ウブロ 素材や色に合わせて製法を変える“外装革命”の担い手

2024.06.17

サファイアクリスタル、カーボン、セラミックス……。いわゆる異素材、新素材と呼ばれるこれらの外装開発を積極的に手掛けるウブロ。個々の製法について一定のメソッドが確立された現代において、いまウブロが取り組むのは審美性の向上だ。2024年の新作では、オレンジとダークグリーンのセラミックケースで、焼成から仕上げまでの手順を全く変えている。新素材系を導入することの目新しさだけが注目された時代を経て、“外装革命”にも質が問われるようになってきた。

ビッグ・バン MP-11 14デイ パワーリザーブ ウォーターブルーサファイア

ビッグ・バン MP-11 14デイ パワーリザーブ ウォーターブルーサファイア
約336時間という超ロングパワーリザーブを誇る7バレルモデル。重ねられた香箱は、輪列に対して直角に配置されるため、駆動にヘリカルウォームギアを介する。新開発の“薄水色”は素晴らしく透明度が高い。手巻き(Cal.HUB9011)。39石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約14日間。ウォーターブルーサファイアクリスタルケース(直径45mm、厚さ14.4mm)。3気圧防水。世界限定50本。2336万4000円(税込み)。
奥田高文、三田村優:写真 Photographs by Takafumi Okuda, Yu Mitamura
鈴木裕之:取材・文 Text by Hiroyuki Suzuki
[クロノス日本版 2024年7月号掲載記事]


ニューマテリアルを巧みに使いこなすウブロ

ビッグ・バン ウニコ ピンクサファイア

ビッグ・バン ウニコ ピンクサファイア
2018年に採用されたピンクサファイアケースに、自社開発・製造のムーブメント「ウニコ」を搭載。ウニコを見せることでメカニカルな印象になっているため、淡い色調とムーブメントのメタリックな質感が心地よいコントラストを生む。自動巻き(Cal.1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。サファイアクリスタルケース(直径42mm、厚さ14.5mm)。5気圧防水。世界限定100本。1657万7000円(税込み)。

 “外装革命”を謳った特集タイトルが象徴するように、外装技術の著しい進歩が目立った2024年のW&WG。その先頭グループの一角を走り続けるのはやはりウブロだ。一時期に比べれば、ジュネーブでお披露目される新作数こそ控えめになったものの、その分、ひとつひとつのプロダクトがキッチリと作り込まれている印象でむしろ好ましい。中でもハイライトとなるのはやはり、サファイア、カーボン、セラミックスといった異素材ニューマテリアル系。今やこの分野はウブロの独壇場ともいうべき状況だ。

スピリット オブ ビッグ・バン サンブルー サファイア

スピリット オブ ビッグ・バン サンブルー サファイア
昨年登場した“サンブルー”モチーフの「スピリット オブ ビッグ・バン」を、初めてサファイアケースで構築。ファセットを組み合わせた複雑な面構成を、難切削材のサファイアで仕上げた技術には脱帽だ。自動巻き(Cal.HUB4700)。31石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約50時間。サファイアクリスタルケース(直径42mm、厚さ15.7mm)。5気圧防水。世界限定100本。1959万1000円(税込み)。

 まずサファイア系は、淡いトーンのブルーとピンク。新素材をお披露目するキャンバスの役を担ってきた7バレルの「MP-11」には、新開発の独自素材ウォーターブルーサファイアが登場した。透明度の高い“薄い水色”は従来にはない色調だ。また「サンブルー」にもサファイアケースがラインナップされ、より複雑な面構成でも、難なく造形している点に驚かされる。積層カーボン系ではブラックテキサリウムを使用した「MP-13」、鍛造カーボン系ではオレンジのマイクログラスファイバーを用いたケースを発表し、さらに表現の幅を広げている。

ビッグ・バン ウニコ  オレンジセラミック

ビッグ・バン ウニコ  オレンジセラミック
鮮やかな発色に目を奪われるオレンジセラミックの「ビッグ・バン ウニコ」。ウブロが独自に開発した新素材で、ケースはブロック材からの削り出し。時分秒針やインデックス、インダイアルのサークルもすべてオレンジで統一。自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミックケース(直径42mm、厚さ14.5mm)。10気圧防水。世界限定250本。405万9000円(税込み)。
ビッグ・バン ウニコ  オレンジセラミック

