ブレゲにとってのトゥールビヨン。“特許取得225周年”、新作時計とともに振り返る

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2026.07.17

時計師アブラアン-ルイ・ブレゲが、トゥールビヨンの特許を取得した1801年6月26日から225周年を迎えた今年、ブレゲは新作トゥールビヨンウォッチを発表した。各モデルとも、ブレゲらしい職人技と革新的な技術が盛り込まれている。本記事では、ブレゲのトゥールビヨンを掘り下げるとともに、新作時計を紹介していく。

ブレゲ クラシック トゥールビヨン

野島翼:文
Text by Tsubasa Nojima
[2026年7月17日公開記事]


ブレゲとトゥールビヨンを振り返る

 時計の歴史を2世紀早めたと言われる、時計師アブラアン-ルイ・ブレゲ。その多岐にわたる発明は、自動巻き機構やパーペチュアルカレンダー機構、ブレゲヒゲゼンマイなど、現代の機械式時計の基礎を次々と作り出していった。その中でもとりわけ象徴的な発明が、トゥールビヨンだ。ブレゲがトゥールビヨンの構想を練り上げたのは1793〜1795年頃と言われており、その特許を取得したのは、1801年6月26日のことである。

ブレゲ 225周年

アブラアン-ルイ・ブレゲによるトゥールビヨンの水彩画。ブレゲは1793〜1795年頃にトゥールビヨンの構想を練り上げ、1801年6月26日に特許を取得した。

 トゥールビヨンは、時計にかかる重力の影響を均一にすることで、精度の向上を狙った機構だ。当時の携帯用時計と言えば懐中時計。ポケットの中に収めていれば、自然と時計の向きは固定となる。すると、重力の働きによってヒゲゼンマイに偏りが生じ、精度を損ねてしまうのだ。トゥールビヨンは、テンプや脱進機をキャリッジと呼ばれる籠型のパーツに収め、キャリッジそのものを回転させることでこの重力の影響を打ち消している。

 現代のブレゲにおいても、トゥールビヨンは数々のモデルに搭載されている重要な機構だ。ブレゲは1989年に同社初の腕時計トゥールビヨン「Ref.3350」を発表し、以降その技術に磨きをかけてきた。そして1801年の特許取得から225周年を迎えた今年、同社はその節目を祝うべく、技術の粋を集めた新作モデルを発表したのだ。

ブレゲ 225周年

アブラアン-ルイ・ブレゲが1808年に販売した、トゥールビヨン搭載のポケットウォッチ、「No.1188」。ブレゲは1796〜1829年の間に、40個のトゥールビヨンを完成させている。

「クラシック トゥールビヨン 7357」

ブレゲ       クラシック トゥールビヨン 7357

ブレゲ「クラシック トゥールビヨン 7357」Ref.7357PT/1A/ 386
ブレゲ初の腕時計トゥールビヨン「Ref.3350」に着想を得た新作。アンスラサイトカラーの18Kブレゲゴールド製ダイアルに、2種類のギヨシェ彫りを施している。手巻き(Cal.187B)。21石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約60時間。Ptケース(直径35mm、厚さ9.2mm)。3気圧防水。2591万6000円(税込み)。

 そんなトゥールビヨンの特許取得255周年を迎えた今年の記念モデルを発表しよう。最初は「クラシック トゥールビヨン 7357」だ。

 本作は、ブレゲが1989年に発表した同社初の腕時計トゥールビヨン、Ref.3350を現代の基準で復活させたモデルである。12時位置に時刻表示用のインダイアル、6時位置に大きな開口部を設けたレイアウトを継承しつつ、2025年に発表された創業250周年モデルのデザインコードを取り入れたケースを採用している。

 本作には、アンスラサイトカラーダイアルにプラチナケースを組み合わせたモデルと、シルバーカラーダイアルに18Kブレゲゴールドケースを組み合わせたモデルが存在する。

ブレゲ クラシック トゥールビヨン

ブレゲ「クラシック トゥールビヨン 7357」Ref.7357BH/1H/ 386
18Kブレゲゴールド製のシルバーカラー仕上げダイアルと、ケースを組み合わせた、華やかなモデル。ストラップの裏面はフレンチブルーで彩られている。手巻き(Cal.187B)。21石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約60時間。18Kブレゲゴールドケース(直径35mm、厚さ9.2mm)。3気圧防水。2356万2000円(税込み)。

 ダイアルの素材は、どちらも18Kブレゲゴールド製。インダイアルにはクル・ド・パリ模様、その外周にはグレンドルジュ模様のギヨシェ彫りが施されている。優雅なブレゲ数字インデックスとブレゲ針を組み合わせたクラシカルなデザインが魅力だ。

