ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・アワード最優秀賞は日本の篠原那由他さんが受賞

2020.04.20

篠原那由他さんが製作したレトログラード式表示機構に栄冠

 第10回ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワードの栄冠は、東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジに在籍する篠原那由他さんに輝やいた。篠原さんが製作したレトログラード式表示機構は、他の手強い候補者による7 作品をしりぞけて、最優秀の評価を得た。このコンテストでは賞金1万ユーロが授与される。

5 カ国から集う8 名の時計師の卵が競い合った

 第10 回ウォルター・ランゲ・ウォッチメイキング・エクセレンス・アワードの課題は、「自由に選べるレトログラード式表示の設計と製作」だった。5 カ国から参加した次代を担う時計師の卵たち8 人は、いずれも在籍校からこのコンクールに推薦された精鋭だ。2 月にドレスデンに審査員4 人が集まり、応募作品1 点1 点について講評した。審査員にはA.ランゲ&ゾーネの商品開発ディレクターを勤めるアントニー・デ・ハス、時計専門ジャーナリストのギスベルト・ブルーナー氏とペーター・ブラウン氏、そしてドレスデン数学・物理学サロン所長のペーター・プラースマイヤー氏が名を連ねた。評価項目は、アイデアの独創性と斬新さ、機能性、技術と技工のクオリティ、そして見た目の美しさだ。今年は、特に最後に挙げた審査基準に大きなウエイトが置かれた。

メイン表示が最後の目盛りに達したらゆっくりと穏やかに始点に戻る

 東京のヒコ・みづのジュエリーカレッジに在籍する篠原那由他さん(25歳)の「スロームービング・レトログラード」と名付けられた作品は、上述の審査基準のすべてにおいて審査員を感心させた。そのムーブメントは、ダイヤル側に時と分をそれぞれ独立させたレトログラード式表示を、そして裏側にスモールセコンドを搭載している。篠原さんは、提供されたユニタス製キャリバー6498-1を根本的に作り直し、遠心調速機を利用して針を戻すように二つの輪列を組み込んだ。これにより、メイン表示が最後の目盛りに達したらゆっくりと穏やかに始点に戻る。完全に機能するだけでなく入念な仕上げ装飾も美しいこのムーブメントは、篠原さんの創造力の豊かさが反映された機構、見事なデザイン、優れた製作技術で他の応募作品を圧倒し、最優秀賞に輝いた。

全応募作品(篠原さんの作品は中段左)

 また、レベルの高さで審査員団をうならせた作品2点にも個別に賛辞が贈られた。フィンランドのエスポー市にあるフィンランド・ウォッチメイキング・スクールに在籍するアッテ・ピルッティイェルヴィさん(28歳)の作品は、ダブル・レトログラード式12時間表示に革新的な二針表示と蓄光顔料を塗布した目盛りが光るデイ・ナイト表示を組み合わせるという非凡なアイデアで高評価を得た。オーストリアのカールシュタイン高等技術学校に通う弱冠17歳のルーカス・シュトラースベルガーさんは、本コンクール史上最年少の参加者だ。シュトラースベルガーさんの作品は、半円形のレトログラード式時分表示を一番良く目を引く12時位置に配置するという伝統的なアプローチで審査員たちの支持を集めた。


Contact info: A.ランゲ&ゾーネ Tel.03-4461-8080