ふたりの時計愛好家が立ち上げたターシャム・クィッド・ウォッチ・トウキョウの第1作「Model R」

2026.04.28

あくまで趣味として時計と接しながらも、その知識の深さから各メディアへの執筆活動を行うふたりが「第三の何か」を自称する新ブランドを立ち上げた。果たして時計愛好家の“桃源郷”となり得るのか?

ターシャム・クィッド・ウォッチ・トウキョウ「Model R」

Photographs by Masanori Yoshie
Edited & Text by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2026年3月号掲載記事]


ふたりの有識者が立ち上げた時計オタクの桃源郷

 時計愛好家が理想の腕時計を具現化するため、遂にはブランドを立ち上げてしまうというケースは、この数年の日本では決して珍しい話ではなくなってきた。それでも2026年1月にデビューした「ターシャム・クィッド・ウォッチ・トウキョウ」は、創業者のふたりを知っているからこそ、驚きを隠せなかった。

ターシャム・クィッド・ウォッチ・トウキョウ「Model R」

Model R
ブランド初作となるアラームウォッチ。1930~40年代の腕時計を想起させるセクターダイアルを持つ。デザインは親交のあるデザイナー、組み上げも協力関係にある時計師が行う。なお、サプライヤーも明かしており、ケースと針は松浦製作所、文字盤はコンブレミン、リュウズは高島産業、ストラップは松下庵製だ。手巻き(Cal.1475改)。17石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径38.0mm、厚さ11.1mm)。3気圧防水(アラームセット時は非防水)。世界限定8本。460万円(税込み)。

 共同創業者の堀内俊と山科拓はそれぞれが30年近い経歴を持つベテラン時計愛好家であるが、本業は時計とは無縁の世界で活躍してきた人物だ。ただし、愛好家/時計研究家としての審美眼・知識は確かであり、ふたりには『クロノス日本版』での執筆を幾度となく依頼してきた。とはいえ、あれだけ社会的に成功を収めた人物が私財をなげうってまで、時計ブランドを作り上げてしまうとはにわかに考えられなかったのだ。しかし同時に、完成した「Model R」の初作とは思えないほどの仕上がりを見て納得できたのも、彼らを知っていたからこそだ。

ターシャム・クィッド・ウォッチ・トウキョウ「Model R」

 同作製作のきっかけは時計仲間との忘年会でのちょっとした会話だったという。曰く「世の中に優れたデザインの3針時計は多く存在するが、アラームウォッチはそこまで突き詰められていない」。ならば自分たちで作ってみようとなったふたりは、そこから2年でこの時計を作り上げてしまったのだ。デザインと設計は “国内屈指のデザイナー” との協業によるもので、ムーブメントにはア・シルトのオールドムーブメントを用意した。

 驚くべきはムーブメントやケースの磨きを、大学院生時代に培った金属研磨の知識を生かして堀内がひとりで手掛けている点だ。理想のコーヒーを淹れるため、自家焙煎を始めてしまうほどの凝り性である堀内にとって、時計のキャラクターを決める外装研磨とケースの仕上げを外部に委ねる選択肢はなかったようだ。今後は山科も仕上げ作業に加わる予定である。

ターシャム・クィッド・ウォッチ・トウキョウ「Model R」

ア・シルトのCal.1475をベースに堀内が再仕上げなどを施したムーブメント。2番車受けのみオリジナルで製作しているほか、アラーム部分もケースバックのピンを叩く方式から外周のゴングを鳴らす方式に変更している。サンドブラスト仕上げのほか、ロジウムメッキ仕様も製作中。

 5分単位のアラーム設定を意図したデザインなどは、さすがの時計オタクぶり。決して安くはないが、そこには確かに1周してしまった時計好きの〝桃源郷〞がある。



Contact info: https://www.tertiumquidwatch.com


日本生まれヌーヴェル・クロノメトリーの超大作「モントレ オーディネール」

FEATURES

大塚ローテック「8号」は“温かみのある”レトログラードだ! 時計ハカセ・広田雅将がこの新作をいち早く深掘り

FEATURES

2026年の新作時計を一挙紹介! グランドセイコーにロレックス、パテック フィリップ、オメガ等々……各ブランドの情報まとめ

FEATURES