A.ランゲ&ゾーネ/グランド・ランゲ1 Part.1

FEATUREアイコニックピースの肖像
2023.05.22

1994年に発表された「ランゲ1」は、紛れもない傑作であった。しかしそれ故に、兄貴分とも言うべき「グランド・ランゲ1」は、長らく愛好家たちの興味の外に置かれることとなった。時計好きたちの認識が変わったのは、2012年の第2世代からだろう。かつて大きなランゲ1でしかなかったグランド・ランゲ1は、今や明快な個性をもって時計好きたちを揺さぶろうとしている。

グランド・ランゲ1

星武志:写真 Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Hiroyuki Suzuki
[クロノス日本版 2023年1月号掲載記事]


GRAND LANGE 1[1st Gen.]
大径ケースを初採用したランゲ1の兄弟機

グランド・ランゲ1

グランド・ランゲ1
2003年の第1世代。本作は、著名なA.ランゲ&ゾーネのコレクターであるa-ls氏が所有するイタリア向けの限定版(Ref.115.046)だ。手巻き(Cal.L901.2)。54石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWG(直径41.9mm、厚さ11mm)。30m 防水。個人蔵。

 1994年に発表された「ランゲ1」は、まずドイツ市場を中心に、少しずつ支持を受けるようになった。爆発的な人気を集めるようになったのは97年以降である。トランスパレントバックから荘厳な仕上げのムーブメントを見せるランゲ1は、ドイツに留まらず、多くの時計好きに訴求するようになったのである。続いて99年にはインデックスがプリントからアプライドに変更され、ランゲ1はひと通りの完成を見た。

 ランゲ1の成功を受けて、同社を指揮するギュンター・ブリュームラインはコレクションの拡大を図った。より広い層に向けるべく、98年には直径36.1mmの「リトル・ランゲ1」を発表。続いて2003年には、直径41.9mmの「グランド・ランゲ1」を追加したのである。とりわけ重要なのは後者だった。

グランド・ランゲ1

通常のグランド・ランゲ1とは全く異なるディテールを持つのがこのイタリア限定モデルだ。2007~09年にかけて100本のみ製造された。単色の文字盤と、青焼きの針及びインデックスを持つ。2003年に発表された3モデルはツートーン文字盤を持っていたが、04年の「ルミナス」、そして07年の本作以降、ランゲ1に同じ単色文字盤が採用されるようになった。
グランド・ランゲ1

基本的にランゲ1と同じムーブメントを載せた第1世代は、ケースサイズに比して明らかにアウトサイズデイトが小さい。もっとも、「2」の先端やパワーリザーブ表示の軸をミニッツトラックに重ね、スモールセコンドを極大化することで、デザインのバランスを取っている。

 ランゲ1の直径は38.5mm。ムーブメントのサイズを考えれば妥当な大きさだったが、A.ランゲ&ゾーネの主な市場であるドイツでは、明らかに小さかった。1970年代に、直径42mmのIWC「ポルトギーゼ」を限定で作らせたほどドイツ市場はビッグウォッチを好んだのである。

グランド・ランゲ1

ケースサイド。グランドと命名された本作は、オリジナルのランゲ1に比べて3.4mm大きく、1mm厚い。また、ラグがわずかに太くなったほか、ベゼルも細身に仕立てられた。リュウズ下に見える裏蓋の突起は、巻き芯を保持するプレートを覆うためのもの。L901系を載せたモデルに共通するディテールだ。

 1994年の復興以来、A.ランゲ&ゾーネはひとつのモデルにひとつのムーブメントという原則を掲げていた。ただしサイズ違いのモデルに新規でムーブメントを起こせるほどの体力は、当時の同社にはまだなかった。結果として、2003年のグランド・ランゲ1は、ランゲ1と全く同じムーブメントを採用せざるを得なかったのである。

 大きなケースに小さなムーブメントの組み合わせは、果たして本作に、ランゲ1とは異なる外観をもたらした。大きなスモールセコンドやインデックス、そして文字盤にかかったパワーリザーブ表示など。これらはきわめて個性的だったが、コレクションとしての成熟は、第2世代を待たねばならなかった。

グランド・ランゲ1

ランゲ1に比べてわずかに太く短くなったラグ。大きめのインデックスやスモールセコンドとバランスを取るためか。
グランド・ランゲ1

ケースバックからのぞくCal.L901.2。基本的な眺めはランゲ1に同じだが、裏蓋を固定するネジが細いといった細かな違いがある。



Contact info:A.ランゲ&ゾーネ Tel.0120-23-1845


シリーズ史上最高の完成度。大作を押し除けて時計雑誌編集長がグランド・ランゲ1を推す理由

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【4K動画】 A.ランゲ&ゾーネ「ランゲ1」解説。新型と旧型で何が変わったのか?

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アイコニックピースの肖像 A.ランゲ&ゾーネ/ランゲ1

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