日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2026で発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回は『ホディンキー ジャパン』編集長の関口優氏が登場。長らく時計専門誌で編集に携わり、国内外でさまざまな時計を取材してきた関口氏ならではの、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブの総評も必見だ。

1位:カルティエ「カルティエ プリヴェ クラッシュ スケルトン」
より細く洗練させたローマ数字にすべくムーブメント開発からスタート。それに合わせて全体のシェイプも変化させ、リュウズ位置やケースのボリュームを前作からブラッシュアップする離れ業を見せた。祝、10周年!

手巻き(Cal.1967 MC)。Ptケース(縦45.35×横25.2mm、厚さ12.97mm)。非防水。世界限定150本。予価1953万6000円(税込み)。2026年9月発売予定。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
2位:ヴァン クリーフ&アーペル「ミッドナイト ジュール ニュイ ファーズ ドゥ リュンヌ ウォッチ」
オンデマンドで月相を知らせるユニークな機構もさることながら、文字盤下部の地球からのぞむ太陽を描いたディスクに心奪われた。彫金を施した金の円盤を、ムラーノガラスに寸分違わずさらりと一体化!

自動巻き。パワーリザーブ約36時間。18KWGケース(直径42mm)。予価2574万円(税込み)。(問)ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク Tel.0120-10-1906
3位:ジャガー・ルクルト「マスター・コントロール・クロノメーター・デイト・パワーリザーブ」
往年の「フューチャーマチック」を思わせる顔が復活! 1年足らずで完成させたという極薄一体型ブレスレットのパッケージも見事で、エッジを持たせた楔形という独自形状の中ゴマは磨いてから組み上げている……恐ろしい。

自動巻き(Cal.738)。39石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ8.9mm)。5気圧防水。299万2000円(税込み)。(問)ジャガー・ルクルト Tel.0120-79-1833
4位:ロレックス「オイスター パーペチュアル デイトジャスト 41」グリーンオンブレダイアル
品のあるオンブレダイアルがデイトジャストに! デイデイトのシャイニーなPVDとは異なり、ラッカー仕上げの層で表現したグラデーションはよりシックな印象。ポップなラッカーもいいけど、これはこれでアリ。

自動巻き(Cal.3235)。31石。28800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS×18KWGケース(直径41mm)。100m防水。
5位:ブルガリ「セルペンティ トゥボガス ゴールド&スティール ウォッチ
個人的に大好きな70年代のブルガリの雰囲気がよみがえった。カジュアルながらアクセントを添えるステンレススティールとのコンビで、スタッズのあしらいも新鮮。角とか丸の時計ケースでメンズモデルも期待したい!

クォーツ。SS×18KYGケース(縦35mm)。30m防水。239万8000円(税込み)。(問)ブルガリ・ジャパン Tel.0120-030-142
総評
今年も小径化のトレンドは継続。 一方で、安易なトレンドとしてのカラバリ追加というより、色に意味を持たせるブランドも目立った。カルティエは1980年代の「サントス・カレ」で見られたゴーストダイアルを彷彿とさせる、グレーとバーガンディー文字盤の「サントス ドゥ カルティエ」で復活。ロレックスはオイスターケース100周年を祝う一環で、グリーンオンブレダイアルの「デイトジャスト」などを豊富にリリース。パテック フィリップは「ワールドタイム」に鮮烈なレッド、「カラトラバ 5227」に同社のお家芸的なサーモンダイアルを加え、各社ともにそれぞれの世界観を強調した。
また、18Kゴールドブレスレット戦線はますます激化! カルティエが「サントス デュモン」に15連ブレスを与えたモデルは20世紀初頭の華やかな人々の生活を想起させるし、ジャガー・ルクルトが「マスター・コントロール・クロノメーター」に与えた一体型ブレスレットはコマのポリッシュが群を抜いて良い出来だった。同時にとてつもない薄型であり、白眉である。
これらはトレンドであるものの、目の肥えた方々には退屈なアップデートに映るかもしれない。その意味では、ヴァン クリーフ&アーペルの「ポエティックコンプリケーション」やブルガリの「セルペンティ トゥボガス」といった作品は新鮮だ。単なる質においてさほど差がつかなくなった現代では、時計づくりの哲学やそこにしかない色、世界観がますます意味を持っている。自社のルーツやアイコンモチーフを重んじるジュエラーの時計に引かれがちなのは、僕だけではないはずだ。時計専業ブランドもその方向を目指すだろうと思うが、やはりジュエラーからは特に目が離せない。
選者のプロフィール
関口優
『ホディンキー ジャパン』編集長兼『リシェス デジタル』編集長。1984年生まれ。『ウォッチナビ』編集長を経て、2019年よりホディンキー ジャパン編集長に就任。2023年よりラグジュアリーをテーマにしたハイクォリティマガジン『リシェス』のwebメディア『リシェス デジタル』の編集長も兼務する。




