2026年に創設75周年の節目を迎えたオリエントスターが、「Joy of Discovery」というブランドステートメントの下、新たなデザインプロジェクト「Sakigake(先駆け)」を始動した。今回注目するのは、その第一弾としてコンテンポラリーコレクションに加わる「スリーハンド」だ。デザインコンセプトは“しなやかに強く”である。ポリッシュを多用した外装と、それを引き締めるブレスレットのサイドライン、シンプルな文字盤上の力強いインデックスが特徴となっている。

Text & Photographs by Shin-ichi Sato
[2026年9月25 日公開記事]
オリエントスターの「Sakigake」プロジェクトとして登場した「スリーハンド」のハイライト
2026年に75周年を迎えたオリエントスターが、「Joy of Discovery」というブランドステートメントの下、現代性を反映しながらデザインをアップデートする新たなデザインプロジェクト「Sakigake(先駆け)」を始動した。
今回注目するのは、その第一弾としてコンテンポラリーコレクションに加わる「スリーハンド」だ。“しなやかに強く”をコンセプトに、ポリッシュを多用した外装と、それを引き締めるブレスレットのサイドライン、シンプルな文字盤上の力強いインデックスによって、柔らかさと力強さの調和を実現している。文字盤では、同ブランドを象徴するパワーリザーブ表示を省き、カレンダー表示も持たない構成を採用する点が大きな特徴となる。デビューに際し、シルバー、ライトブルー、ゴールドの3つのレギュラーモデル(いずれも税込み13万2000円)と、世界限定900本のカッパー(税込み14万3000円)で展開される。
“しなやかに強く”のコンセプトが明確なデザイン
スリーハンドを手に取って見ると、本作が“しなやかに強く”をコンセプトとしていることに納得できる仕上がりだ。ケースやブレスレットのアウトラインは曲線で構成され、光の反射に丸みがある。一方の文字盤は、直線のラインが印象的な各針とインデックスの組み合わせで、力強さがある。
そんな“しなやかに強く”を、さらにひもとくため、外装に注目して解説しよう。本作はポリッシュを主体とした仕上げとなっている。ポリッシュ部の割合が多いと、テカテカと締まりのない印象になる恐れがあるが、本作は面が整ってエッジも効いているためか、メリハリのあるデザインとなっている。

ユニークな造形として挙げたいのが、ラグからブレスレットにつながるマット仕上げのラインだ。ブレスレットの中央部にポリッシュ部を設け、サイドを一段下げてマットなラインを走らせ、きめの細かいサテン仕上げの中ゴマでつなぐ構造となっている。ポリッシュ部分は中央が膨らんだポッテリとした仕上がりであるのに対し、サイドはエッジの効いたシルエットとなり、全体を引き締めている。
うまいと感じたのはエンドリンク部だ。エンドリンクとラグの境目は、ラグに施された溝の隅となっているのだ。言い換えると、部品の境目が仕上げの境目となっていて目立ちにくいのである。また、この溝によってラグが薄く見え、ケースサイドからストラップへとつながる、一体感のあるシルエットとなっている。これはスリーハンドの大きな特徴だ。
本作のレギュラーモデルが13万2000円(税込み)であることを踏まえつつ外装の造形について振り返ると、ポリッシュやサテンといった仕上げにコストを掛けつつ、設計によってケースとブレスレットの一体感を高めるソリューションを組み合わせており、手にした時に高い満足感が得られる完成度を持っていると評価できる。
幅広いユーザーにフィットする良好な着用感
スリーハンドはケース径38.7mm、厚さ11.8mmというシルエットを持つ。インフォーマルウォッチの現代基準に照らし合わせると、本作は径も厚さも中庸からわずかにコンパクトといったところだろう。着用してみると、周長約18cmの筆者の手首では存在感がありつつ収まりが良い。ラグを手首に沿って曲げているためかフィット感に優れ、数値よりも薄く感じる仕立てであった。薄い仕立てのブレスレットも可動域が広く、収まりの良さを感じた。なお、ラグを短く切っているため浮きが発生しにくく、筆者より手首の細いユーザーにも十分にフィットするはずだ。
シンプルでありながら力強い文字盤デザイン
オリエントスターでは、スポーツコレクションを除いて、1箇所以上にローマンインデックスを配するデザインがほとんどである。それに対してスリーハンドではローマンインデックスを使用していない。今後、バリエーションモデルとして追加される可能性もあるが、スリーハンドの基本デザインは本作のバーインデックスであると言える。また、パワーリザーブ表示も日付表示もない構成である点も従来モデルから大きく異なる。

文字盤の構成要素を減らしてシンプルにした際に、重要となるのは各要素の完成度だ。オリエントによると、インデックスのカット面は花びらから着想を得たものとのことだが、造形はエッジが効いて鋭く、特に12時位置では太く、力強さを感じるものだ。その天面には刻みが設けられ、光の反射に変化がある。時分針もインデックスの造形に呼応したエッジの効いたデザインだ。
文字盤はサンレイブラッシュド仕上げのベースの上に、厚クリア塗装を施したものである。カラーバリエーションは、最もコンサバティブで幅広いシーンにマッチするシルバー、爽やかだが鮮やかすぎずに落ち着いたライトブルー、華やかさとシックさが両立したゴールドがレギュラーモデルとして展開される。そして限定モデルとして、赤みを有することでサーモンピンクにも見えるカッパーが用意される。なお、カッパーモデルのインデックスと針はブラックとなり、より引き締まった印象だ。
いずれのバリエーションも、シンプルで落ち着きがあり、優しさのあるカラーリングだ。そこに、キレのあるインデックスと各針を組み合わせて引き締めており、バランスが良い。

自動巻き(Cal.F7542)。22石。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径38.7mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。各13万2000円(税込み)。

自動巻き(Cal.F7542)。22石。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径38.7mm、厚さ11.8mm)。10気圧防水。世界限定900本(うち国内300本)。14万3000円(税込み)。
新しい美や価値を創造しながら実直で良質な仕上がり
本作は従来のオリエントスターのデザインとは大きく異なり、“現代性を反映しながらデザインをアップデート”というSakigakeのコンセプトが盛り込まれている。一方で、Sakigake(先駆け)というチャレンジングなプロジェクト名だが、スリーハンドは奇抜ではなくシンプルで、親しみやすく、幅広いシーンにマッチする文字盤デザインであることが魅力だ。
他ブランドを含めても珍しいラグ部の溝と、そこからブレスレットへとつながるサイドラインも、全体を引き締めつつケースとブレスレットの一体感を高めており、良いディテールだと感じた。
そして、標準的なサイズ感からわずかにコンパクトに仕立てられている点にも、本作へコンセプトが反映されていると筆者は感じた。これは、手首の細いユーザー、太いユーザーのどちらにもフィットすることを狙ったものであろう。フィット感を高めるラグ造形とブレスレットも、幅広いユーザーにおける着用感の向上に寄与している。そして、極めてシンプルで視認性の良好な文字盤に、優れた品質の外装を組み合わせ、手にした時の満足感を高めている。
これらのアプローチを総合して筆者は、オリエントスターがより幅広いユーザーに対し、実直で良質な腕時計として、スリーハンドをデザインしたのではないか? と考える。どんなシーンでも頼りになる1本を探している方は、店頭でチェックしてみよう。



