G-SHOCK レンジマン最新作「GPR-H1000」をレビュー。心昂るルックスにサバイバルツールとしての実力を宿した1本

FEATUREインプレッション
2023.12.26

2018年の「GPR-B1000」以来、約6年ぶりに登場したG-SHOCK「レンジマン」の新作「GPR-H1000」。ビビッドなカラーをまとった複雑形状の外装に目を奪われるモデルだが、実際にこの時計を手にすると、過酷な環境での使用を想定した「MASTER OF G」シリーズにふさわしい、しっかりとした作り込みを実感できる。

レンジマン GPR-H1000

G-SHOCK「レンジマン GPR-H1000」
クォーツ。タフソーラー。フル充電時約23カ月(パワーセーブ時)。樹脂ケース(縦60.6×横53.2mm、厚さ20.3mm)。20気圧防水。6万6000円(税込)。2024年1月発売予定。
竹石祐三:文・写真
Text and Photographs by Yuzo Takeishi
[2023年12月24日公開記事]


実にG-SHOCKらしい、ラギッドでキャッチーなルックス

「すげぇガンダム感!」

 実機を目にした瞬間、思わずこう発してしまったほど、「レンジマン GPR-H1000」のルックスはラギッドで、G-SHOCKらしさにあふれている。

 「MASTER OF G」シリーズの中でも特に陸上での使用を想定して作られた、いわゆる“陸G”は、「マッドマスター」と「マッドマン」が2023年に新作をリリースしており、どちらもエッジの効いた外装をまとっていた。しかしGPR-H1000は、複雑な形状のみならず、ケースに樹脂を多用したことで、1990年代のG-SHOCKのような、(ファースト)ガンダムを想起させる造形になっており、ひと目見た瞬間から気分を高揚させてくれる。

レンジマン GPR-H1000

凹凸を多用し、ビビッドなイエローでまとめられた樹脂製のアウターケース。3時側と9時側のパーツや4つのプッシュボタンは耐衝撃や防泥性を確保するために金属が用いられているが、デザインのアクセントにもなっている。

 そもそもレンジマンは2013年に誕生した、MASTER OF Gシリーズの中でも新しいラインだ。山の中や沼地といった過酷なフィールドで活動するレンジャーや救助隊員らの着用を想定して作られ、防泥性や防水性を確保しつつ、G-SHOCKで初めてトリプルセンサーを備えることで、方位や気圧/高度、温度の計測も行えるようにした。まさにコンセプトにも掲げられているとおりの、“究極のサバイバルタフネス”ウォッチである。

 これに続いて2018年にリリースされた「GPR-B1000」は、世界初となるソーラーアシストGPSナビゲーション機能とMIP液晶によって、時計単体でのナビゲーションを可能にした。たしかに革新的なモデルではあったものの、一方でレンジャーたちから届いた声は「腕時計の小さな画面では地図を読み取れない」というもの。そこでカシオではプロフェッショナルの意見を徹底的に汲み取り、その結果完成したのがGPR-H1000だ。

 こうしたプロフェッショナルの意見は、外装にも反映されている。ミッションに必要な車載機器はもちろん、救護者を傷つけることがないようにとの配慮から、マッドマンやマッドマスター以上に樹脂を多用したのはそのためだ。一方でケースの3時側と9時側にはメタルパーツが使われ、トリプルセンサーとボタンをガードする構造を取り入れている。このメタルパーツも樹脂製のアウターケースに合わせて稜線を際立たせてはいるのだが、この部分に触れてみるとエッジは落とされており、手の甲に刺さったり衣服に引っ掛かったりすることはない。しかも、今作ではモジュールの内側にセンサーを組み込んでいるため、ケースサイドの凸量も抑えられている。これならミッション中の激しい動きで、時計が手の甲に当たらないのはもちろん、対象物を傷つける心配もないだろう。

レンジマン GPR-H1000

9時側のマッドレジストボタンと3時側のセンサーは、MIMを用いて製作されたメタルパーツで保護する構造に。凹凸を多用したケースの造形に合わせ、メタルパーツもエッジの効いた形状だが、稜線は微かに丸みを持たせ、衣服や肌を傷つけない。


厚く、複雑な造形からは想像もつかない装着感の高さ

 GPR-H1000を手首に乗せて、まず実感……というより感激するのが、装着感の高さだ。これは本作のみならず、先に発売されたマッドマスターやマッドマンも同様なのだが、これだけマッシブな造形でありながら、手首の太さを問わずしっかりとフィットするのだ。カシオによれば、ケースとストラップがもたらす八の字の角度は、デザイナーとしての経験が浅い頃から口を酸っぱくして指摘されるポイントなのだとか。つまり、この点をしっかりと詰めているがゆえに、ケースサイズの大きなG-SHOCKでも手首に馴染みやすく、さらに装着した際にはエンドピースの造形が見えるため、G-SHOCKらしい量感もしっかりと表現できるのだという。

