パテック フィリップの逸品カラトラバのおすすめ3選。魅力と選び方

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2020.12.03

「カラトラバ」は、パテック フィリップのエンブレムである「カラトラバ十字」を象徴する代表的コレクションである。ドレスウォッチの完成形であり、ラウンド型腕時計の模範として知られるカラトラバの魅力を探りながら、現行ラインの逸品3モデルを紹介する。

カラトラバ


パテック フィリップとカラトラバ

パテック フィリップの腕時計は「パテック フィリップ・シール」による品質認定や、どんなに古い時計でも修理が可能なことによって、孤高の価値を誇る。

時間を超越する価値の象徴でもある、カラトラバの魅力を探るべく、まずは、パテック フィリップの創業から「カラトラバ」の誕生に至る歴史を紹介する。

1839年創業のパテック フィリップの歩み

1839年、アントワーヌ・ノルベール・ド・パテックとフランソワ・チャペックによって「パテック, チャペック社」が設立された。

やがて1845年には、リュウズ巻き上げ・時刻合わせ機構の発明者であるジャン・アドリアン・フィリップが入社し、1851年「パテック, フィリップ社」へと社名を改める。

世界初のリュウズ式懐中時計は評判となり、王侯貴族や著名な芸術家を顧客として不動の地位を獲得。

また、1864年には永久カレンダー搭載懐中時計、1925年には永久カレンダー搭載腕時計をそれぞれ世界で初めて発表するなど、複雑機構の雄としてもこれまで時計産業をリードしてきた。

アントワーヌ・ノルベール・ド・パテック、フランソワ・チャペック

1839年にパテック,チャペック社を設立したアントワーヌ・ノルベール・ド・パテック(左/1812-1877)は、1845年にジャン・アドリアン・フィリップ(右/1815-1894)と出会い、1851年にはパテック, フィリップ社へと社名を変更した。

カラトラバはシンプルな丸型デザイン

1932年、懐中時計から腕時計への転換期ともいえるこの時代に、パテック フィリップは「カラトラバ Ref.96」を発表した。

懐中時計のフェイスをベースとして腕時計の機能性を追求したRef.96は、ラウンドケースとラグを一体化させ、装飾を削ぎ落としたシンプルかつ実用的なモデルである。

懐中時計より小型な腕時計に適したインデックスと針のバランスは、ダイアルの黄金比を決定付ける模範となった。

現代においても多くの時計メーカーが、Ref.96のデザインを基準として2針や3針のドレスウォッチを製作している。


カラトラバの魅力とは

パテック フィリップが追求する価値は、ブランドのエンブレムに象徴される。

「カラトラバ」のリュウズやムーブメントに刻まれる、カラトラバ十字にまつわるエピソードと、この時計のデザインや機能性について見ていこう。

誕生エピソードと名前の由来

1887年、パテック フィリップはブランドのエンブレムとして「カラトラバ十字」を商標登録した。カラトラバとは12世紀にスペインで初めて設立された戦闘騎士団の名称で、イスラム勢力と戦ったことで知られ、その紋章は4つの百合の花で構成されている。

この完璧な均衡を備えた紋章が象徴するのは「勇気・礼節・独立」。そしてカラトラバの名を冠するRef.96は、パテック フィリップが追求する、時代を超越したデザインや価値の象徴となった。

シンプルで均整の取れたデザイン

Ref.96は、数字によるインデックスを用いず、立体的なアプライドインデックスとドフィーヌ針を採用。光を受けると複雑な陰影が生まれ、着用者はあらゆる角度から瞬間的に時間を読み取れる。

ベゼルは薄く、ケースから滑らかに伸びるラグはケースバック側に湾曲。ケースと一体化したラグは強度が高いだけでなく、手首にフィットする人間工学に基づいたデザインでもあるのだ。

初出から約90年の間にカラトラバは多様化が進んでいるが、いずれのモデルもシンプルで均整の取れたデザインを持ち、エレガントかつ実用的である。


カラトラバの歴代モデル

「カラトラバ」は約90年に及ぶ歴史の中で、少なくとも25種以上の派生モデルを生み出している。原点であるRef.96と、その後継機であるRef.3796やRef.5296、ベゼルの装飾がユニークなRef.5119について見ていこう。

「クンロク」の愛称持つ原点 Ref.96

カラトラバ Ref.96

カラトラバの原点であるRef.96は、1932年から70年代まで販売されたロングセラーモデルだ。日本では「クンロク」の愛称で親しまれ、古典的傑作としていまだ二次市場で高い人気を誇っている。

大きなドフィーヌ針とアプライドインデックスに、6時位置のセコンドサークルを合わせたクラシックなスタイルだ。

ケースは直径約31mmと小ぶりである一方、レザーストラップは幅18mmもあり、強度や実用性を重視した設計思想がうかがえる。

原点モデルのDNA継承 Ref.3796

カラトラバ Ref.3796

1982年に発表されたRef.3796。Ref.96を継承し、ケースは直径31mmと小ぶりながらも高い視認性を実現していた。ムーブメントは手巻きのCal.215 PSを搭載。

1982年から2000年にかけて販売されたRef.3796は、オリジナルモデルであるRef.96のデザインを復刻させた名機だ。

ケース直径やストラップ幅を含め、デザインはおおむね共通しているが、ムーブメントは高性能かつ薄型となった。

搭載する手巻きムーブメントCal.215 PSは毎時約2万8800振動で、パワーリザーブは約44時間を誇る。ベゼルとケースバックはフラットで、着用感の良好な薄型モデルだ。

ドフィーヌ針はシャープに、アプライドインデックスは立体感を増し、高い視認性を確保しつつスタイリッシュな仕上がりである。

存在感を放つ38mmケース Ref.5296

カラトラバ Ref.5296

2005年に発表されたRef.5296はグラフィカルなダイアルを採用し、モダンな雰囲気を放つ。ケース直径は38mmで、ツートーンのシルバーダイアルにブルーのインデックスと針を組み合わせたことにより視認性は極めて高い。日付表示付きの自動巻きムーブメントCal.324 S Cを搭載。

2005年から2019年に販売されたRef.5296は、Ref.96のデザインを受け継ぎながら、ケース径を38mmにまで拡大したモデルである。

自動巻きムーブメントCal.324 S Cを搭載したことで、秒針はセンターへ移動し、3時位置にはデイト表示を搭載。スモールセコンドがないことでダイアルはすっきりとまとまった。

写真の、ダイアルにふたつのサークルを配した存在感が際立つモデルのほかに、2007年に発表されたシンプルなダイアルのモデルも存在する。

クル・ド・パリ装飾が光る Ref.5119

カラトラバ Ref.5119

クル・ド・パリ装飾を施したベゼルと、ローマンインデックス、リーフ型針の採用により、それまでのカラトラバとは異なるエレガンスを表現したRef.5119。ケース直径は36mm。手巻きムーブメントCal.215 PSを搭載する。

2006年から2019年に販売されたRef.5119は、1985年から2006年にかけて販売された名作Ref.3919の後継機だ。デザインコードはRef.96の系譜とは大きく異なる。

ダイアルにはリーフ型針とローマンインデックスを採用し、ラグは細く直線的で、全体的に繊細な印象だ。特筆すべきはベゼルに刻まれたクル・ド・パリ装飾である。

ギヨシェ彫りの面よりベゼルのトップが高い構造であり、ダイアルが平面的になったことを感じさせない立体感を生んでいる。