ユリス・ナルダンの代表的なコレクションであり、時計業界でいち早く脱進機にシリコンを用いたことで知られる「フリーク」。2025年9月、このフリークをベーシックにした「フリークX」より、日本市場に向けた限定モデルがリリースされた。ドンツェ・カドランが手掛けたエナメル文字盤を備えた、日本限定モデルの実力とは?

ユリス・ナルダンから「フリーク X グレー エナメル 日本限定モデル」が登場!
2001年、時計業界でいち早く脱進機にシリコン素材を取り入れたユリス・ナルダンの「フリーク」。また、「文字盤なし。針なし。境界なし」というコンセプトの下、針ではなくフェイスの中央に巨大カルーセルを備え、かつリュウズを持たないという独創的な機構・意匠においても、今なお革新的な腕時計として知られている。このコレクションは登場以来、試行錯誤が重ねられる中で名作が生み出されており、そのうち「フリークX」は2019年に誕生したモデルだ。フリークXはフリークをよりベーシックにしたモデルとなっており、ケース3時位置にリュウズを備えている。
そんなフリークXから、日本市場に向けた限定モデルが登場した。「フリーク X グレー エナメル 日本限定モデル」だ。

自動巻き(Cal.UN-230)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。Tiケース(直径43mm)。50m防水。日本限定25本。700万7000円(税込み)。
日本でのみ、わずか25本が販売される本作の特徴は、ギヨシェ装飾と組み合わされたグレーのエナメルディスク、“ギヨシェフランケ”を有していることだ。このディスクを手掛けているのは、現在ユリス・ナルダン傘下にある、エナメル文字盤専門工房ドンツェ・カドランだ。
前述の通りフリークは針も文字盤も持たない。代わりにムーブメント自体が回転し、エナメルディスク上のポインターが時間を、フライングカルーセルが分を指し示す仕様となっている。フリークXの回転ディスクはムーブメントと一体化した可動性パーツで、かつ複数のネジ留めを備えているため、一般的な文字盤と比べてエナメル加工をより複雑にしている。
ドンツェ・カドランは卓越した技術でこの複雑さを克服する。ディスクは回転カルーセルの視覚効果を高めるギヨシェが施された後、原料の固形化合物を洗浄し、伝統的な乳鉢と乳棒を使って細かい粉末にしたうえで、入念な工程によって均一性と色調が確保されたグレーエナメルとなる。なお、このグレーエナメルは今回のフリークXのために開発された。適切なブレンドとなった顔料は水が加えられ、プレートに注意深く塗布される。その後、約800℃で焼成され、冷却と洗浄の後、さらに3~4層の顔料を塗布して焼成される工程を経ることで、それぞれの層が色合いの深み、濃さ、輝きを高めるのだ。焼成が完成すると、ディスクには手作業によって研磨が施される。
焼成中の窯の中では気泡やひび割れなどの欠陥が生じるリスクがあり、しばしば工程のやり直しが必要となる。そんな中で本作の回転ディスクは、1枚1枚順番に製作され、各ディスクの完成には少なくとも丸1日、およそ8時間から12時間を要しており、まったく同じディスクはふたつとない。そんな工程や技術へのオマージュを込めて、フリークXでは初めて、アワーディスクに秘密の「DONZÉ ÉMAIL」の刻印があしらわれた。
フリークならではのアヴァンギャルドなキャラクターはそのままに、落ち着いたグレーのギヨシェフランケディスクが組み合わされることで、主張しすぎない意匠に仕上げられた本作。チタン製ケースはブラックDLC加工がされており、ブラックカラーがこの落ち着いたデザインに寄与するとともに、傷付きにくさも獲得している。ストラップはホワイトのステッチがあしらわれたブラックのバリスティックラバーとなっており、デザインに統一感が生まれている。
搭載されるムーブメントは自動巻きのCal.UN-230。他のフリークXにも採用されており、本作のフライングカルーセルという機構を確立するために欠かせないものとなっている。ローターは18Kゴールド製で、個々にシリアルナンバーが刻印されている。
本作の販売価格は税込み700万7000円。購入後の保証期間は5年となっている。
商品ページ:https://www.ulysse-nardin.com/ja-jp/watches/freak/2303-270le-1ae-j-3a