パテック フィリップ「カラトラバ」の魅力を探る。その系譜や主要モデル

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2021.02.18

パテック フィリップは、1839年にスイスで誕生した高級ブランドである。中でも「カラトラバ」は、同社を象徴するモデルとして広く知られている。ラウンド型腕時計の模範ともされるカラトラバの系譜や主要モデルについて解説しよう。

カラトラバ


パテック フィリップとカラトラバを知る

パテック フィリップは、ジュネーブ高級時計製作の伝統を忠実に受け継ぎ、絶え間なく発展させてきた歴史あるブランドだ。各国の王室や政財界のトップから極めて厚い信頼を得る存在として、その名は広く知られている。

同社を象徴し、代表するモデルが「カラトラバ」である。まずは、ブランドとタイムピース、それぞれの概要に触れてみよう。

世界最高峰の高級時計メーカーのひとつ、パテック フィリップ

パテック フィリップは、スイスを代表する世界最高峰の高級時計メーカーのひとつである。

1839年に、ポーランド人の貴族、アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックとフランソワ・チャペックというふたりのポーランド人によって創設された「パテック, チャペック社」が、同社のルーツとなった。

5年後の1844年には、発明の天才といわれたジャン・アドリアン・フィリップと知り合い、フィリップは翌1845年に経営に参画。その一方でチャペックは退社し、1851年に社名を「パテック, フィリップ社」へと変更する。

1839年にパテック, チャペック社を設立したアントワーヌ・ノルベール・ド・パテック(左/1812-1877)と、1845年に入社した時計師ジャン・アドリアン・フィリップ(右/1815-1894)。

「世界一の時計作り」という理想を掲げ、自社で生産・加工するマニュファクチュールとして、時計作りに向き合ってきた。その結果、時計界の最高峰にまで上り詰め、歴史に名を残す時計メーカーとなった。

ドレスウォッチの完成形とされるカラトラバ

「カラトラバ」は、同社を象徴するタイムピースであり、代表的なコレクションだ。スタンダードな丸型のデザインは、現代の腕時計の模範とも評される。

立体的なインデックスや、ドフィーヌ型の針などは、1932年に最初のモデルが発表されて以来貫かれている、不変のスタイルだ。

そのコレクション名は、12世紀に誕生したスペインのカラトラバ騎士団に由来する。リュウズにもかたどられている同社の独特のエンブレムは、剣と百合の花を組み合わせたカラトラバ騎士団のシンボルマーク「カラトラバ十字」をモチーフとしている。


カラトラバの魅力

ジャン・アドリアン・フィリップが、同社のエンブレムにカラトラバ十字を用いた理由は、完璧な均衡からなるその美しさにある。その紋章は、勇気・礼節・独立という、騎士に不可欠な資質も象徴している。

究極の美しさと、騎士団に象徴される品格を追求した「カラトラバ」の魅力を、より深く探っていこう。

妥協なく本質を追求したデザイン

カラトラバ Ref.5196

Ref.5196のインデックスと針。立体的なデザインは初代モデルを継承していることが分かる。

ドレスウォッチと呼ばれるタイムピースは数あれど、カラトラバほど世界の王室やエグゼクティブに愛されている時計は他に類を見ない。

1932年のデビュー以来、フォーマルなシーンに最適な逸品として信頼を獲得し続けているカラトラバ。その最大の魅力は、時を超越した美しさを持っている点にある。

明瞭なライン、立体的で均整が取れた文字盤などに、妥協なく本質を追求した優れたデザインセンスが見て取れる。

美観をかなえるとともに徹底して無駄を省いて実用性を具現化する姿勢は、ドイツの芸術運動・バウハウスに触発されたものだ。

丁寧な作業と修理保証

パテック フィリップでは製作された時期を問わず、すべての時計のメンテナンスと修理に対応。過去のムーブメントでも修復できるのは、古い工作機械や工具に加え、当時の技術などもしっかりと受け継がれているからだ。

カラトラバをはじめ、パテック フィリップのタイムピースが備える傑出した美しさは、手仕上げによるところが大きい。

工作機器類の進歩はあれ、パテック フィリップの時計作りは150年前と大きく変わりはない。時計製造に関して、100を超える特許を持ち、小さな部品であっても手作業で研磨する技術力と高い品質は、工房内で働く熟練の職人たちによって支えられている。

