【79点】タグ・ホイヤー/アクアレーサー キャリバー5

FEATUREスペックテスト
2017.09.11

 タグ・ホイヤーは、言わずと知れたスポーツウォッチで鳴らしたブランドだ。スポーツウォッチというものは、機能と同様にデザインが重要な役割を果たしている。アクアレーサーの場合は、夜光ポイントを多く使用した300m防水仕様であるだけでなく、角張ったベゼルや、水平に筋目を入れた文字盤、時計本体と色を揃えたナイロンストラップなど、はっきりしたディテールが意味を持っている。

 全体的に目立つ印象のこのモデルをつぶさに見ると、ベゼルには傷に強いセラミックスを採用し、そこに目盛りを入れて等間隔に突起を設け、太いチューブからつながるリュウズヘッドは大きく、フォールディングバックルはがっしりと、明確な主張がある。海を思わせる青いステッチが鮮やかなストラップは、ダイビングスーツの上からも着けられるように、長さをスムーズに調節できる作りだ。肝心の文字盤は、これもまたダイビング時に実用的で、夜光塗料を多用し、暗い水中でも判読できるように気を配っている。

 しかし水中では問題なく使えても、陸の上での毎日の使用では、日付表示上のレンズを含むフラットなサファイアクリスタル風防が反射して、針やインデックスが見づらい状況になることがあるのは弱点と言えるかもしれない。

汎用機を効率よく使用

 さて、ムーブメントに目を向けると、この普段使いできるリーズナブルなスポーツウォッチには外部のムーブメントメーカーによる大規模生産の汎用機が利用され、セリタのキャリバーSW200を搭載している。これはETAの2824を代替したものだ。エングレービングで飾られたねじ込み式の裏蓋を開けると、装飾を抑えたシンプルなムーブメントが現れる。

 SW200は同じ設計でも装飾の加減により等級が異なり、このキャリバーは4段階中の第3等級に相当する。借りてきたテストウォッチは実際に着用してみるとほとんど日差が出ず、歩度測定器では最大姿勢差は9秒とやや大きく出たが、平均日差はプラス2.5秒という結果となった。

 そのムーブメントを包むケースの厚さはわずか12㎜。ダイバーズウォッチとしては快適な厚さで、ケースをホールドするナイロンストラップは裏側がラバー仕立てになっていることもあって、着け心地は上々だ。直径が41㎜というのは昨今の中では控えめで品良く、加えて重さが107gというのも装着感の良さにひと役買っている(ちなみに直径43㎜のタイプもあるのだが、配色はこのモデルとは異なる)。

 しかし、このアクアレーサー キャリバー5でなんといっても魅力的なのはその価格だ。25万5000円というのは、スイス製の仕上がりの良いブランドウォッチとしてはそう高くはないだろう。しかも、昼間の波間でも夜の海辺のバーでも、どちらのシーンでも絵になるとくれば、大満足の1本になるに違いない。