レンジマン GPR-H1000

ケースが大きく、しかもエンドピースの可動域が小さいにも関わらず、高い装着感を実現。屋外のアクティビティで激しく腕を振っても時計の位置が大きくずれることもない。

 また、ストラップの小穴も従来のモデルより数を増やしており、フィット感の向上に寄与している。しかもストラップには細かいスリットが刻まれているため、グローブを装着した状態でもつかみやすく、素材に適度な硬さを持たせて引きやすくしているのも、サバイバルツールであることを踏まえると、実に扱いやすい仕様と言える。

レンジマン GPR-H1000

小穴の数は従来モデルよりも増やしているという。そのため、より多くのユーザーが高い装着感を得られるようになった。また、ストラップの表面にはグローブ装着時でも扱いやすいように細かいスリットが刻まれ、屋外でも着脱しやすいようにしている。


視認性や操作性はまさしくプロフェッショナル仕様

 前作に続き、GPR-H1000もデジタル表示のディスプレイを採用しているが、これもプロフェッショナルユーザーの要望によるものだ。潜水可能時間を感覚的に捉えたいという理由からアナログ表示を好むダイバーとは異なり、秒単位でのミッションが要求されるレンジャーたちにとっては、デジタル表示の方が文字の判読性が高く、ツールとして使いやすいのだという。さらに今作では高精細なMIP(メモリーインピクセル)液晶を採用しつつ、白黒を反転させたネガティブ表示にしたことで、太陽光の下でも文字の影が出ることなく、瞬時に正確な表示を確認できる。事実、下の写真は晴れた日に撮影したものだが、数字に影が出ないのはもちろん、表示も大きいため、老眼の進んだ筆者でもすぐに判読できるのはうれしい限りだ。

レンジマン GPR-H1000

一般的なポジティブ表示の液晶では文字の下に影が出てしまい、文字が二重に見えるようなこともあったが、GPR-H1000ではネガ表示のMIP液晶を採用したことにより、太陽光の下でもしっかりと判読できるようになっている。

 プロフェッショナルツールとして設計されているだけに、操作性にももちろん配慮が行き届いている。ケースサイドに配置されたマッドレジストボタンは泥や塵の侵入を防ぎつつ、その天面にはターゲットマークをモチーフとした意匠が刻まれているため、グローブを装着した状態でも指掛かりが良い設計に。また、他のモデルと同様、時計のサイズに合わせて内部の緩衝体の厚みがチューニングされているため、ボタンが沈み込む、しっかりとした押し心地が得られるようになっている。

レンジマン GPR-H1000

マッドレジストボタンは、シリンダー型のステンレスパーツでボタンを保護し、ボタンシャフトにガスケットを装備することで泥や塵の侵入を防ぐ、レンジマンの核となる機能。ボタンの上面にはターゲットマークに着想を得たパターンを刻み、指掛かりが良く押しやすいデザインにしている。

 一方で、MASTER OF Gシリーズならではの遊び心も忘れていない。GPR-H1000ではスマートフォンとのBluetooth連携機能を取り入れている。そのため、ケースバックには新たに光学式の心拍センサーが備わっているのだが、2013年のデビュー以来、親しまれてきたヤマネコのキャラクターはエンドピースの裏側に刻印。MASTER OF Gの熱心なファンをしっかりと楽しませてくれる。

レンジマン GPR-H1000

GPR-H1000ではケースバックに光学式センサーを搭載しているが、レンジマンのアイコンであるヤマネコのキャラクターは健在。そのシルエットがエンドピースに刻印されている。

 外装はもちろん、ディスプレイの視認性や性能、機能に至るまで、GPR-H1000はツールウォッチとしての高い完成度を示している。もちろん、プロフェッショナルの意見を反映させた仕様にはグッとくるのだが、個人的に最も心躍ったのは、やたらと凹凸が多いうえにビビッドなカラーをまとった、往時のG-SHOCKが再び現れたかのようなルックスだ。基本性能であるタフネスを表現しつつもキャッチーに仕上げられた独創的なデザインは、かつてのブームを通過した世代はもちろん、若い世代のハートにもしっかりと響くのではないだろうか。


Contact info:カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925


G-SHOCKの新型マッドマスターを動画で解説!「時計オタクも唸る完成度」

https://www.webchronos.net/features/102492/
カシオG-SHOCKは永遠に不滅です! 初代モデル、デザインを永久に保護する「立体商標」を獲得

https://www.webchronos.net/news/99334/
カシオ ダイバーズウォッチ7選。新作からフロッグマンの定番モデルまで

https://www.webchronos.net/features/93825/