定番をただ守るだけでは、スタイルは更新されない。ラフに羽織れる革ジャンの強さと、エレガントウォッチの落ち着いた上品さ。異なるふたつの表情をあえて重ねることで、装いは新しい均衡を見せる。強さが上品さを引き立て、上品さが強さを洗練へと導く。そんな“ギャップの妙”こそが、時代の感性に寄り添う大人にふさわしい美学だ。革ジャン×エレガントウォッチという組み合わせに、定番を進化させるためのヒントがある。ここでは、6つのカテゴリーに分けて、その“最適解”となるスタイリングを提示する。

菊池陽之介:スタイリング
松本和也(W):ヘア&メイク
Lim(BE NATURAL):モデル
安部 毅:編集・文
※価格はすべて消費税を含んだ税込み価格です。
軽快なスタイリングの中で、端正な意匠が静けさをつくる

アンスラサイトのセクターダイアルが印象的なレイモンド ウェイルの「ミレジム センターセコンド」。縦の筋目を刻んだ中央部からアワートラックへと段差を付け、外周のミニッツトラックは緩やかに傾斜するなど、細やかな変化を与えた立体的なデザインが特徴だ。ブラックのカウスエードで仕立てたカージャケットに、鮮やかなシャツ&デニムという軽快な要素を重ねても、アンスラサイトの落ち着いた表情やSS製ブレスレットが手元で控えめに存在感を示す。

オールパーパス系 × ハーフコート型

伝説的デザイナー、ジェラルド・ジェンタが1970年代に手掛けた「インヂュニアSL」を、現代の感性と人間工学に基づく35mm径の新プロポーションで再構築。5つのネジを配したベゼルや一体型ブレスレット、グリッドパターンの文字盤が見事な構造美を形づくる。自動巻き(Cal.47110)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径35mm、厚さ9.4mm)。10気圧防水。161万7000円。(問)IWCシャフハウゼン Tel.0120-05-1868
レイモンド ウェイルの「ミレジム センターセコンド」は、どんな場にもなじむ汎用性を備えた腕時計だ。古典的なセクターダイアルに現代的なアップデートが加わり、懐かしさと新しさが共存するネオ・ヴィンテージな表情を実現。その包容力が、場面を選ばない懐の深さへとつながっている。そこに組み合わせたのが、ハーフコート型のレザーアウターだ。
アンスラサイトのセクターダイアルに、ライトブルーのミニッツインデックスを配したネオ・ヴィンテージな意匠が魅力。中央の縦筋目仕上げから外周に向けて段階的に高くなる構造に、同心円模様のミニッツトラックが表情に奥行きを生んでいる。自動巻き(Cal.RW4200 / SW200)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約41時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ9.25mm)。5気圧防水。30万8000円。(問)ジーエムインターナショナル Tel.03-5828-9080
ブラックオパーリンダイアルに配したローズゴールドのインデックスが、精悍な表情を生むデイデイトモデル。立体構造を得た新ダイアルは視認性を高め、薄く仕上げたベゼルが開口部を広げることで奥行きを強調。裏蓋からは自社製ムーブメントがのぞく。自動巻き(Cal.TH31-02)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径41mm、厚さ12.57mm)。100m防水。63万8000円。(問)LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー Tel.03-5635-7030
エー レザーは、日本国産原皮を姫路のタンナーが鞣した柔らかな質感が特徴のカウレザーを用いて、コーチジャケットのデザインを採用。ゆったりしたシルエットで、自然なドレープが生まれる。裏地には吸汗放湿性を備えたレーヨンコットンを使って着心地にも配慮が行き届く(写真1)。シーシーユーの逸品は、英国のGPO(=一般郵便局)で使用されていたダッフルコートを基に、フレンチワークの要素を重ねたデザインが個性的だ。シボの少ないパキスタンカウレザーのしっとりした手触りを活かし、洗練された表情へと仕上げたモデルだ(写真2)。シュタインはカウスエードを0.8mm厚に削り、柔らかな風合いを引き出した。ヴィンテージのカージャケットをベースに再編集したもので、漆黒のスエードが、モードな雰囲気を漂わせる(写真3)。
きれいめにもカジュアルにも、色や柄を含んだ着こなしにもなじむ。その普遍性は、ジャケットともコートともブルゾンとも異なるハーフコートが示してくれる。腕時計の汎用性とは、こうした装いの幅に寄り添えることでもある。

2_11万7700円、シーシーユー。(問)シーシーユー t.kaneko@neover.com。
3_14万800円、シュタイン。(問)エンケル Tel.03-6812-9897



