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ジン/T1.B(1/1) 2016年07月号(No.65)

ジン
T1.B

ジンのT1.Bは、チタン製でプロフェッショナル仕様のダイバーズウォッチである。
ブラックが多いジンの特殊時計の中で、テクノロジーを満載したT1.Bのブルーカラーがひときわ光彩を放つ。

イェンス・コッホ: 文
Text by Jens Koch
OK-PHOTOGRAPHY: 写真
Photographs by OK-PHOTOGRAPHY
岡本美枝: 翻訳
Translation by Yoshie Okamoto

point

・傷に強いベゼル
・防水性が極めて高い
・独自の特殊技法で結合されたダイバーベゼル

point

・ジンのモデルとしては高額
・やや完璧さに欠ける精度

深海を
制する勇者

ンは、用途が明確で、機能性に優れた時計を作るブランドとして知られている。ジンの時計はその頑丈さで定評があるが、さまざまなテクノロジーを搭載することで堅牢さと耐久性をより高めることに成功している。フランクフルトを拠点とするこのブランドは、デザインよりも機能を優先することを常に信条としてきた。これがまさにブランドの魅力でもあるわけだが、今回のモデルにはトレンドカラーのブルーが採り入れられている。ジンはこれまで貫いてきた己の理想に背こうとしているのだろうか。色使いによって視認性が阻害され、さらなるデメリットにつながり得るのなら、この推測は正しいかもしれない。だが、T1.Bでダークブルーのマットな文字盤から白い蓄光塗料が浮かび上がる様は、黒文字盤における明確なコントラストに比べて遜色なく、こうした懸念とはまったく無縁である。


ツールウォッチ

 文字盤の色がブルーになっても、T1.Bは正真正銘のツールウォッチである。ケースがチタン製なので、ステンレススティールとは異なり、海水に触れても腐食することがない。潜水時間を計測するための目盛りを備えた回転ベゼルは、他のモデルと同様、反時計回りにしか回すことができない。そのため、潜水中に誤ってベゼルの設定がずれてしまったとしても、予定の潜水時間よりも表示時間が長くなるだけで、減圧停止の時間を取らずに浮上してしまうといった危険はない。ベゼルにはさらなる安全策が講じられている。ベゼルの2点を下に押し下げることで初めて回すことができる仕様になっているのだ。この操作は手袋をしたままでも簡単に行うことができる。
 ダイバーベゼルは、通常のはめ込み式ではなく、ジン独自の特殊結合方式でしっかりとケースに固定されている。そのため、岩にたたきつけるなど、強い衝撃が加わった場合でもベゼルが外れることはない。また、テギメント加工が施された逆回転防止ベゼルは非常に硬く、耐傷性が極めて高い。ジンの他のモデルのように、ケースにもテギメント加工が施されていたらよりいっそう、好感度が高かったであろう。
 T1.Bは、水深1000mの水圧にも耐えられる防水性を備えている。つまり、潜水時、滞在深度における水圧に動的圧力が加わっても、十分に持ちこたえられる耐圧性能を備えているのだ。にもかかわらず、ケースの厚さは12・5㎜と薄く、着用時も手首に心地よい。
 船級協会のDNV GLは、ジンのT1を欧州潜水器具規格に基づいて検査、認証している。DNV GLはTÜVと同じような、海洋分野における第三者認証機関である。本来、この規格は、空気ボンベや呼吸器など、人が使うダイビング器材にのみ適用されるのだが、DNV GLはジンの時計に対し、マイナス30℃からプラス70℃という過酷な環境下で耐水と耐圧の性能試験を行っている。DNV GLの試験では、こうした厳しい条件下でも高い機能性と精度を証明することが求められているのだが、ジンが独自に開発した特殊オイルは、マイナス45℃からプラス80℃の温度範囲で時計が問題なく機能することを可能にしている。

どんな深度でも乾燥を維持

 湿気は、深い水中だけではなく、陸上でも時計内部に浸入する。しかも、湿気が入り込む頻度は実際、水中よりも陸上の方が高いのだ。大気中の湿気が時計内に浸入し、これが風防の内側に結露すると、視認性に悪影響を及ぼす。さらに、湿気はムーブメント内のオイルも劣化させるため、部品が早期に磨耗し、精度の悪化につながる恐れがある。

 こうした湿気への対策として、ジンは独自のドライ・テクノロジーを開発した。ジンのドライ・テクノロジーにはさまざまな技術が結集されている。まず挙げられるのは、耐ブリスター性に優れたバイトン製EDRパッキンである。緑色のEDRパッキンは、T1.Bの防水性能における重要な要素で、通常使用されるニトリルゴム製の黒いパッキンに比べて耐久性が高く、時計内部への水分の浸透を最小で25%まで抑えることができ、多くの薬品に対しても耐性がある。第2に、ケース内部に充填されたプロテクトガスが乾燥した環境を約束する。それでもなお、わずかながらも水分が浸入することがあれば、硫酸銅を充填したドライカプセルがこれを吸収してくれる。ドライカプセルに吸収された水分量が増すと、白かった硫酸銅が青に変化する。文字盤の6時位置にはドライカプセルの点検窓があり、ここでドライカプセルの水分量を知ることができる。これまでの経験から、ドライカプセルが飽和状態になるまでには数年かかることが分かっている。そのため、ドライカプセルの交換は通常のメンテナンス時で十分である。

