時計ジャーナリスト 渋谷ヤスヒトが選ぶ、2021年発表の時計ベスト5

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2021.12.01

2020年に続き、「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2021」をはじめ、ほとんどの時計フェアや展示会がオンラインで開催された2021年。日本、そして世界を代表する著名ジャーナリストたちは、2021年に発表された時計をどう評価しているのだろうか? 彼らに2020年発表時計からそれぞれのベスト5を選んでもらった。

パテック フィリップ 「カラトラバ Ref.6119」

 時計愛好家にとっては“うれしいサプライズ”、直径39mmのケースサイズいっぱい、新開発の新世代&新型手巻きムーブメントCal.30-255 PSを搭載したシンプルウォッチの王道モデル。クル・ド・パリを施したベゼル、文字盤の配置やディテールも完璧。今後、このムーブメントをベースにした手巻きのコンプリケーションモデルの登場も楽しみです。

パテック フィリップ「カラトラバ 6119R」
手巻き(Cal.30-255 PS)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。18KRGケース(直径39mm、厚さ8.1mm)。3気圧防水。339万9000円(税込み)。(問)パテック フィリップ ジャパン・インフォメーションセンターTel.03-3255-8109

オメガ 「スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル マスター クロノメーター」

 アポロ宇宙船の宇宙飛行士と“月に行った腕時計”が、超耐磁&高精度を誇るマスター クロノメーターに進化し、通常モデルとしてついに登場。ムーブメントが目で楽しめるサファイアクリスタル風防&シースルーバックのこの仕様。ヘサライト風防&シーホース刻印のクローズドバック仕様。どっちも正解です。

オメガ「スピードマスター ムーンウォッチ マスター クロノメーター」
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。SSケース(直径42mm、厚さ13.18mm)。50m防水。83万円(税込み)。(問)オメガお客様センター Tel.03-5952-4400

オリス 「アクイスデイト キャリバー400 - 41.5mm」

 2021年のダイバーズは超オススメの傑作ぞろい。中でも優れた精度と耐磁性能、約5日間パワーリザーブかつ10年間の品質保証を実現し、自社製新型キャリバー搭載で40万円を切る価格の本作は、独立系ブランドの心意気に感動の1本。「アップサイクル」仕様文字盤の登場も期待してます。

オリス「アクイスデイト キャリバー400 - 41.5mm」
自動巻き(Cal.Oris キャリバー400)。21石。2万8800振動/時。-3~+5秒/日(COSC基準範囲内)。パワーリザーブ約5日間。SSケース(直径41.5mm)。300m防水。37万4000円(税込み)。(問)オリスジャパン Tel.03-6260-6876

ブルガリ 「オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー」

 超薄型時計の世界にメカニズムとデザインで新風を吹き込んできた「オクト フィニッシモ」。ジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリの「金の針賞」を受賞したこの最新作は、ファセットカットの現代的なケースにジェンタ時代からのアイコンであるレトログラード式カレンダーを織り込むなど、すべてに納得&感心の1本です。

ブルガリ「オクト フィニッシモ パーペチュアル カレンダー」
自動巻き(Cal.BVL305)。30石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約60時間。Tiケース(直径40mm、厚さ5.8mm)。30m防水。683万1000円(税込み)。(問)ブルガリ ジャパン Tel.03-6362-0100

カルティエ 「タンク マスト(ソーラービート™️モデル)」

 メゾン初で約16年間は特別なメンテナンス不要なソーラー駆動の「ソーラービート」ムーブメントと天然リサイクル素材のストラップ。第1次世界大戦後の1917年、「タンク(戦車)」をモチーフに誕生したメンズウォッチの傑作が、サステナブルな今の時代が求める技術を搭載して登場。身近な価格も素晴らしい。

カルティエ「タンク マスト」ソーラービート™️モデル
LMサイズ。ソーラービート™光発電ムーブメント。SSケース(縦33.7×横25.5mm、厚さ6.6mm)。32万5600円(税込み)。他にも、SMサイズ(縦29.5×横22mm、厚さ6.6mm、30万200円)がある。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-301-757


選者のコメント

 まず、最初にこの原稿は頭を抱えて七転八倒、困りに困り、悩みに悩み抜いた果てた末に書いていることを最初にお断りしておきたい。「2021年発表の時計ベスト5」を選ぶというのはそのくらい「無理ゲー」なのだ。

 21年に発表された時計はお世辞抜きでそのくらい素晴らしいものばかり。5つになんて絞り込むのは筆者には不可能だし無理である。「これはスゴイ」「絶対オススメ」とリストアップしたものだけでも20本を超えた。この“パラダイス”がなぜ実現したのか? その理由はふたつある。

 ひとつは、多くの時計メーカーや時計ブランドが基幹技術の世代交代を行う時期だったこと。そしてもうひとつが、新型コロナウイルス危機を乗り越えるために、各社が商品力、具体的にはプライスパフォーマンス(コストパフォーマンス)を強化したことだ。

 20年も同じ“パラダイス”だったが、今年は規模が拡大。もはや去年や今年など区切る必要はなく、製品の技術や品質、価格などすべての点で、時計業界は新たな黄金時代を迎えた。自信を持ってこう断言したい。選んだ5本は、30本近くリストアップしたものの中から「5本」という制限の中で、できるだけ幅広いジャンル、視点で選んだもの。

 シンプルウォッチ、クロノグラフ、ダイバーズ、コンプリケーション、クォーツ、これ以外にどのジャンルでも絶賛オススメモデルが何本も。あっちもイイし、こっちもイイ。どこかでそんな話をしたいものです。



選者のプロフィール

渋谷ヤスヒト

モノ情報誌の編集者として1995年からジュネーブ&バーゼル取材を開始。編集者兼ライターとして駆け回り、気が付くと2019年がまさかの25回目。スマートウォッチはもちろん、時計以外のあらゆるモノやコトも企画・取材・編集・執筆中。


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