パーツを手作業で研磨、組み上げているからこそ、創業以来販売してきた時計のすべてを製品寿命の全期間にわたって必ず修理するという保証が可能となっている。

この保証制度によって、ひとりのオーナーの人生と共に歩むだけでなく、次の世代へと継承できる、まさに家宝として子孫へと引き継げる時計なのだ。


カラトラバの系譜

ラウンド型腕時計の古典として、確立したスタイルを備えた「カラトラバ」は、パテック フィリップを象徴するモデルとして進化を遂げてきた。その系譜をたどってみたい。

初代カラトラバ

カラトラバ Ref.96

1932年に発表された「カラトラバ」の名作Ref.96。立体的なインデックスやドフィーヌ針といった意匠は、この初代モデルですでに確立していた。

初代カラトラバ(1932~1970年代前半)「Ref.96」は、通称“クンロク”と呼ばれることもある。デビュー当時、直径31mm、厚さ9mmというコンパクトなサイズが話題をさらった。発表当時としては驚異的な薄さを備え、エレガントなスタイルを実現している。

美麗なラグやフラットなポリッシュベゼル、シンプルながら計算し尽くされたダイアルデザインなどに、同社の技量が詰め込まれている。

当時の時計は、懐中時計に強引に取り付けたラグにベルトを装着するタイプがほとんどだった。しかしカラトラバは、ケースからラグにかけて流麗なラインを描き、他社の時計とは一線を画するビジュアルを備えている。

また、カラトラバでは、秒針を独立させたり、あえて秒針をなくしたりといったモデルが、多く存在することも特徴だ。インダイアルで秒を示す初代モデルで、既にデザインへの挑戦がうかがえる。

Ref.3445からデザイン刷新

カラトラバ Ref.3445

1960年代を代表するのがRef.3445。極端に細いインデックスと針を採用したことで、エレガントな雰囲気に。

長いカラトラバの歴史の中で、大きな転換期となったモデルが1960年に投入された「Ref.3445」だろう。デザインを大胆に刷新し、新たな時代の幕を開けた存在だ。

直線的なラグや、細型のインデックスなどが、シャープな印象を抱かせる。シンプルさを際立たせることで、新しい価値を生み出したのである。特に直線ラグは、以降のカラトラバにおける重要な要素のひとつとなっていく。

同機の持つシャープネスは、発表当時のトレンドを巧みに取り入れたものである。そのデザインは、今なお高い評価を得ている。

現代につながるRef.3796の登場

カラトラバ Ref.3796

1982年に発表されたRef.3796。搭載するムーブメントは、名機と名高いCal.215 S。

クラシカルな雰囲気にモダンなテイストを備えた現代版への橋渡し役的存在が1982年に登場した「Ref.3796」だろう。このモデルを機に、初代Ref.96をトレースした現代版カラトラバへの系譜がスタートすることとなった。

ムーブメントには、Cal.215 Sを搭載。従来機よりも振動数を上げることで、精度をはじめ、駆動時間や耐衝撃性などを飛躍的に向上させた。同ムーブメントは、最新のカラトラバでも使用される名機Cal.215 PSへ継続されている。

2000年を最後に、Ref.3796の生産は幕を閉じることとなる。ファンも多く、生産終了を惜しむ声も大きかった。


カラトラバ選び方のポイント

パテック フィリップの魅力が詰まった「カラトラバ」には、実に多様なモデルがラインナップされている。いずれもが素晴らしいタイムピースで、選ぶ際には迷いも生じるだろう。

そこで、最良のモデルをチョイスするためのポイントを解説しよう。

ムーブメントで選ぶ

マニュファクチュールとしての厚い信頼を集めるパテック フィリップは、優れた機械式ムーブメントの数々を世に送り出している。その種類によって選ぶこともひとつの方法といえる。

機械式には、大きく分けて「手巻き」と「自動巻き」の2種類があり、それぞれに利点や魅力がある。

手巻きであれば「Cal.215」搭載モデルがおすすめだ。同ムーブメントを備えたモデルは厚みを抑えたタイプが多く、6時位置に配されたスモールセコンドが特徴となっている。

Cal.215

パテック フィリップを代表する手巻きムーブメントのひとつであるCal.215。現在もRef.5196などに搭載される名機だ。

自動巻きのおすすめは「Cal.324系」を搭載したモデル。日付表示があり、秒針が中央に配されたセンターセコンドである。

また、主にレディスモデルに搭載されるマイクロローター式薄型自動巻きの「Cal.240」にも注目してほしい。カラトラバの現行モデルでは秒針がない2針タイプがラインナップされ、エレガントな薄いケースとシンプルなスタイルが魅力だ。

