クロノスイス「デルフィス オラクル」。創業40周年、受け継がれるスイス機械式時計への真摯な思い

FEATURE本誌記事
2023.12.05

創業40周年を迎えたクロノスイスは過去の名作「デルフィス」を再定義し、記念モデル「デルフィス オラクル」へと昇華させた。伝統と最先端技術を融合して作られたのは、未来へ続くスイス機械式時計である。

Photographs by Yoshinori Eto
Edited & Text by Chieko Tsuruoka (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2024年1月号掲載記事]

クロノスイスが創業40周年記念に「デルフィス オラクル」を発表

 2023年、創業40周年を迎えたクロノスイス。「モダンメカニカル」をコンセプトに、クラシカルな機構や製法を取り入れつつも、現代的な意匠とテクノロジーを組み合わせることで、独創的な腕時計を製造するブランドだ。

クロノスイス「デルフィス オラクル」
2023年、ブランド創業40周年にクロノスイスが発表した記念モデル。過去の「デルフィス」を象徴するレトログラード機構のほか、ジャンピングアワーとスモールセコンドを備える。
自動巻き(Cal.6004)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55 時間。18KRG(直径42mm、厚さ14.5mm)。10気圧防水。世界限定50本。682万円(税込み)。

 クロノスイスは40周年の節目に、「デルフィス」を再定義した。デルフィスは1996年に同ブランドから誕生した、レトログラード機構を備えるモデルだ。このデルフィスをベースに、伝統と最先端技術の融合を掲げて生み出されたのが、「デルフィス オラクル」である。特徴は、ギヨシェ彫りとエナメルを組み合わせた、盛り上がった文字盤だ。このギヨシェはプレスではなく、手動旋盤を用いて職人が手作業で彫り込んでいる。また、エナメルも伝統的な製法にのっとった。半透明のブルーエナメルを塗り重ねては焼成する作業を7度にわたって行い、さらに仕上げとして研磨が施された。曲面を描く文字盤に、ゆがみなくエナメルを焼き付けた本作は、クロノスイスの技術力を示している。

 意匠にはクロノスイスらしい独創性も感じさせる。三日月型の18Kゴールド製フレームがユニークだ。また、スモールセコンドのインダイアルもメインの文字盤同様にギヨシェとエナメルが組み合わされており、サンドブラスト加工が施された背景の文字盤から浮かび上がるように際立っているのが目を引く。

新たに開発された自動巻きムーブメントCal.6004。ベースはラ・ジュー・ペレ製。ルテニウムメッキが施された各パーツや、文字盤側のスモールセコンドとセンターの針を支えるようにあしらわれたブリッジを彷彿とさせるローターが特徴的だ。Cal.6004は今後、デルフィス以外にも活用されるという。

 クロノスイス創設者のゲルト・リュディガー・ラングは、当時失速していたスイス時計産業の復興を志し、実際に貢献した。現在のクロノスイスもまた、スイス時計の伝統製法を守りながら、ルツェルンのアトリエでそのノウハウを培っている。40周年記念モデルからは、クロノスイスが創業以来の意志を受け継ぎ、スイス伝統の機械式時計を未来につなげていかんとする思いが伝わってくる。


Contact info: 栄光時計 Tel.03-3837-0783

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