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ベル&ロス/BR 03-92 ゴールデン ヘリテージ(1/1) 2014年11月号(No.55)

BELL & ROSS BR 03-92 Golden Heritage

ベル&ロスを身に着けて空を飛べば、クールなソサエティーの一員になれる。「BR 03-92 ゴールデン ヘリテージ」のような比較的エレガントなモデルも例外ではない。

アレクサンダー・クルプ: 文 Text by Alexander Krupp
OK-PHOTOGRAPHY: 写真 Photographs by OK-PHOTOGRAPHY
岡本美枝: 翻訳 Translation by Yoshie Okamoto


point
・計器を想起させるカルト的デザイン
・極めて良質な加工
・非常に使いやすい

point
・ムーブメントが簡素

コックピットでクールを装う

味や職業で飛行機を操縦する時計愛好家は極めて少ないだろう。ベル&ロスの場合も、文字通り「地に足の着いた」地上の顧客のほうが圧倒的に多いはずである。にもかかわらず、ベル&ロスがブランド創設以来、航空機や軍用機といったテーマにこだわり続けるのはなぜか。長年の交友関係にあったブルーノ・ベラミッシュ氏とカルロス︲アントニオ・ロシロ氏がパリで自分たちのブランドを立ち上げるべく手を組んだのは、1992年のことである。両氏は、パイロットのための機能的なタイムピースを作るという明確なコンセプトを当初から持っていた。2年の後、最初のパイロットウォッチコレクションが市場に送り出される。だが、この時計はフランクフルトを拠点とする計器時計のスペシャリスト、ジンが製作したものだった。当時のモデルはその機能的なデザインから、ジン特有の性格が前面に押し出されたものであり、今日ならひと目で分かるベル&ロスならではのデザインコードはまだ生まれていなかった。

今日では、パリ生まれのブランド、ベル&ロスのすべてのモデルでパイロットウォッチとしてのDNAを認識することができる。スイスで生産されるタイムピースは、フランス空軍のパイロットたちに愛用されており、フランス国防軍の他の部隊や警察などでも着用されている。

ネーミング、ロゴ、モデル

「ベル&ロス」というブランド名は、ベラミッシュ氏とロシロ氏のファミリーネームを英語風に略して組み合わせたものである。ブランドロゴは、学士号を持つ工業デザイナー、ベラミッシュ氏がブランド創設時にデザインしたものだ。丸で囲んだアンパサンドの左右に両氏のファミリーネームの一部が配されたロゴは当時より変わっておらず、丸の部分を文字盤に見立てると腕時計を上から見たような印象を与える。だが、今日のベル&ロスではラウンド型のモデルよりも、一辺の長さが46㎜という巨大なケースで2005年に登場したBR 01に象徴されるスクエア型のモデルのほうがよく知られている。後に、ケースサイズ縦42×横42㎜のBR 03や、縦39×横39㎜のBR Sもリリースされた。

2013年にリリースされた「BR 03︲92 ゴールデン ヘリテージ」は、ミドルサイズでありながら圧倒的な存在感を放つ。今回、テスト機として選んだのは、このモデルである。モデルネームにある「92」はETA製キャリバー2892を意味する数字だが、今日では構造がほぼ同じセリタ製のSW300が搭載されている。「ゴールデン ヘリテージ」というネーミングは、ゴールドプレート仕上げの針とインデックスを示唆するだけでなく、古い時代のコックピットの計器類という、この時計を貫くコンセプトも顕示している。
黒文字盤と黒いケース、そして、純白の夜光針とインデックスを備えたベル&ロスの特徴的なベーシックモデルに比べると、ゴールデン ヘリテージはそのエレガントな佇まいがゆえにブランドのイメージに合っていないのではないか、という意見もあるだろう。だが、実際には、テストウォッチのゴールドカラーの表示要素は、古い時代の航空計器で見られる黄色に変色した蓄光塗料を想起させ、ベル&ロスのインスピレーションの源との強いつながりを感じさせる。パイロットウォッチとしての外観は、マットブラックの文字盤とライトブラウンのカーフレザーストラップによって完成されており、ストラップのステッチは美しいコントラストを生み出す。これらの要素によって、ベル&ロスのデザインコンセプトはゴールデン ヘリテージでも見事に再現されているのである。

高い品質で仕上げられたモノコック構造のケース。ムーブメントは文字盤側から取り出す。デザインのもととなったインストルメントパネルは、バート・ヴェリスホーフェン(ドイツ・ウンターアルゴイ郡)にある航空博物館が提供したものである。航空の歴史を伝えるため、2010年にオープンしたこの博物館では、ハンググライダーやジェット戦闘機のような航空機が展示されている。

