ドバイ ウォッチ ウィーク詳報

2017.01.27

ファイナンシャルセンター内の現代美術のギャラリーも出展ブランドの展示会場に使われた。ただし、ノンプロフィットのため営業活動は一切なし。

高級時計の素晴らしさを伝える啓蒙活動と
情報共有の良きプラットフォームとして

秋田大輔:写真
Photographs by Daisuke Akita
古川直昌(ウェブクロノス):取材・文
Text by Naomasa Furukawa(web Chronos)

 昨年11月15日から19日までドバイのインターナショナル ファイナンシャルセンターで開催された「ドバイ ウォッチ ウィーク」に関する3回目の記事となる。概要などは既報通りなのでここでは記さないが、これが「ニュートラルな立場で教育に関するプラットフォームを提供したい」(関係者談)とする、商業的な色合いが希薄なイベントであることは何度強調してもよいだろう。

 5日間にわたって開催されたイベントの具体的な内容は3つに大別できる。「エキシビション」「フォーラム」「マスタークラス」である。まずはエキシビションから紹介していこう。

第二会場となったドバイ・モールでは高名な「マステリー オブ タイム」関連の展示が行われた。

〝世界で最も巨大なショッピングモール〟であるドバイ・モールにおいて、高名な「マステリー・オブ・タイム」の展示が行われたのは、今回のエキシビションの代表例といえよう。時計史家であるドミニク・フレションの同名著書をもとにした、時計史において重要な大型時計や携帯時計、原子時計、現行のマスターピースなどが並ぶ展示は、ややコンパクトながら説得力十分である。

2016年のジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリで金の針賞を受賞した「クロノメーター フェルディナント・ベルトゥー FB 1.1」。同グランプリにおける2016年度全プライズの受賞作が一堂に会した。

 2016年度の各賞受賞作品を一堂に会した「ジュネーブ ウォッチメイキング グランプリ」の展示も興味深かった。このグランプリをオーガナイズするジュネーブの高級時計財団が主催のAHMED SEDDIQI&SONSと懇意にしていることから実現したわけだが、ディレクターのキャリン・マイラード氏曰く「とにかく純粋に受賞作品を多くの人に知ってもらいたい。その芸術性を伝えたい」という一念で行っているという。受賞作品は大手メゾンでなく、新興の、もしくはスモールメゾンのものが大半を占める結果がここ数年のグランプリの傾向で、したがって我が国に販路がないブランドの貴重な作品を間近に見るまたとない機会となった。しかし、さらに驚くべきは、アラブの大立者が経営するドバイ・モール内の時計店である。金の針賞(グランプリ)を受賞したばかりのフェルディナント・ベルトゥーの作品がショーケースになにげなく置いてあったり、MB&F、カベスタン、ドゥベトゥーンとった錚々たるストレンジピースが、ディオールやモバードと普通に並んで陳列してあるのだから。店員にこのキテレツな商品構成について聞くと「格好いいものを選んで並べた結果だ」と涼しげな顔で言う。中東の豪傑さを肌で感じた瞬間であった。そういえば、MB&Fのマキシミリアン・ブッサー氏も前述の主催者に惹かれてドバイに移住してきたと語っていた。なんでも、MB&Fを立ちあげた際に、まだファーストプロダクトすら完成していないにも関わらず製品の購入を約束し、資金援助をしてくれたという。