ブレゲの時計が放つ大人の魅力。人気の秘密とおすすめ15選

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2021.09.04

偉大なる時計師であり発明家であったアブラアン-ルイ・ブレゲのエッセンスを引き継ぐ、ブレゲの腕時計。その魅力を探るとともに、トラディション、クラシック、マリーン、ヘリテージ、タイプ XXという4つの旗艦コレクションから主要なモデルを紹介する。

ブレゲ マリーン


ブレゲとは

1775年創業のブレゲは、現代の機械式時計に搭載される多くの複雑機構を発明、あるいは改良し、各国の王侯貴族を魅了した。

科学と天文学の知見を機械式時計の製造に活かし、現代の腕時計の技術的基盤を200年以上も前に築いたブレゲの魅力を紹介する。

ブレゲの魅力

アブラアン-ルイ・ブレゲ

創設者アブラアン-ルイ・ブレゲ(1747-1823年)は、スイスのヌーシャテルで生まれ、職人としての人生の大半をパリで過ごす。彼によって構築された基準は、現在、多くのメーカーが時計製造における指標としている。

ブレゲの創業者である伝説的な時計師アブラアン-ルイ・ブレゲは、「自動巻機構」やテンプの軸を衝撃から守る機構「パラシュート」など、機械式時計の基礎となる数々の機構を発明した人物。

「トゥールビヨン」や「パーペチュアルカレンダー」(永久カレンダー)といった複雑機構もブレゲの発明であり、一説には機械式時計が搭載する機構のおよそ7割はブレゲの発明や改良が関わっているとされる。

そして1999年にニコラス・G・ハイエックがブレゲの経営を引き継いでからは、77以上の特許を取得し、毎年新しいムーブメントを開発するという快挙を成し遂げた。

ブレゲの腕時計は、その多くがギヨシェ彫りを施した美しいダイアルと高度な複雑機構を備え、いくつかの傑作は著名な美術館にも収蔵されている。


ブレゲの特徴

現代のブレゲは、アブラアン-ルイ・ブレゲの知の遺産を引き継ぎ、さらに現代的な解釈を加えて芸術作品とも呼べる腕時計を製造している。ここでは、ブレゲの腕時計を特徴づける複雑機構とデザインについて見ていこう。

トゥールビヨン

腕時計が流通するのは20世紀に入ってからであり、アブラアン-ルイ・ブレゲが生きた時代では、携帯式時計といえば懐中時計を指した。

懐中時計はポケットに入れている時間が長く、この状態ではムーブメントが直立する状態になる。このため主ゼンマイの動力が歯車を正確に動かせなくなり、時計の精度が落ちることが懐中時計に共通する問題であった。

この重力による影響を制御するためにアブラアン-ルイ・ブレゲが発明したのが「トゥールビヨン」である。

これはゼンマイ、アンクル、ガンギ車、テンプからなる脱進機全体を周期的に回転するひとつのキャリッジに収めた構造。重力の影響を受けやすい部品をまとめ、一定周期で回転させることによって時計にかかる重力を最小限に抑える仕組みで、複雑機構の代名詞のひとつとなっている。

1801年、アブラアン-ルイ・ブレゲは新しい調節機構であった「トゥールビヨン」 の10年間の特許権を取得。1805年に初の商品化を果たし、翌1806年にパリのアンヴァリッド広場で開催された工業製品の博覧会で一般に披露された。

パーペチュアルカレンダー

1582年から現代に至るまで、暦法は世界各国でグレゴリオ歴を用いているが、フランス革命により王政が廃止された1793年からフランスの暦法は一時的に共和暦(フランス革命歴)に変更された。

1日は10時間、1週間は10日となり、時計技師たちは新暦法に対応することが求められた。ここでアブラアン-ルイ・ブレゲが発明したのが「パーペチュアルカレンダー」である。

これは、グレゴリオ歴と共和暦の暦差をひとつのダイアル上で表現し、月の長さや閏年も自動的に修正して歴を刻む複雑機構であった。

1806年にはナポレオン・ボナパルトによって共和暦は廃止されたが、現代ではグレゴリオ歴での永久カレンダーが、高度な技術力を持つ時計メゾンで採用されている。

No.1369

1973年、グレゴリオ暦に代わって導入された共和暦に対応するべく、アブラアン-ルイ・ブレゲが発明した機構が「パーペチュアルカレンダー」。写真はグレゴリオ暦に基づくパーペチュアルカレンダーウォッチ「No.1369」。1871年販売。

ミニッツリピーター

「ミニッツリピーター」とは、時計に組み込まれたハンマーが鐘を叩くことにより、現在時刻を音で報せる複雑機構である。すでに1680年代にはリピーターウォッチが製造されているが、これは置時計内部の鐘や懐中時計の裏蓋を、ハンマーで叩く仕組みであった。

アブラアン-ルイ・ブレゲが革新的だったのは、ムーブメントの外周を取り巻く板バネを叩く「ゴング式」という機構を発明したことである。これにより音色は繊細かつ豊かになり、機構の小型化にも寄与した。

ブレゲ方式のミニッツリピーターは王侯貴族を中心に好評を博すが、腕時計に採用できるほどの小型化に成功したのは1892年、オーデマピゲによってである。

ミニッツリピーターは当時の王侯貴族を中心に好評を博し、現在も愛好家にとっては垂涎の機構になっているが、高級時計にふさわしい音色を奏でるのは至難の業であり、採用するメゾンは一部に限られている。

アブラアン-ルイ・ブレゲが最初のリピーターウォッチを製作してから200年超。現在、ブレゲは最適化したムーブメントの導入と共鳴に関する研究を進めたことで、より明瞭な音を実現した。

デザイン

アブラアン-ルイ・ブレゲは、懐中時計の装飾においても数々の発明と改良を行った。ギヨシェ文字盤、ブレゲ針とブレゲ数字、ケースのコインエッジや丸みを帯びたラグなどだ。

これらの装飾は現代のブレゲの腕時計を象徴するデザインとして不可欠であり、ほかの時計メゾンでもアブラアン-ルイ・ブレゲへの敬愛を込めてたびたび採用されることもある。

なかでもギヨシェ文字盤は格別。家具や食器に用いられていた技法を、最初に時計の装飾として採用したのがブレゲであり、さまざまな彫りのパターンを考案した。

鋲打ちのようなクル・ド・パリをはじめ、放射状に広がるソレイユや波紋様のヴァーグなどを手動旋盤でダイアルに刻み込まれる繊細なパターンは、今や高級腕時計に欠かせない装飾技法として多くの時計メゾンで採用されているものだ。

ギヨシェ

シルバーやゴールドに規則的なパターンを彫り込む「ギヨシェ装飾」を1786年頃に取り入れたブレゲ。手動旋盤によるギヨシェ彫りは、ブレゲを象徴する要素のひとつとして今日まで受け継がれている。写真はダイアルにクル・ド・パリやソレイユ装飾を施した「クラシック ミニッツリピーター パーペチュアルカレンダー 5447」(3403万円/税別)。


ブレゲという時計ブランドの魅力。その来歴やコレクションを知ろう

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