シングルハンドのマイスタージンガー「ルナスコープ」

2018.08.08
Text by Logan R. Baker

5分間隔で時間を表示するシングルハンドの時計の領域において、その独自性を誇るドイツの時計メーカー、マイスタージンガー。1本の針を使った時刻表示を追求し、他に競合を見ないが、時々この事実自体がブランドの発展性を制限しているのではないかと思うことが多々あった。2018年で17周年を迎えるこの会社は、ブランドをさらに発展させる要因と思われるようなひとつの時計を発表した。そしてこのタイムピースは2018年のヒーローとなるだけでなく、ブランドが一歩先へ進むための足がかりとなったのである。

マイスタージンガー「ルナスコープ」。自動巻き(Cal.ETA2836ベース)。パワーリザーブ約38時間。SS(直径40mm)。5気圧防水。カーフストラップ。49万8000円(税別)。

 マイスタージンガー「ルナスコープ」は、2018年3月にバーゼルワールドで発表された。時計上部のほぼ全体を覆う大きなムーンフェイズ表示が特徴の時計である。直径40mmのケースサイズに、ベルベットのような深いブルーカラーの文字盤が収まり、写実的な月面が描かれている。

 このブランドファンの好みであるパンゲアシリーズの、直径40mmスティールケースを採用したルナスコープの最大の特徴は、アストロノミカルプレシジョンを持つムーンフェイズ表示である。地球の周りを公転する月の平均的な周期は、29日と12時間44分2.9秒。通常のムーンフェイズ機構では、この数字を29.5日としてムーブメントに搭載している。これによって1年後には約8時間のズレが生じ、3年ごとにまるまる1日の修正が必要となってくるが、マイスタージンガー「ルナスコープ」の中に搭載されているムーブメント(月のモジュールを組み合わせて改良した約38時間のパワーリザーブを持つキャリバーETA2836)が異なる点は、精度をさらに高めて、128年に一度わずかな修正を加えるだけというところにある。

 ルナスコープには2種類の文字盤のカラーが用意されている。オパーリン文字盤のシルバーカラーと、ムーンフェイズ表示のブルーカラーの夜空と一体感があるサンバースト仕上げのダークブルー文字盤である。1カ月近く私が着用していたのは後者の方であり、期待通り、マイスタージンガーを着用する喜びを与えてくれた。それは伝統的な時刻表示機器としての楽しみ、バウハウスに基づいたスタイリング、そして全体的な統一感(例えばインデックスについて、1桁で表示される部分についてもバランスを取るため2桁で01、02、03と記されている)などであり、時計全体のデザインに大きな影響を与えている。


 この時計で特に印象的だったのは、文字盤上の動的な表示が少ないため、ムーンフェイズ表示の荘厳な印象がさらに高められているという点である。最大限にスペースを取った表示方法によって、表示手法が補足的なことが多いパーペチュアルカレンダーなどに比べて、ムーンフェイズをカレンダー表示の主役として存分に鑑賞できるのだ。

 私にとっては、そこがルナスコープが他に比べて抜きんでているところではないかと思う。まるで生活の中に現れた飛び出す絵本のように、何にも邪魔されずゆっくりと進む月というものは心に残るものである。単純に空に浮かぶ月というだけではなく、真の意味で、時計作りの傑作を見いだす喜びという意味においてである。

 ふたつのモデルとも6時位置にデイト表示を備える。ブルーモデルにはコニャックカラーのカーフストラップが、シルバーオパーリンモデルにはブラウンのレザーストラップが合わせられている。マイスタージンガー「ルナスコープは」49万8000円(税別)で発売中だ。


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