【84点】オメガ / シーマスター アクアテラ GMT

FEATUREスペックテスト
2013.02.03

OMEGA SEAMASTER AQUA TERRA GMT

美しく、そして賢く。世の男性が女性に求める魅力を腕時計に凝縮したのが、オメガのシーマスター アクアテラ GMTである。

ユリア・クナウト:文 Text by Julia Knaut
ニック・シェルツェル:写真 Photographs by Nik Schölzel
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto


point
・巧緻を極めた美しいデザイン
・高性能マニュファクチュールムーブメント

point
・ストラップの作りが簡素

世知に長けた時計

化の歴史の中で、適応能力は生き残りがかかっている重要な戦略である。動植物は生き残るために、流線形の形態へと変容し、カムフラージュできるように進化を続けてきた。時計の世界においても、絶え間なく変化する条件に適応できる能力が求められることは、「シーマスター アクアテラ GMT」を見ればよく分かるだろう。モデルネームからも明らかなように、シーマスター アクアテラ GMTは水陸両用の腕時計である。こうした柔軟性だけでなく、ステンレススティール製のシーマスター アクアテラ GMTは、セカンドタイムゾーンや150mの防水性を備えていることから、世界旅行に携行したいアイテムの最有力候補となりそうだ。さらに、スポーティーでエレガントという、ふたつの顏を併せ持っているので、ヨットクルーズに出かける際も、イブニングパーティーに出席する時でも、違和感なく着用することができる。

旅先では誰でも、心地よいモノに囲まれて過ごしたいと願うのではないだろうか。バカンスであろうと、出張であろうと、1日の終わりには柔らかいベッドが待ち遠しいし、翌朝には良質な朝食が取れることを期待する。新型シーマスターを脱着する瞬間には、こうした期待感がいやが上にも大きくなる。シンプルながらも調和の取れたデザインは、見ていて楽しい。艶やかな黒文字盤は、アクアテラ特有の縦ストライプ模様で装飾されており、ホテルのテラスに置いてあるようなチーク材で出来た家具の表面を想起させる。シーマスター・コレクションの一員であることを認識させるのは、ステンレススティール製のケースである。ポリッシュとサテンのコンビ仕上げの面を備え、弧を描くようなケースサイドとストラップ側にすらりと伸びたラグが、このケースの特徴である。この時計は一見、控えめな印象を与えるが、詳細に観察してみるとディテールへのこだわりを随所に発見することができる。ステンレススティール製のクサビ型インデックスは、仕上げの異なる複数の面を持ち、文字盤の中心に向かって薄くなるようにデザインされているため、立体的な印象がより一層、引き立てられている。また、ファセットが施された時分針は、上面がサテン仕上げになっている。インデックスと針の好感度の高さは、丁寧に塗布された白い蓄光塗料によって完成されている。外装の加工品質も非常に高く、ケースやベゼル、リュウズに至るまで、極めて精巧に作り込まれている。ただ、ラグの裏側のポリッシュ仕上げにやや粗さが見られるのが、ごく小さな難点である。