現在、東京・六本木の森美術館にて、現代美術作家ロン・ミュエクの個展が開催中だ。日本での個展の開催は実に18年ぶりであり、同氏の初期の代表作から近作まで、日本初公開6点を含む計11点の作品が展示される。なお、本個展の主催は、カルティエ現代美術財団と森美術館が共同で務める。期間は2026年9月23日(水・祝)までとなる。

100点もの巨大な頭蓋骨で構成された大作インスタレーション。ひとつひとつディテールが異なる頭蓋骨の山が、展示空間に合わせてダイナミックに配置されている。それぞれの圧倒的な存在感を目の当たりにできる本作には、“メメント・モリ(死を忘れるな)”というラテン語起源の思想が根付いている。日本初公開。
スケールとリアリティーが問い掛ける、人間の内面と存在
1958年にオーストラリアで生まれたロン・ミュエクは、映画や広告業界でのキャリアを経て、1990年代半ばから現代美術界で活躍している彫刻家だ。その作品は、人間の皮膚の質感まで綿密に作り込まれている一方で、実際よりもはるかに巨大、あるいは極端に小さく造形されている点が特徴となる。

裸の女性が大きな木の枝の束を抱えようとする情景を表現した、どこかおとぎ話や民話を思わせる作品。あえてその目的や意味を曖昧にし、シュールな構成とすることで、鑑賞者の想像力を強くかき立てるよう意図されている。日本初公開。
ミュエクの作品が持つ圧倒的なリアリティーは、孤独や不安、脆さといった人間の内面的な感情や体験を巧みに表現したものだという。また、アンバランスなスケール感や違和感のある演出は、鑑賞者の知覚や先入観を揺さぶり、神秘的である一方、鑑賞者ひとりひとりの解釈や思索をうながす曖昧さも残している。

18世紀のイタリアの古典絵画に着想を得た、スツールに腰かける小柄な男性の天使をかたどった彫刻。うつむいて物思いにふける姿が表現されており、その悲しげな佇まいは、一般的な天使のイメージとは異なって見える。日本初公開。
会場では、大型作品である《マス》をはじめ、日本初公開となる6点を含む全11点の彫刻が展示される。過去30年間の制作総数が50点に満たないミュエクにとって、これだけの作品が一堂に会するのは至って貴重な機会と言える。特に、《エンジェル》は同氏の初期の代表作であり、本展はこれを鑑賞できるまたとない機会となる。
なお、今回の個展に合わせて、フランスの写真家・映画監督であるゴーティエ・ドゥブロンドが、制作過程やスタジオを記録した写真および映像作品も公開されている。また、本展の期間中は、音楽とダンスによって鑑賞体験を拡張するパフォーマンスや、キッズワークショップ、ギャラリートークなども開催される予定だ。
ロン・ミュエク
1958年オーストラリア・メルボルン生まれ、1986年より英国在住。映画・広告業界を経て1990年代半ばより彫刻制作を開始し、1997年の「センセーション:サーチ・コレクションのヤング・ブリティッシュ・アーティスト」展(ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ)への出品を機に世界的な注目を集める。一作品の制作に長い年月を費やす極めて寡作な作家として知られ、30年間の制作総数はわずか50点ほど。国内では、青森県の十和田市現代美術館に《スタンディング・ウーマン》が常設展示されている。
カルティエ現代美術財団
1984年、当時のカルティエ社長アラン=ドミニク・ペランによって設立。ジャンルを横断する芸術的対話と実験の場を提供し、アーティストの創作活動を緊密に支援してきた歴史を持つ。パリ・パレロワイヤル広場に構える新たな拠点を中心に、展覧会やライブパフォーマンスなど多角的なプログラムを通じて、現代アートへのアクセスを広げる活動をグローバルに展開している。
開催概要
展覧会名:ロン・ミュエク
期間:2026年4月29日〜9月23日(水・祝)※会期中無休
会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)
開館時間:10時〜22時(火曜のみ17時まで。ただし5月5日、8月11日、9月22日は22時まで)
※入館は閉館時間の30分前まで
主催: カルティエ現代美術財団、森美術館
入館料(平日):一般 2300円(窓口)、2100円(オンライン)。学生 1400円(窓口)、1300円(オンライン)。シニア 2000円(窓口)、1800円(オンライン)※中学生以下無料
入館料(土日祝):一般 2500円(窓口)、2300円(オンライン)。学生 1500円(窓口)、1400円(オンライン)。シニア 2200円(窓口)、2000円(オンライン) ※中学生以下無料



