2026のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブでは数多くの新作が発表された。誰もが注目する人気モデルももちろん重要だが、独自の個性が魅力的なモデルにも視線を向けたい。なぜならば、それらは将来コアな人気を得、伝説へとなる可能性を秘めているからだ。『ウォッチタイム』アメリカ版のシニアエディターであるゼン・ラブが自身の琴線に触れたものをピックアップ。

[2026年6月18日掲載記事]
想像以上に記憶に残るクールなモデル
例えばドーナッツ盤を購入したとしよう。世間一般ではA面の曲が持てはやされていたとしても、自分としてはB面の曲を、ものすごく気に入ってしまう、ということはよくあるはずだ。
それと同様に、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ で発表された新作を見わたしてみると、誰もが注目するモデルとは別に、独自の個性を放ち、抗えない魅力を持った新作は常に現れるのだ。しかしながら、どうしても新作の数は多く、残念ながら埋もれてしまうこともある。今年、予想外に深い印象を自分に残したいくつかのモデルをここに紹介しよう。
ショパール「L.U.C トラベラー ワン」

自動巻き(Cal.L.U.C 01.05-L)。39石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。セラマイズドグレード5チタンケース(直径42mm、厚さ12.09mm)。50m防水。世界限定250本。287万1000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
これはお馴染みのスポーティな「ショパール L.U.C トラベラー ワン」だが、新しいカラーリング、そしてマットチタンを採用することでさらにスポーティな仕上がりとなっている。人気の「アルパイン イーグル」の新作の陰に隠れてしまっていたが、実際に腕に巻いた際、この独特の表現に衝撃を受けた。時計業界ではマットチタンの採用が増えつつあり、我々もこれに心から賛同している。
本作はマットチタンを活かした最近の新作の中でも特にクールな1本であり、グリーンとイエローの組み合わせによって、全体として驚くほど独創的で、ただただ素晴らしい製品になっている。トラベラー ワンへの物欲がかつてないほど高まった。
コルム「ヘリテージ ゴールデンブック」

手巻き(Cal.CO157)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KRG×Tiケース(縦29mm×横36mm、厚さ7.60mm)。1気圧防水。価格未定。2026年内発売予定。(問)GMインターナショナル Tel.03-5828-9080
最近、新しい経営陣のもとで、コルムは今年、アップデートされたモデルのフルラインナップに加えて、ヘリテージ コレクションから一風変わったヴィンテージの復刻版を発表し再始動した。その一例がこの「ヘリテージ ゴールデンブック」である。実用的なデイリーウォッチとは言えないかもしれないが、このようなものが存在すること自体に価値を感じられるのではないだろうか。少なくとも私はそうだ。
カバーを開けると、文字盤にはアーネスト・ヘミングウェイの名言が刻まれている。「いまは、ないもののことを考えているときではない。あるもので、なにができるかを考えるのだ。」……そう言われるとかえって「ないもの」ばかり考えてしまいそうだが、気にする必要はない。実によく馴染んでいる。ケースは18Kゴールドとチタン製で、ムーブメントはコルムの手巻きムーブメントCal.CO157を搭載している。
ロレックス「オイスター パーペチュアル 34」

自動巻き(Cal.2232)。31石。28800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KERGケース(直径34mm)。100m防水。
これは驚きであった。予想外だったのは、34mmのロレックス オイスター パーペチュアルにありがちな、小さすぎるという感覚がまったくなかったこと、そして純粋に腕につけたときのフィーリングが非常に気に入ったことだ。その理由のひとつは重量感にある。エバーローズゴールドによる適度な重みが、着用感を損なうことなく、確かな存在感を与えている。
新作を発表したロレックスの担当者によると、どうやら他の多くのエディターたちも同様の反応を示したようだ。このモデルは、1926年に初代オイスターウォッチが発売されてから100周年を迎えるブランドの記念モデルの一部であり、他の文字盤バリエーションやピンクゴールドモデル、28mmの選択肢も用意されている。
ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・アメリカン 1921」

手巻き(Cal.4400 AS)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KPGケース(直径40mm、厚さ8.06mm)。3気圧防水。690万8000円(税込み)。
(右)ヴァシュロン・コンスタンタン「ヒストリーク・アメリカン 1921」Ref.1100S/000R-H115
手巻き(Cal.4400 AS)。21石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KPGケース(直径36.5mm、厚さ7.41mm)。3気圧防水。572万円(税込み)。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755。
ヴァシュロン・コンスタンタンのフラッグシップモデルである「オーヴァーシーズ・デュアルタイム・カーディナル・ポイント」には、目に見えるほどの興奮が巻き起こっていた。しかし、このブランドの風変わりなドライバーズウォッチの新しいバリエーションを実物で目にしたときは、驚くほど楽しかった。
「ヒストリーク・アメリカン 1921」と呼ばれるこのモデルは、クッションケースを採用し、ステアリングホイールを握った状態でも時間が読み取れるよう、文字盤が45度傾いている。数年前に復刻され、その後も定期的にアップデートが重ねられてきたが、新作モデルは(新しいオーヴァーシーズ・カーディナル・ポイントと同様の)グレイン仕上げの文字盤を特徴とし、36.5mmと40mmのピンクゴールドケースで展開される。36.5mmが572万円(税込み)、40mmが690万8000円(税込み)だ。
カルティエ プリヴェ コレクション「クロシュ ドゥ カルティエ」

手巻き(Cal.070)。18KYGケース(縦37×横28.65mm、厚さ5.7mm)。非防水。予価619万800円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00。
カルティエの プリヴェ コレクションは、毎年ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブのハイライトのひとつとなっている。2017年以来、同ブランドは歴史的なモデルに焦点を当て、コレクターのために、熱意と洗練さをもって再現することに注力してきた。その第10弾として、ブランドは実に6つものモデルを発表した。
その中でも風変わりで、見過ごされがちだったように思えるのが、1920年代に登場し、2021年にもプリヴェで復刻された「クロシュ ドゥ カルティエ」(クロシュはフランス語で「鐘」の意)だ。今作は、縦37mm、横28.65mm、厚さ5.7mmという小ぶりなイエローゴールドケースに、手巻きムーブメントのCal.070を搭載。独特な形状の腕時計で有名な同ブランドの中でも、このモデルはかなり変わった部類に入るが、カルティエはそれを見事かつ自然に形にしている。



