シリコン(シリシウム)製の部品、メリットとデメリットは?/ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜

FEATUREぜんまい知恵袋
2023.12.25
2023年12月25日掲載記事

Q:シリコン(シリシウム)製の部品、メリットとデメリットは?

広田雅将

A:オメガをはじめ、さまざまなメーカーが採用するシリコン製の部品。かつては一部の高級機だけに見られるものでしたが、今や10万円台の時計でも見られるようになりました。そのメリットは、磁気帯びせず、軽く、そして摩耗しないこと。そのため、機械式時計の心臓部(脱進調速機)に使うと、磁気帯びによる精度への影響を受けにくくなるほか、パワーリザーブが延びたり、振動数を上げられたりします。エントリークラスの機械式時計にも、精度の高いものが増えてきた理由のひとつには、シリコン製の部品があります。

金属製ヒゲゼンマイとシリコン製ヒゲゼンマイに磁石を近付ける様子を、アニメーションにした。後者は磁力の影響を受けていないことが分かるだろう。機械式時計は一度磁気帯びすると、専用の脱磁機で磁気抜きをしなくてはならない。


一方のデメリットは、ピンセットで触ると簡単に壊れてしまうこと。そのため、修理は大変難しくなります。また、長期間使用すると、いきなり壊れるという意見もあります。加えて、製品として導入されたばかりのシリコン製ヒゲゼンマイは湿気に弱く、長期の使用に耐えられませんでした。現在、シリコン素材は以前よりはるかに良くなりましたが、壊れやすい点は変わっていません。もし、シリコン製の部品が入った時計を買うならば、メンテナンスがしっかりしたメーカーのものをお勧めします。

非磁性のため、磁気が大敵である時計の脱進調速機と非常に相性が良いシリコン素材。腕時計に転用され始めた当初こそ、一部の高級時計が搭載するのみだったが、現在ではいわゆる“低価格帯”のモデルにも多く取り入れられている。写真はティソの「ティソ ジェントルマン」。パワーマティック80のヒゲゼンマイにシリコンを使用した2019年6月発売モデルだ。パワーマティック80はベースとなったETA2824-2の2万8800振動/時という振動数を2万1600振動/時とすることで約80時間のロングパワーリザーブを実現したムーブメントのため、軽量で外乱要素を受けにくいシリコン製ヒゲゼンマイは適した組み合わせと言える。
ティソ「ティソ ジェントルマン」。自動巻き(Cal.Powermatic 80 Silicium)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。SS×18KRGケース(直径40mm)。50m防水。26万1800円(税別)。


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