美しく堅牢

ケースバックが一体化されたモノコック構造のステンレススティール製ケースは、ゴールデン ヘリテージを形成する重要なデザイン的要素であり、同時に加工品質の高さをも物語っている。だが、この構造のために、ムーブメントはケースバック側から取り出すことができず、時計師はまず、スクエア型のアッパーケースを取り外し、ここに固定されている文字盤もろとも上方へ取り出さなければならない。今回のテストには、ロイトリンゲンの時計宝飾店デッペリヒのマルティン・トム氏が協力してくれた。
堅牢なアッパーケースは、4本の頑丈なビスで留められている。10気圧の防水性を実現するためにOリングを採用し、シーリンググリースがネジ穴回りにも塗布されている。写真では、ミドルケースの角の部分にグリースの残留物が見られるが、これは、気密性を確保するための対策がいかに入念に施されているかを実証するものである。
では、マルティン・トム氏にムーブメントをケースから取り出してもらおう。これを行うにはまず、ケースバックにある小さなネジを外してメタル製の細いピンを穴に通し、このピンでムーブメント内のおしどりを押さなければならない。おしどりを押すことで巻き真が解除される仕組みになっているのである。その後で、巻き真をリュウズごと引き出すことができる(テストウォッチのような設計以外に、ツーピース構造の巻き真がある。このタイプの巻き真では、おしどりを操作しなくても、リュウズで外側の部分を引き出すことができる)。
文字盤は、ロウ付けされた足でムーブメントに連結されている。ベル&ロスの文字盤は、表側から見える4本のビスでケース内部に留められている。ムーブメントをケース内で保持するためのスペーサーは使用されておらず、ベル&ロスは、内部機構にジャストフィットするようにケースを加工するという、より手間のかかる方法を採った。堅牢なステンレススティール製ケースは、ムーブメントの形状に合わせて内部がフライス加工されており、ムーブメントと文字盤が確実に保持されるようになっている。文字盤とケースの嵌め合い部にはプラスチック製のリングが取り付けられているため、しっかりと保持されても、物理的な衝撃を吸収できるように設計されている。

重要なディテール。時計師はケースバックにあるこの小さなネジを外し、ネジ穴を通じて巻き真を解除することで、ムーブメントをケースから取り出すことができる。

クォリティと安定性

ゴールデン ヘリテージでは、目に見える構成部品がすべて高品質で、頑丈に作られている。ビスで留めた文字盤、様式美に富むケース、ファセットの美しいフライス加工が施された尾錠を備えた、幅広で厚みのあるレザーストラップに至るまで、隅々までこだわりが感じられる。
ただ、堅固なステンレススティール製ケースの中に隠されたムーブメントに関しては、ベル&ロスはあまり重視していないようである。搭載されているのは装飾の少ないセリタSW300で、3種類ある品質レベルの中で最も簡素な「スペシャル」クラスのものである。テンワはグリュシデュールではなくゴールドプレート仕上げのニッケル製、セリタによる調整も5姿勢ではなく4姿勢でしか行われていない。
それでも精度は良好である。最大姿勢差が9秒というのは少し大きすぎるが、平均日差はプラス5・5秒/日というわずかなプラス傾向にとどまった。着用テストでは平均日差がプラス4秒/日と、ウィッチ製歩度測定機でのテストよりも良い結果を見せてくれた。
46万円という価格がやや高めに感じられる要素は、搭載機が簡素な量産ムーブメントという点のみだろう。この点を除けば、ゴールデン ヘリテージには、デザインにおいても加工においても非の打ち所がない。高い操作性、装着時の心地よさ、良好な視認性を考慮すれば、総じて非常に魅力的な時計である。ただ、ゴールデン ヘリテージは、極端にシャイな性格の時計愛好家にはお薦めできないかもしれない。この時計を身に着けていたら、間違いなく話しかけられるからである。

時計師からひと言

この時計を見た瞬間、加工品質の高さが目に留まりました。文字盤、針、ケース、ストラップ、バックルのどこにも欠点は見当たりません。ケース内でムーブメントを保持する手法にも好感が持てます。ムーブメントと文字盤がジャストフィットするように完璧に計算されており、これほど大型な時計でもスペーサーなしでムーブメントを保持できるようになっているのです。スペーサーを使用していたら、ムーブメントの据わりはここまで安定しなかったでしょう。文字盤の下でムーブメントの周囲に配置された黒いプラスチック製のリングは、ショックアブソーバーのような役割を担い、ムーブメントを保持するために必要な柔軟性を約束してくれます。これは、文字盤に見える4つの丈夫なビスでケースにしっかりと留められています。

マルティン・トム
ロイトリンゲン デッペリヒ時計宝飾店 マイスター時計師

技術仕様
ベル&ロス/BR 03-92 ゴールデン ヘリテージ

製造者: ベル&ロス
Ref.: BR03-92-S-26030
機能: 時間、分、秒(ストップセコンド仕様)、日付表示
ムーブメント: セリタSW300(「スペシャル」クラス)、自動巻き、2万8800振動/時、25 石、日付早送り調整機能、耐震軸受け(インカブロック使用)、偏心ネジによる緩急調整、パワーリザーブ約42時間、直径25.6㎜、厚さ3.6㎜
ケース: ステンレススティール製、フラットサファイアクリスタル製風防(内側に無反射コーティング)、4本のビスで留められたアッパーケース、10気圧防水
ストラップとバックル: エンボス加工とステッチの入ったカーフレザーストラップ、ステンレススティール製尾錠
サイズ: 縦42×横42㎜、厚さ10㎜、重量116g
バリエーション: クロノグラフ仕様(61万円)
価格: 46万円

*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。

精度安定試験 (T24の日差 秒/日、振り角)

平常時    
文字盤上 +4
文字盤下 +5
3時上 +3
3時下 +10
3時左 +10
3時右 +1
最大姿勢差: 9
平均日差: +5.5
平均振り角:
水平姿勢 289°
垂直姿勢 243°

評価

ストラップとバックル(最大10pt.) 8pt.
操作性(5pt.) 5pt.
ケース(10pt.) 9pt.
デザイン(15pt.) 14pt.
視認性(5pt.) 4pt.
装着性(10pt.) 10pt.
ムーブメント(20pt.) 10pt.
精度安定性(10pt.) 7pt.
コストパフォーマンス(15pt.) 11pt.
合計 78pt.

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