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Overview H.Moser & Cie. シャフハウゼンが育んだ進取の気概【第2回】(1/3)

三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
鈴木裕之:取材・文 Text by Hiroyuki Suzuki

第2回 受け継がれる永遠のシンプリシティ
[ヘリテージ・パーペチュアル・ムーン]

 構成パーツの95%以上をスイスメイドとするH.モーザー。特にムーブメントパーツはそのほとんどを、創業地であるシャフハウゼンにほど近い工業都市・ノイハウゼンの自社工房内で自製している。2005年に新生H.モーザーが立ち上げられた際、ドイツ国内に設立された「プレシジョン・エンジニアリング」の設備がすべて、メイラン体制となって以降に移管され、現在では名実ともにH.モーザーの拠点となっている。脱進機部品やヒゲゼンマイといったムーブメントのキーパーツを自製できる工房は、スイス国内にも数えるほどしかなく、さらに自社で時計ブランドまで運営しているアトリエとなると、さらに数が絞られてくる。H.モーザーが掲げる“ピュアネス”とは、こうした技術的アドバンテージに立脚したものだ。

 一方、“ピュアネス”を視覚的に表現する外装部品は、多くのブランドと同様に、腕の立つサプライヤーとのパートナーシップによって製造されている。今回はノウハウゼンの本社工房から少し足を延ばして、こうした外装関係のサプライヤーを歴訪してみたい。目指すはラ・ショー・ド・フォンである。

 チューリッヒとジュネーブを繋ぐ交通の要衝ヌーシャテルは、フランスと国境を接するジュラの山岳部への玄関口。長大なトンネルを抜けながら山あいへと分け入ってゆくと、町全体が格子状に整えられた歴史ある工業規格都市、ラ・ショー・ド・フォンへと至る。隣町のル・ロックルとともに、“時計製造業の都市計画”としてユネスコ世界遺産にも登録されているこの町では、中世ヨーロッパ的な階級支配が絶対的だった19世紀中頃から、職人たちが自発的に“水平分業と相互連携”による時計作りのシステムを作り上げ、後年のスイス時計産業を大きく発展させてゆくことになる理想的なモデルケースが生まれた。スイスの高級時計作りが、エタブリスールを主として発展を遂げた理由である。

ケースを完全切削で仕上げる「ギヨー・ギュンター」。CNC切削の精度を決めるのは事前調整の巧みさ。同社ではオペレーションの組み立てに1日、さらに工作機械の調整に1日を費やす。切削油はCNCマシニングセンタ1台につき、約200リットルを循環させている。

仕上がったケースの内径寸法を測定する接点センサー。0.01mm単位で厳密に測定される。外径寸法に関しては、測定精度が“もう少しアバウト”とのことだが、同じ機械で測定することに変わりはない。写真は金属球を使ったキャリブレーションの様子。


ケース表面にギヨシェを彫り込む“外枠部分”の加工はギヨー・ギュンターの受け持ち。プレス用金型の製作方法と同じく、型彫り放電加工機を用いて銅型のパターンを転写してゆく。

ケース製造の最終工程がアッセンブリー。写真のケースは、側面のエングレービングにブルーエナメルを乗せ、研ぎ出しまで終わった状態。組み立てに細心の注意を要することは言うまでもない。
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