・文 吉江正倫、三田村 優:写真
[連載第31回/クロノス日本版 2016年1月号初出]

2005年の発表以降、現在も快進撃を続けるビッグ・バン。しかしここまでの支持を得た理由は、ウブロの卓抜したマーケティング手腕だけではない。同社は毎年のようにビッグ・バンを改良。独自の新素材を積極的に採用するだけでなく、ケース形状も刷新し、自社製ムーブメントやコンプリケーションまで戦列に加えたのである。誕生からの10年で大きく変わったビッグ・バンを、改めて俯瞰する。


BIG BANG FERRARI
〝ウニコ搭載ビッグ・バン〟の嚆矢となった跳ね馬

ビッグ・バン フェラーリ チタニウム カーボン
2015年初出。造形や搭載ムーブメントなどは従来のフェラーリに同じ。しかしベゼルは、チタニウムを混ぜ込んだ独自のカーボン素材に変更された。面に歪みのないケースや、部品同士の精密な噛み合わせは、ウブロのフラッグシップと呼ぶに相応しい。自動巻き(Cal.HUB1241)。38石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。カーボン×Ti(直径45mm)。10気圧防水。世界限定1000本。300万2400円。

 2011年11月に始まったウブロとフェラーリのパートナーシップ。翌年発表された第1作は、ケースに18Kマジックゴールドとチタンを採用。ムーブメントには自社製のウニコが選ばれた。この「ビッグ・バン フェラーリ」では、従来のビッグ・バンからケース形状とサイズが改められた。

 フェラーリとの会見に先立つこと10カ月、当時CEOだったジャン-クロード・ビバーは「ラグジュアリーインサイダー」誌のインタビューに対し、次のように答えている。

「私は〝ウブロにとって何が最善か〟のみに興味を持っている。つまり個人的な理由で、会社の方向性を相応しくない方向に導かないということだ。ご存じの通り、私はブランパンではF1とのパートナーシップを仕掛けなかった。それは正しい選択でないからだ」

 F1との連携に始まったウブロとモータースポーツとの関わりは、フェラーリとのパートナーシップ提携で完成に至った。しかし実のところ、ウブロが組みたかったのは、何よりもフェラーリだったのである。05年、ウブロCEOに就任して間もないビバーは、当時フェラーリのCEO兼レーシング部門責任者であったジャン・トッドと会っている。彼はフェラーリとコラボレーションを組むべく、トッドのために特別なビッグ・バンを持っていったという。しかしトッドは他社と組んでしまったため、後にそのモデルは「レッド・バン」として販売されたが、これがビッグ・バン フェラーリ誕生前夜の、もうひとつのストーリーである。

 こうした経緯を考えるまでもなく、ウブロがフェラーリモデルに力を入れるのは当然の帰結だろう。「フェラーリとの関係は、ライセンス契約ではなくパートナーシップ」と強調するビバー。彼にとってフェラーリモデルが、今も昔も特別な存在であり続けていることは、本作の非凡な完成度が示すとおりだ。

(左上)現行ビッグ・バン フェラーリの美点に、精密に仕立てられた文字盤がある。これはサファイアガラスの板に、インデックスを接着したもの。他メーカーも追随しようとしているが、これだけ厚いインデックスを接着するメーカーは、現時点ではウブロ以外にない。ブランドロゴも、印字は完璧である。(右上)2011年に、ウブロはカーボンの成形に特化したプロフュージョンSAを買収。以降、R&D部門の責任者であるマティアス・ビュッテや、責任者のジャン・ピエール・コラーは、カーボンの改良に努めてきた。その一例が、ベゼルに採用されたカーボンにTiを混入した新素材。製法はまったく不明だが、Tiを混ぜたカーボンをシート状に成形し、それを何層にも重ねていることが分かる。(中)ビッグ・バンの意匠を踏まえつつ、造形がより複雑になったケースサイド。また部品同士の噛み合わせも、2005年当時のビッグ・バンに比べて精密になった。(左下)プッシュボタンに刻印されたフェラーリの文字。それぞれのプッシュボタンはケース外側にヒンジがあり、テコを押すようにして動く。大きなボタンと相まって、操作感は極めて快適だ。(右下)ケースバックから覗く、自社製ムーブメントのウニコ。文字盤側に積算輪列を置くという設計により、巻き上げ機構の配置などにはゆとりが見られる。緩急針はエタクロン型。