カルティエの時計の魅力を探る。主要コレクションや人気モデル紹介

FEATUREその他
2023.05.10

「生涯使い続けられる一生ものの時計が欲しい」、それは多くの人が望むことだろう。それならカルティエを検討してみてはいかがだろうか。世界のトップメゾンの名に相応しいコレクションの数々から、長く愛用できる逸品が見つかるはずだ。

カルティエ

Haw-lin Services © Cartier


カルティエの基礎知識

ジュエラーとして名を馳せるカルティエは、腕時計というジャンルにおいても一流の名をほしいままにしている。「いつかはカルティエの時計を腕に」、そう願う人は多い。

高級品をまとうならば、単にアイテムを身に着けるだけでなく、そのブランドに関する知識も有しておきたいものだ。そうすることで一層の愛着が湧き、所有することへの説得力も増すに違いない。

カルティエとはいかなるメゾンであるのか。その基礎的な知識を押さえておこう。

カルティエとは

超一流のジュエラーとして真っ先にその名前が上がるほどの認知度を誇るカルティエ。一方で名作・傑作を数多く世に送り出している腕時計メーカーという表情も持つ。

事実、カルティエは世界で初めて男性用腕時計を開発したメーカーなのだ。

ジュエラーとして、ウォッチメーカーとしてカルティエは紛うことなく世界のトップに君臨している。その品質・デザイン性・ブランド力すべてにおいて高い信頼を集めているのだ。

カルティエの歴史

カルティエのメゾンが誕生したのは1847年のことだ。創設者であるルイ=フランソワ・カルティエ(1819-1904)が、フランスのモントルゲイユ29番地に構えていたジュエリー工房を譲り受けたことからスタートしている。

その後ヌーブ・デ・プティ・シャン通り5番地にオープンしたアトリエは、フランス国内屈指の格式の高さを誇るオルレアン公の邸宅のすぐそばであった。カルティエは、その邸宅で行われる社交パーティーに参加する貴族たちに、自身の創作したジュエリーの素晴らしさを説き続けた。

ストマッカー ブローチ

Vincent Wulveryck, Collection Cartier © Cartier
創業家三代目のルイ・カルティエが率いていた1907年、特別な顧客のためにつくられた「ストマッカー ブローチ」。1900年に他社に先駆けてカルティエが創出したプラチナ加工技術をふんだんに取り入れ、カルティエ独自の「ガーランド スタイル」に昇華している。製作はカルティエ パリが担当。

そこで評価を高めていったカルティエの名は、次第にフランス全土の貴族へと広まる。イギリス国王エドワード7世は、カルティエを「王の宝石商、宝石商の王」と称したほどだ。

そのクォリティーの高さを称賛する声は、フランス国内にとどまらなかった。1939年までの間に15カ国の王室御用達となる。現在では、国境を越え、世界のセレブが愛用するトップジュエラーのひとつである。

「サントス」は歴史的な腕時計

「サントス ドゥ カルティエ」は、カルティエが手掛ける男性腕時計の代名詞的な存在だ。なぜなら“世界初の男性用腕時計”として語り継がれる伝説のモデルだからである。

1904年に発表された「サントス」は、3代目当主のルイ・カルティエの手による。ブラジルでコーヒー王と呼ばれた男の息子で、世界的な飛行家でもあったアルベルト・サントス=デュモンから依頼され製作した。

アルベルト・サントス=デュモン ルイ・カルティエ

Archives Cartier © Cartier
アルベルト・サントス=デュモンと食事をとるルイ・カルティエ。サントス=デュモンはパリのレストラン、マキシム・ド・パリで、操縦中に懐中時計を使うことの不便さを訴えた。不自然にテーブルが高い理由は、飛行感覚を養うためとされている。

サントス=デュモンは、ルイ・カルティエに対して、飛行機の操縦時にも簡単に時間を確認できる時計の開発を依頼した。それまで時計といえば懐中時計であり、操縦時に時計を取り出すことへの不便を感じていたからだ。

そのオーダーを受けたルイは、懐中時計を腕に装着するのではなく、初めから手首に着用することを前提としたデザインを創案する。そうすれば、コックピットで操縦桿(かん)を握っていても盤面を視認できる。そして生み出されたモデルが世界初の男性用腕時計「サントス」である。


カルティエ腕時計の特徴

不動の王者として高級宝飾界に君臨するカルティエだが、製作されるジュエリーは一目でそれと分かる特徴を備えている。

それは腕時計においても同様だ。上質で精密、クォリティーの高さはもちろんのこと、その独自性を兼ね備えたまさに一流品である。

特徴的なダイアル

カルティエの腕時計における特徴は、そのダイアルにある。パシャなどの数モデルを除き、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・IIII・Ⅴというローマ数字が採用されていることに気付くだろう。

タンク

Laziz Hamani © Cartier

一般的な腕時計において、Ⅳは「IIII」と表記する。この表記は、正式なローマ数字のルールには存在しないものである。

Ⅳとしない理由には諸説ある。そのひとつの説が、フランスのシャルル5世が書き換えさせたというものだ。Ⅳ(4)とはⅤ(5)からⅠ(1)を引く、と表記することから、自身の王位「5世」から1を引くことは縁起が悪いと考え、ⅣをIIIIと表記するように命じ、それが現代まで続いているとされている。

デザインと技術の共存

多くの時計メーカーは市場を見据え、ユーザーに受け入れられやすいデザインを持つ商品を世に投じるものだ。それは企業として当然の姿勢だろう。

しかしカルティエは違う。そのデザインには、時代の先端を行く先進性・前衛性といった要素が多分に含まれている。それはあたかも、時代の方を自分たちに合わせるかのごとく、強い信念が感じられる。

© Cartier

とはいえ、デザインの斬新さが先行しているわけではない。一流であり続けるためには、時計としての精度も求められる。その価値が維持なければ、市場の信頼はすぐに低下するからだ。

長い歴史に培われカルティエのブランドバリューは、マーケットに媚びない前衛性と堅実な技術を融合させたモノ作りを行ってきた日々の証左なのである。

カルティエ腕時計の値段目安

多くの時計ファンが憧れるカルティエだが、その価格はいかなるものだろうか。一流ゆえに垂涎と表現するに相応しいモデルもあるが、ラインナップも豊富で、その価格帯には幅がある。

エントリーモデルとして30万円クラスの時計が用意されている。初めてカルティエを手にしたい人にもおすすめだ。

カルティエを代表するモデルであり、100年以上の歴史を誇る「サントス」を見てみよう。同コレクションにもさまざまなモデルが存在するが、定番といえるラインだと70万円ほどのプライスになる。

その他、宝石がちりばめられた絢爛豪華な特別仕様のタイプだと、数千万円という価格が付くものもある。カジュアルな価格のものから、世界の王族が求める驚きのプライスまで実に幅広いのも、カルティエの魅力といえる。

近年は複雑機構開発に積極的

かねてより性別を問わないユニセックスな商品展開を手掛けているカルティエ。性差に縛られず、幅広いユーザーにマッチしたデザインは秀逸だ。

同じモデルをS・M・Lでラインナップし、好みに合わせて選択できる戦略は、今でこそ一般的になってきたものの、カルティエが導入した当初は大きな衝撃を与えた。

一方で、機械式ムーブメントの開発にも余念がない。1998年からは、機械式時計に特化した「コレクション プリヴェ カルティエ パリ(CPCP)」ラインをスタートさせた。

CPCPは終了するも、2009年には「オート オルロジュリー コレクション」が発表され、独自ムーブメントを多数ラインナップ。機械式時計は、時計好事家を魅了し高い評価を得ている。