2024時計見本市5日目 ブレスもウネウネ人生もウネウネ ロジェ発パテック フィリップ、アンデルセン経由アカデミー【ジュネーブ日記】

FEATURE2024年新作時計
2024.04.14

4月9日(火)から15日(月)にかけて、スイスのジュネーブで開催されている時計の見本市ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2024。この時計業界のビッグイベントをクロノス日本版編集長、広田雅将が日記形式でゆる〜くレポートする。5日目は見本市のほか、アンデルセン・ジュネーブを訪問。昔ながらの時計作りがそのまま残る工房を取材した。

広田雅将(本誌):文・写真
Text & Photographs by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[2024年4月14日公開記事]
過去のレポートはこちらから!
「『クロノス日本版』編集長の広田雅将による、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2024日記」


https://www.webchronos.net/blog/113426/


4月13日。見本市のほか、アンデルセン・ジュネーブを訪問&取材

 ジュネーブ日記5日目、ウォッチズ&ワンダーズ4日目。朝5時起床。原稿を書こうと思ったらなんとマウスがない。某所で忘れたのだった。そしてホテルからのシャトルバスに乗ろうと思ったら満員で乗れない。たまたま営業の青島がいたので声をかける。落ち武者のような形相の理由は、昨晩の12時に着いたため。合掌。タクシーで会場のパレクスポへ向かう。

土曜日なのでジュネーブの市内は人で一杯だった。いいなあサボりたいw

 一般公開日初日なので、ブースには早速長蛇の列ができている。ロレックスなんてラーメン二郎並みに列が長いぞ。加えて言うと、喫煙所にはローランペリエのブースがあるものの、飲み放題じゃなくなっていた。13日から15日まではグラス一杯16CHF、ボトルは100CHFとのこと。うーん。

一般公開日初日。ブースは入場待ちで長蛇の列だった。ラーメン二郎状態。

 ロジェ・デュブイで開発責任者のグレゴリー・ブルタンさんと話す。立体感が上手くなってる、と乏しい所見を伝えたところ、もともと彫刻が好きとのこと。彼の3D愛をひたすら聞く。彼が自信作と語っただけあって、シンプルビヨンはアリ。ロジェ・デュブイという会社は、コレ系の時計のコツをつかんできた感がある。


 その後、パテック フィリップのプレスカンファレンス。値段は高いし、超大作もないけど、あんま文句の言い様がないんだよな。一通り新作を見る。個人的な推しはブレス付きの「ゴールデン・エリプス」と、バゲットカットダイヤをインデックスにあしらった年次カレンダー。前者のブレスはフォルツハイムのウェレンドルフと共同開発したもの。ミラネーゼ風だけど全くの別物で、長さの調整が出来る。特許申請中とのこと。疑問点があったので、開発責任者のフィリップ・バラさんを捕まえて話をいろいろ聞く。これはwebのネタにする予定。ちなみにデイト付きのワールドタイム、「アイデアはパワーリザーブ表示から来た」とのこと。「機構としては難しくない。あるものを他に応用しただけだ」。

ゴールドブレスが付いた「ゴールデン・エリプス」。ブレスはウネウネです。

ブレスレットのアップ。今風に剛性感はあるが、左右のウネウネ感は、昔のミラネーゼを思わせる。

インライン永久カレンダーに加わったサーモン文字盤。安心してみられるのがパテック フィリップの良さかも。

意外な伏兵がアクアノートのダイヤ入り。セッティングの手法がかなり変わっていて、圧力のみで止めている。

パテック フィリップのカンファレンス。モニター右にいるのがフィリップ・バラさん。

 訪問できてない数社を回り、人と話をした後、プレスルームで原稿書き。もともと書けないのに、余裕がないからますます微妙になっているw 初めてプレスルームで昼食を食べる。謎のポケ丼と、ツナ入りサンドウィッチ。冷えているが味は悪くない。が、そろそろ温かい食べ物が欲しいのだ。

クロノスイスの新作は、水平レギュレーターのストライク・ツーに加わった新色。いち早くマルチカラーを手掛けただけあって、色の出し方はさすがに上手い。

レイモンド・ウェイルのミレジムには35mmのムーンフェイズが加わった。これは小気味よい時計っす。

昼食。ポケ丼は普通においしかったです。一般来場者にも提供されているけど、値段は恐ろしい。

 再びグランドセイコー。足りない点を聞くふりをしながら、ひたすら手巻きのCal.9SA4を触りまくる。「呼び名どうするのですか?」「バーチバークにしようかな」だそうです。みなさん、手巻きのエボ9は、バーチバークです。ちなみに、既存の白樺モデルは「ホワイトバーチ」です。


 みんなでそろって市街地に出る。目的地はマンダリンオリエンタルのそばにある、アンデルセン・ジュネーブ。社長のアレックスさんは結構な飲み仲間。一回工房に来ればとお誘いを受けたので訪問&取材。以前訪問した鈴木裕之曰く、25年前から何も変わっていないとのこと。昔ながらの時計作りがそのまんま残っていて、例えば青焼きの部品はランプで焼いている。ダニエル・ロートさんの工房で見たのと全く同じだ。そして、職人が仕上げから組み立てまでを担っている。こんな環境なら、みんなうれしそうに働くよね。見るとやっぱり欲しくなるね。最後にみんなで、スヴェン・アンデルセンさんの息子が醸したビールを飲む。こりゃうまい。

アンデルセンの工房にて。1979年の創業以来、基本的には場所も設備もほとんど変わっていない。

これは部品を加熱する様子。本当に昔ながらのやり方だ。

不足する部品は旋盤で製作する。担当するのは、その時計を組み立てる時計師とのこと。

これはスヴェン・アンデルセン本人のデスクと、彼の使っているツール。

時計師たちはみんなめちゃくちゃ優秀。ただしビールの注ぎ方は信じられないぐらい下手だ。

アンデルセンと言えばワールドタイマー。仕上げは群を抜いている。

アンデルセンのワールドタイマーは、基本的にAS(ア・シルト)の自動巻きを使っている。手前はオリジナル、奥は仕上げ後。

彼の息子が醸造するビールは、えもいわれぬ味わいだった。ネットでのみ買えるらしい。


 その後、クロノススタッフとフォトグラファーのお祝いとして、かのアントレコートで食事。肉しか出ないけどさすがにおいしいです。ハウスワインも予想以上。サービスも良く、飲食店のカガミだな。がいよいよ身体が重い。マンダリンそばで、アカデミーの展示を一通り見る。カリ・ヴティライネンさんは相変わらずイケイケ、浅岡肇さんの新作は、パッケージの良さがいっそう光っていた。くろのぴーすさんを見かけて挨拶。相変わらず光る時計を選ぶなあ。

アントレコートのハウスワイン。56CHFだけどかなり好き。なんだったら買って帰りたい。

アントレコートは肉しか出てこない。しかしこれがおいしいのだ。赤身に、バターの効いたソースが合う。

 駅中のミグロで水を2本買い込み。バスに乗ってホテルに戻る。疲労のためそのまま就寝。合掌。

おまけ。朝日新聞ファッション担当の後藤さんと。飲み友の復活を祝う(予定)


2024年、各ブランドがリリースした新作時計を一気読み!

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