ラグやベゼルのデザインで選ぶ

ラグは、カラトラバの真髄とも呼べるパーツのひとつだ。ラグの形状に注目してモデル選びに臨んでみるのもよいだろう。

カラトラバ Ref.5196

フラットなベゼルと湾曲したラグとの組み合わせが美しいRef.5196。

ケースとバンドとを結び付ける結節点であるラグの形状は、時計の印象を大きく左右する。流線ラグのしなやかな雰囲気や、ストレートラグが生む洗練されたビジュアルなど、好みでチョイスできるポイントだ。

また、ダイアルを囲むベゼルの形状も大切な要素だ。よりカラトラバらしさを求めるならば、フラット(テーパード)がいいだろう。

ベゼルに丸みを持たせたタイプならば、クラシカルなカラトラバにモダンな印象が加味される。ストレートラグとの相性も抜群だ。

あるいは、装飾を施したタイプもある。シックな装いに、独自のデザインが加わることで、よりエレガントな雰囲気を生み出している。

素材で選ぶ

卓越した技術によって、直径31mmというスモールサイズを実現し人気を博したカラトラバだが、現在は37mmや39mmが主流で、手首に収まりやすいサイズになっている。

その一方で、ラグジュアリーさを演出する素材は多様だ。ホワイトゴールドやローズゴールド、イエローゴールドといった高級素材を惜し気もなく使用する。

また、それらのコンビネーションによっても、豊かな表情が生まれる。素材が醸し出すテイストの違いも見極めてみてはいかがだろうか。


カラトラバおすすめモデル

パテック フィリップや「カラトラバ」の歴史に加え、選び方のポイントを解説してきた。次に、厳選した3つのおすすめモデルを紹介しよう。

ゴールドが映える5196R

カラトラバ 5196R-001

カラトラバ 5196R-001
手巻き(Cal.215 PS)。18石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約44時間。18KRG(直径37mm)。3気圧防水。257万円(税別)。

「5196R」は、パテック フィリップにおいては末尾の96が示すように“クンロク”の流れを組む伝統的なラインだ。同社およびカラトラバのシンボルとして、最高のポジションにある逸品といえるだろう。

ケース径は37mmと、初代よりわずかに大きくなり、手巻きムーブメントのCal.215 PSも往年の名機よりも数段の技術革新が図られている。

ローズゴールドが映えるケースからは、高貴な雰囲気が漂う。シルバーのダイアルと相まった控えめな美しさからは、時代を超えて愛され続けるタイムピースであることがうかがえる。ローズゴールドのほか、イエローゴールド、ホワイトゴールドのケースもあり、それぞれ異なる魅力を放つ。

シックなブラックダイアル 5227G

カラトラバ 5227G-010

カラトラバ 5227G-010
自動巻き(Cal.324 S C)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWG(直径39mm)。3気圧防水。396万円(税別)。

自動巻きキャリバー324 S Cを搭載した「5227G」は、シンプルなセンターセコンドで、ブラックラッカー文字盤による凛々しい表情が印象的なモデルだ。

サファイアクリスタル製のケースバックはインビジブルヒンジのダストカバーで守られ、3気圧防水を備えている。ホワイトゴールドのほか、ローズゴールドとイエローゴールドのケースもラインナップされる。

ダイヤモンドインデックスが美しい 5297G

カラトラバ 5297G-001

カラトラバ 5297G-001
自動巻き(Cal.324 S C)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KWG(直径38mm)。3気圧防水。454万円(税別)。

エレガントさを追求したいと願うなら「5297G」をおすすめしたい。マットブラックのダイアルとダイヤモンドインデックスの組み合わせが、この上ない気品をまとっている。

ケース径38mmの縁を飾るベゼルにも68個(約0.7カラット)のダイヤモンドをセットし、贅を極めたタイムピースに仕上がっている。光沢のあるアリゲーターストラップも、ラクジュアリーなテイストに華を添える。


シンプルな美しさで手元を彩る

控えめで上品なカラトラバは、単にシンプルなだけではない。巧みに計算されたデザインを、高度な技術によって形作ることで、シンプルさが、時代を超える美しさとなってあらわれている。

ドレスウォッチの最高峰に位置付けられるカラトラバなら、あらゆるシーンで存在感を示すだろう。洗練された美しさで、手元を彩る時計だ。



Contact info: パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンター Tel.03-3255-8109


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