オメガ「スピードマスター プロフェッショナル」が “ムーンウォッチ” として伝説になるまで

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2023.12.13

1969年7月21日、アポロ11号の月着陸船パイロットだったバズ・オルドリンは、ニール・アームストロングとともに人類初の月面着陸を果たした。この時、彼とともにオメガの「スピードマスター プロフェッショナル」が月に降り立ったのは有名な話である。この最初の足跡は人類にとってだけでなく、スピードマスターにとっても有名な「ムーンウォッチ」となるきっかけとなる驚異的な進歩であった。

バズ・オルドリン

オメガ「スピードマスター プロフェッショナル」を着用する、後年のバズ・オルドリン。
Originally published on Montres De Luxe
[2023年12月13日公開記事]


“ムーンウォッチ”となったオメガ「スピードマスター プロフェッショナル」と宇宙探査の歴史

 オメガの「スピードマスター」は、世界で最も有名な時計のひとつだ。1969年7月21日以来、「スピードマスター プロフェッショナル」は人類の宇宙における偉大な冒険と結び付くことになったのである。

 スピードマスターは月面着陸を果たした唯一の時計ではないが、最も象徴的な時計であることは間違いない。

 まずはその歴史を簡単に振り返ってみよう。1957年、スピードマスター プロフェッショナルはクロノグラフ搭載の腕時計のイメージを一変させた。当初「シーマスター」ラインの一部として発表されたこのクロノグラフは、ベゼルに直接タキメーターを配す、当時としては初めての仕様であった。

 スピードマスター プロフェッショナルと宇宙探査の結び付きは、1962年に始まる。NASAの宇宙飛行士、ウォルター・シラーとゴードン・クーパーは、宇宙飛行のための最初の時計を入手した。それが第2世代のスピードマスター プロフェッショナル、Ref.CK2998だ。

 その後、NASAの宇宙飛行士たちは、マーキュリー計画の宇宙ミッションで自分たちのクロノグラフを使用した。この時点で、宇宙での任務に赴いた最初のスピードマスター プロフェッショナルは、マーキュリー・アトラス8号(シグマ7)のミッションに参加したシラーのCK2998だった。

CK2998

スピードマスター プロフェッショナルRef.CK2998
1959年に発表されたCK2998。いわばスピードマスターの原型機とされる。撮影協力:ケアーズ

 その2年半後、マーキュリー計画の終わりに近づいた頃、宇宙飛行士たちは作戦部長であったドナルド・スレイトンに連絡を取り、訓練用、そしてその後の宇宙任務を想定した時計の開発を依頼した。

 NASAもまた、ジェミニ計画やアポロ計画を視野に入れ、マーキュリー計画で使われたすべての装備を再評価し、再設計することを決定したばかりだった。そのため、彼らの依頼はちょうど良いタイミングだったと言えるだろう。

 1964年9月、スレイトンは「ジェミニとアポロのミッションには特に正確で頑丈なクロノグラフが必要だ」と強調する社内通達を出した。

 この通達はエンジニアのジェームズ・ラーガンのデスクに届き、ラーガンはクロノグラフを搭載した腕時計の「見積もり依頼」と、必要な仕様を記した説明書を複数のメーカーに送った。

 送付したブランドのうち、返事をくれたのは4社だけだった。ラーガンはそれぞれに3本の時計の提供を依頼した。オメガはニューヨークの子会社から依頼を受け、リファレンスST105.003のスピードマスター プロフェッショナルを3本提供し、納品した。

 テストプログラムは、時計を破壊寸前まで追い込むように設計されていた。時計は71℃から93℃の温度に2日間さらされ、その後-18℃で凍結された。

 また、93℃に加熱された真空容器に入れられ、70℃に加熱された後、直ちに-18℃に冷却されるテストが、1度だけでなく15回も続けられた。次の段階では、時計は6方向から40Gの圧力にさらされ、そして高圧・低圧をかけられた。

 また、湿度93%、酸素100%という腐食性の高い環境下での動作テストも行われた。

 時計は最大130デシベルの騒音レベルにも耐えなければならなかった。最後に、平均8.8Gの加速度で揺さぶられたが、無傷だったのはスピードマスター プロフェッショナルだけだった。

 この一連のテストに合格したスピードマスター プロフェッショナルは、1965年3月に「すべての有人宇宙ミッションに使用可能」と宣言された。その3カ月後、スピードマスター プロフェッショナルはジェミニ3号でガス・グリソムとジョン・ヤングの手首に装着され、初めて宇宙へ旅立った。

 1962年にスコット・カーペンターの腕に装着された、ブライトリングの「ナビタイマー」が無重力空間での最初のクロノグラフであったとすれば、1965年6月3日、エドワード・ホワイトが着用したスピードマスター プロフェッショナルは、ジェミニ4号ミッションにおいて、アメリカ人による史上初の船外活動で着用されたクロノグラフとなった。

 それから4年後、NASAは初の月面着陸という新たな目標に向けて準備を進めていた。乗組員は慎重に選ばれ、ニール・アームストロングとバズ・オルドリンが月面を歩く最初の人類として選ばれた。

  NASAはアポロ計画にスピードマスター プロフェッショナルの最新バージョンであるST105.012とST145.012を採用したが、最初のオーダーであるST105.003モデルの在庫がまだ残っており、引き続き宇宙飛行士たちはこのモデルを装備していた。

 1969年7月21日2時56分(UTC)、ニール・アームストロングはアポロ月着陸船「イーグル」号の外に出て、月の地面を踏んだ最初の人類となった。バズ・オルドリンは19分後に月へと降り立ち、スピードマスターは月面で着用された最初の時計となった。実は機内のコンピューターの故障のため、アームストロングは自分のスピードマスター プロフェッショナルを機内に残したままであった。

スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティール

2020年に発表された「スピードマスター ムーンウォッチ 321 ステンレススティール」で、オメガはムーンウォッチに搭載されていたCal.321を復刻させた。

 46年の歳月と数え切れないほどのミッションの後でも、スピードマスターは宇宙飛行認証の時計であり続け、他の追随を許さない実績を誇っている。実際、マーキュリー計画、ジェミニ計画、アポロ計画、スカイラブ計画、ソユーズ計画、サリュート計画、スペースシャトル計画、そしてロシアのMIRステーションや国際宇宙ステーションで使用されたことを誇れる機器は、時計はもちろんのこと、他に類を見ない。

 ブライトリング、イエマ、ブローバ、パネライ、セイコーといった「宇宙時計」はスピードマスターだけではないにせよ、スピードマスターは宇宙探査に永遠に関わる時計であり、これからもそうあり続けるだろう。紛れもなく。



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