光あれ

先般も述べたように、この時計は文字盤と針のコントラストが明確なことから、視認性が良好である。海中では、水深20mでもかなり暗くなるが、T1.Bは発光が強いので暗所でも心配ない。潜水に関する機能は色で識別される。ダイバーベゼルに配された三角形のマーカーと分針は黄色く発光し、潜水時間を素早く確認するのに役立つ。水中で時計が動いていることを確認できるように、秒針にも黄色い蓄光塗料が塗布されている。これらとは対照的に、時針とインデックスは青く発光する。分針は先端がアロー形になっているので、日中も時針と確実に区別することができ、両者を読み違えることはない。
 手の甲に当たりづらい位置に設計されたリュウズがうれしいのはダイバーだけではないだろう。リュウズは4時位置に配され、ラグがリュウズガードの役割を果たす。ただ、位置関係から、リュウズを回して緩めるのがやや困難なのは否めない。だが、いったん緩めれば、リュウズは快適に操作することができる。
 大きなバックルには押し心地の軽いセーフティーボタンが装備されており、簡単に開くことができる。内蔵されたエクステンションは、バックルを開いた状態で引き出す。残念ながら、今回のテストウォッチのバックルは、裏側の角に鋭い箇所があった。とはいえ、時計を外す時に初めて気付いた程度のレベルであったが。時計自体がとても軽く、薄いケース、そして、表面の滑らかなシリコン製ストラップの恩恵により、T1.Bは着用感が快適である。

ムーブメントの実力

 このミッション時計の内部では、ETAやセリタ製ムーブメントではなく、ソプロード A10が時を刻む。ソプロード A10はETA2892とサイズが同じムーブメントである。ソプロードはフェスティナ グループに属し、歯車や脱進機、ヒゲゼンマイなどを系列メーカーから入手している。A10はETA2892よりもやや高額だが、構造や装飾においては同レベルと言えるだろう。日付早送り機能、ストップセコンド機能、また、両方向巻き上げ式のローターは、ETAと同様の標準装備である。また、緩急針と偏心ネジによる緩急調整といったディテールも両者の共通点である。
 歩度測定機で観察した精度についても、さほど大きな驚きはなかった。計算上の平均日差がプラス2秒/日というのは優秀である。垂直姿勢で特に振り角が力強かったのも喜ばしい。だが、7秒の最大姿勢差はやや大きすぎる感が否めない。
 T1.Bの価格は、ジンのほかの3針ダイバーズウォッチよりも若干高額な設定である。チタン製ケース、ムーブメント、そして、ジン独自のテクノロジーの数々がこの価格に反映されているのであろう。とはいえ、他のブランドと比較しても、コストパフォーマンスは決して悪くはない。
 ブルーフェイスのT1.Bは、内部機構の観点からも、外観の意匠においても説得力がある。ジンが開発したさまざまなテクノロジーは、名だたるブランドが提供する技術をはるかに凌駕するものであり、スペックにおいてはユーザーの利益が最も重視されている。そして、確信できることがひとつ。職業ダイバーや特殊戦闘部隊の隊員でなくても、ごく普通の日常生活であっても、ジンの時計から得られるものが多いという点である。

技術仕様

ジン/T1.B

製造者: ジン特殊時計会社
リファレンスナンバー:

1014.011/p>

機能:

時、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付、潜水時間計測用目盛りを備えた逆回転防止ベゼル

ムーブメント:

ソプロード A10-2、自動巻き、2万8800振動/時、25石、日付早送り機能、耐震軸受け(インカブロック使用)、グリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約42時間、直径25.6mm、厚さ3.6mm

ケース:

チタン製、テギメント処理を施したチタン製逆回転防止ベゼル、サファイアクリスタル製ドーム型風防(両面無反射加工)、ねじ込み式リュウズ、ドライ・テクノロジー(ドライカプセル)、チタン製裏蓋、100気圧防水

ストラップとバックル:

シリコン製ストラップ、チタン製セーフティーフォールディングバックル(ダイビング用エクステンション内蔵)

サイズ:

直径45mm、厚さ12.5mm、重量120g

価格: 55万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時
文字盤上 +5
文字盤下 +3
3時上 +2
3時下 +2
3時左 -2
3時右 +2
最大姿勢差: 7
平均日差: +2
平均振り角:
水平姿勢 299°
垂直姿勢 302°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 4pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 13pt.
視認性(5pt.) 5pt.
装着性(10pt.) 9pt.
ムーブメント(20pt.) 12pt.
精度安定性(10pt.) 7pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 13pt.
合計 80pt.
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