ベゼルとミドルケースの上下プレートにオレンジセラミックスを採用。基本的には平面主体の造形だが、すべてブロック材からの削り出し。これは“折れ”などが入る部分の発色を均一にするためで、鮮やかなオレンジカラーのために、敢えて手間のかかる手法を選択している。

 興味深いのはセラミックス系だ。今年は対照的な色味の「オレンジセラミック」と「ダークグリーンセラミック」が登場したが、両者は製法がまったく異なる。鮮やかな発色のオレンジは新開発の独自素材をブロック材から削り出し。対してダークグリーンは最初からケースの形状に成型するインジェクションモールディングを採用している。後者はやや色がくすむ傾向があるのだが、ダークグリーンならばそれも許容範囲だ。

ビッグ・バン ウニコ ダークグリーンセラミック

ビッグ・バン ウニコ ダークグリーンセラミック
ダークグリーンのケースはインジェクションモールディングで成型。オレンジとの価格差は製法の違いによるものだ。リミテッドエディションだが、可能ならオレンジとセットで持ちたい。自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミックケース(直径42mm、厚さ14.5mm)。10気圧防水。世界限定250本。331万1000円(税込み)。
ビッグ・バン ウニコ ダークグリーンセラミック

オレンジに対してダークグリーンの場合は、最初からパーツ形状を狙って成型するインジェクションモールディングを採用。鮮やかな発色が難しいとされるグリーンだが、色の濁りまでデザイン要素として織り込む発想が素晴らしい。
スクエア・バン ウニコ セラミック マジックゴールド

スクエア・バン ウニコ セラミック マジックゴールド
マットに仕上げられたブラックセラミックスのミドルケースに、マジックゴールドのベゼルをトッピング。研磨されたマジックゴールドの表面は、油膜のような独特な質感を見せるため、その対比も実に面白い。自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。18Kマジックゴールド×セラミックケース(直径42mm、厚さ14.7mm)。10気圧防水。435万6000円(税込み)。
スクエア・バン ウニコ セラミック マジックゴールド

多孔質セラミックスに、高温高圧でゴールドを浸潤させた独自素材の18Kマジックゴールド。傷の付かない唯一のゴールドとして特許取得済み。ミドルケースをマット仕上げのブラックセラミックスとした本作では、その質感の違いが両者の特性を引き立て合っている。
ビッグ・バン ウニコ アイス・バン

ビッグ・バン ウニコ アイス・バン
オンライン限定販売となるリミテッドエディション。2006年初出の「アイス・バン」を復刻させたものだが、デザインに加え、ムーブメントを「ウニコ2」に刷新。マットな質感を強調するが、その分、面取りの美しさが映える造形だ。自動巻き(Cal.HUB1280)。43石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。セラミックス×タングステンケース(直径42mm)。10気圧防水。世界限定100本。331万1000円(税込み)。
ビッグ・バン ウニコ アイス・バン

マイクロブラストで仕上げられたマットブラックのセラミックケースに、タングステンのベゼルを載せた「アイス・バン」。ベゼル表面はサテン仕上げで光沢感を抑えているが、意外と幅広なベゼルサイドは、完全なポリッシュ仕上げ。これも対比の美しさを狙った造形だ。

ビッグ・バン インテグレーテッド タイムオンリー ブラックマジック

ビッグ・バン インテグレーテッド タイムオンリー ブラックマジック
「ビッグ・バン」史上初となる径38mmケースを採用。スモールケースと3針レイアウト(=タイムオンリー)は、ウブロ流の“クラシック”を表現したもの。今年は18Kキングゴールド、Ti、2色のセラミックスのケースで、ダイアルはそれぞれブルーとブラックの2色展開。自動巻き(Cal.HUB1115)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。セラミックケース(直径38mm、厚さ9.4mm)。10気圧防水。210万1000円(税込み)。



Contact info: LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン ウブロ Tel.03-5635-7055


2024年 ウブロの新作時計を一気読み!

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