ギヨシェ彫りも、1786年にアブラアン-ルイ・ブレゲが時計に取り入れたものだ。今なお伝統的な手動旋盤が用いられている。写真はケースバックから鑑賞できる、ムーブメントのブリッジに施されたギヨシェ彫り。

 トゥールビヨンは磨きこまれたブリッジに支えられ、60秒で1回転する。秒針の役割を果たすのが、キャリッジの中心から伸びる三つ又のパーツだ。この針が20秒ごとに目盛りを通過することで秒表示を行う。時分針を含むすべての針はブルーで統一されているが、これはブルースティールではなく、18Kブレゲゴールドをフレンチブルーに彩ったものである。

 ムーブメントは、Cal.187Bを採用する。これは、Ref.3350が搭載していたCal.558の直系にあたる手巻きトゥールビヨンムーブメントであり、ニヴァクロン製のブレゲヒゲゼンマイと、シリコン製アンクルを備えている。シースルーバックからは、ジュウ渓谷を象徴する山であるダン・ド・ヴォリオンから着想を得たギヨシェ彫りと、その外周にあしらわれたフレンチブルーのインサートを鑑賞することができる。

「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」

ブレゲ クラシック トゥールビヨン シデラル 7255

ブレゲ「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」Ref.7255PT/2N/9VU
ミステリーフライングトゥールビヨンを搭載した「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」の新作。グラン フー エナメルによるブラックアヴェンチュリンダイアルを採用している。手巻き(Cal.187M1)。23石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約50時間。Ptケース(直径38mm、厚さ10.2mm)。3気圧防水。世界限定50本。3752万1000円(税込み)。

「クラシック トゥールビヨン シデラル 7255」は、創業250周年を記念して発表されたコレクションのひとつであり、ブレゲ初のフライングトゥールビヨンを搭載した腕時計である。そこに今回、宇宙を思わせるブラックのアヴェンチュリンエナメルダイアルの新作が加わった。

 12時位置にはブレゲ数字インデックスとブレゲ針を組み合わせた時刻表示用のインダイアル、6時位置にはブリッジを持たずまるで浮遊しているようなフライングトゥールビヨンが配されている。本作のフライングトゥールビヨンには、その神秘的な外観を際立たせるためのミステリー構造が採用され、上面のブリッジだけではなく地板も含め、キャリッジが完全にムーブメントから独立しているかのようなデザインを与えられている。

 直径38mmのケースはプラチナ製。往年の「クラシック」コレクションに共通するコインエッジ装飾を施したミドルケースと、ロウ付けされた直線基調のラグが備わっている。

 搭載するCal.187M1は、ニヴァクロン製のブレゲヒゲゼンマイを採用し、磁気や温度変化への優れた耐性を示す。

トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047

ブレゲ トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047

ブレゲ「トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047」Ref.7047PT/YY/5ZU SL
アブラアン-ルイ・ブレゲが発明したトゥールビヨンと、レオナルド・ダ・ヴィンチの発明に着想を得たフュゼ・チェーンを組み合わせた、「トラディション」の限定モデル。225周年を象徴するフレンチブルーが随所に施されている。手巻き(Cal.569)。43石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約55時間。Ptケース(直径41mm、厚さ16mm)。3気圧防水。世界限定25本。4143万7000円(税込み)。

 ブレゲの発明のひとつに数えられるコンスタントフォース機構。これは、主ゼンマイから伝わる動力を一定に保つことで、精度の向上を図った機構である。主ゼンマイは十分に巻き上げられていればトルクが強く、逆に巻き上げが不足していればトルクが弱くなる。

「トラディション トゥールビヨン・フュゼ 7047」では、レオナルド・ダ・ヴィンチの発明に着想を得た、微細な鎖を用いたコンスタントフォース機構であるフュゼ・チェーンを採用している。

 基本的なデザインは、「トラディション」コレクションにのっとったものだ。ダイアル側からムーブメントの構造を鑑賞することが可能であり、オフセットされたダイアルには、フレンチブルーのグラン フー エナメルが施されている。ダイアルに隣接された円錐形のパーツと香箱をつなぐフレンチブルーのチェーンや、大型のトゥールビヨンを存分に鑑賞することが可能だ。

 直径41mmのケースはプラチナ製である。ストレートなラグやケースサイドのコインエッジ装飾が組み合わせられている。シースルーバックからのぞくCal.569は、約55時間のパワーリザーブを備えた手巻きムーブメントだ。懐中時計をモチーフにした独創的なブリッジや磨きこまれた歯車を鑑賞することができる。

