【クワイエットな時計概論】証言者たち②ジ・アーモリー創業者「マーク・チョー」

2026.04.27

クワイエットラグジュアリーを語るならば、この人にもおいで願わねばならぬ。メンズセレクトショップ「ジ・アーモリー」の創業者であるマーク・チョー氏は、卓越した審美眼をもって、今やメンズクロージングの世界をリードするようになった。そして多くの時計ブランドともコラボレーションを組むほどの時計好きだ。

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Interview & Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年11月号掲載記事]


クワイエットラグジュアリーには考え抜かれたディテールが数多く存在している

マーク・チョー

[ジ・アーモリー共同創業者/ドレイクス共同経営者]マーク・チョー
1983年、イギリス・ロンドン生まれ。紳士服店「The Armoury」共同創業者、英国タイメーカー「Drake's」共同経営者。テーラリングの世界で著名な彼は、長年の時計収集家でもある。近年は『Watches by SJX』や『Robb Report』での執筆に加え、H.モーザーやウニマティック、NH Watchなどとのユニークなコラボレーションで、時計業界でも広く知られるようになった。メンズクロージングと時計の世界を理解できる、極めて稀有な人材のひとりだ。

「ラグジュアリーとは、特に珍しいもの、よくできたもの、美しいもの。あるいはその3つの組み合わせであるべきです」。そのように語る、クワイエットラグジュアリーの先駆者とも言える彼は、ここ数年に起こったブームの現況をどう見ているのか?

「クワイエットラグジュアリーのブームは、それ以前の贅沢品がやり過ぎだったことを示しているのだと思います。 あまりにも派手すぎて、顧客はうんざりしていましたからね。現在、高級ブランドは方向転換を図り、異なる方法で顧客を引きつけようとしています。一方、アーモリーでは常に、クラシックなスタイルや、優れた職人技とデザインに専念してきました。 それが“クワイエットラグジュアリー”ならば、そう呼んでいただいても結構です」

 そんな彼のスタンスは、時計業界とのコラボレーションにもよく表れている。

「私たちは、これまでいくつかの時計ブランドとコラボレーションしてきました。H.モーザーのように高価なものもあれば、ウニマティックのようにかなり低価格なものもありました。 重要なのは、そのブランドの製品と、ブランドを支える人々を私たちが気に入っていることなのです。デザインが明確で、強いセンスが感じられる製品や、他にはない特別な技術を私たちは愛しています。お互いに尊敬し合える関係であれば、コラボレーションは可能ですね」

 そしてこれらの時計は言うまでもなく、高級品でありながらもクワイエットだ。

「ふたつの両立はもちろん可能です。クワイエットな高級品とは、特別な理由がいくつも重なっているのです。最初に気付くのは色や形だけかもしれませんが、よく観察すると、評価するまでには時間がかかるような、考え抜かれたディテールが数多く存在していることが分かってきます。例えば、時間表示だけのヴィンテージパテックは、一見とてもシンプルですが、文字盤のタイポグラフィや目盛りのデザインが丁寧であることや、立体的なエナメル加工、美しいケースの形状、そして裏蓋を開けると、ムーブメントの美しさも堪能できます」

 しかし優れたビジネスパーソンでもある彼は、静かなラグジュアリーが主流になることには懐疑的な姿勢をとる。

「クワイエットラグジュアリーは、決して万人向けではないのです。これは理解されにくく、多くの人にとっては面倒なだけ。それに贅沢品の重要な要素のひとつは、見せびらかすことですからね。もし普通の人々に自分の富を誇示したいのであれば、誰もが気付く有名ブランドの、派手な時計を身に着ける方が簡単でしょう」


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