「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」

ブレゲ マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887

ブレゲ「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」Ref.5887PT/YS/5WV SL
「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」の新作。1801年6月26日のパリから見えた夜空を、グラン フー エナメルとミニアチュール・ペインティングで表現している。自動巻き(Cal.581DPE)。57石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。Ptケース(直径43.9mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。世界限定25本。4918万1000円(税込み)。

ブレゲ マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887

ブレゲ「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」Ref.5887PT/YS/PW0 SL
プラチナ製ブレスレットを装着したバリエーション。10気圧防水を備え、コンプリケーションウォッチでありながらもさまざまなシーンで着用しやすい。自動巻き(Cal.581DPE)。57石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約80時間。Ptケース(直径43.9mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。世界限定25本。6237万円(税込み)。

 マリンクロノメーターに関する卓抜した知識と技術を有する時計師として、1815年10月27日に国王ルイ18世から王国海軍時計師の称号を授与された、アブラアン -ルイ・ブレゲ。その偉業に敬意を表したコレクションが、「マリーン」だ。今回発表された新作は、2024年に登場した「マリーン トゥールビヨン エクアシオン マルシャント 5887」をベースに、特別なダイアルが与えられている。

 ダイアル全面に広がるのは、ブレゲがトゥールビヨンの特許を取得した1801年6月26日のパリから見えた夜空である。この幻想的な情景は、透明なブルーグラデーションのグラン フー エナメルと、手描きのミニアチュール・ペインティングによってあしらわれている。さらになんと、日付や場所、時間を指定して空の描写をパーソナライズすることも可能だ。

ミニアチュールとは細密画のこと。小さな面積に1801年6月26日のパリの夜空が広がっている。

 本作には、3つの複雑機構が搭載されている。ひとつが5時位置に配されたトゥールビヨン、もうひとつがふたつの小窓とレトログラード式の日付表示によるパーペチュアルカレンダー、そして3つ目がランニング・イクエーション・オブ・タイムである。ランニング・イクエーション・オブ・タイムは、通常の時分針で示される平均太陽時の他に、太陽をかたどった針によって真太陽時を表示するというものだ。

 シースルーバックからは、本作に搭載されている自動巻きムーブメントCal.581DPEを鑑賞することができる。ペリフェラルローターを採用しているため、香箱に刻まれたロゼット装飾や、ブリッジに施された18世紀の軍艦ロワイヤル・ルイ号の手彫り彫金など、精緻な装飾を堪能することが可能だ。

「エクスペリメンタル 1」

ブレゲ エクスペリメンタル1

ブレゲ「エクスペリメンタル 1」Ref.E001BH/S9/5ZV
ブレゲのR&D(研究開発)部門が手掛ける「エクスペリメンタル」コレクションの第1作。精度に悪影響を与える要因を排除するため、コンスタント・フォース・マグネティックトゥールビヨンを搭載した超高振動ムーブメントが採用されている。手巻き(Cal.7250)。37石。7万2000振動/時。パワーリザーブ約72時間。18Kブレゲゴールドケース(直径43.5mm、厚さ13.3mm)。10気圧防水。世界限定75本。5760万7000円(税込み)。

 最後に紹介するのは、ブレゲのR&D(研究開発)部門が手掛ける「エクスペリメンタル」コレクションの第1作「エクスペリメンタル 1」だ。発表は2025年であるものの、ブレゲのトゥールビヨンを語るうえでは欠かせない存在であるため、併せて掲載する。本作には、コンスタント・フォース・マグネティックトゥールビヨンと超ハイビートによって優れた精度を発揮する、革新的なムーブメントが搭載されているのだ。

 時計の精度は、テンプの振幅を一定に保つこと、重力の影響を排除すること、衝撃への耐性を備えることで、高めることができる。本作では、毎時7万2000振動の高振動によって、例えテンプの振幅が一時的に増大や減少したとしても、速やかに通常の振幅に回復させることが可能である。さらに、トゥールビヨンはヒゲゼンマイにかかる重力を均一化し、マグネティック・ピボットは、衝撃が加わっても瞬時に天真を軸受けの中心に復帰させることが可能だ。本作は、時計の精度に影響を及ぼす変数を克服したモデルなのである。

 サファイアクリスタル製のダイアルからは、シンメトリーなムーブメントの構造を楽しむことができる。時刻表示は、12時位置にスモールセコンド、センターに分針、6時位置に時表示を配した、「No.3448」に着想を得たレギュレータースタイルだ。

 上品さとスポーティさを兼ね備えたケースは、18Kブレゲゴールド製。工具を用いることなく脱着が可能な、インターチェンジャブルシステム搭載のラバーストラップが装着されている。



Contact info: ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211


毎時7万2000振動トゥールビヨン! ブレゲの「エクスペリメンタル1」は、機械式のリニアモーターカーだ!

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