チューダー「ブラックベイ セラミック “ブルー”」を着用レビュー! 「さすがチューダー」と評すべき1本

2025.04.16

今回は、ブラックセラミックス製ケースを備えたチューダー「ブラックベイ セラミック “ブルー”」のインプレッションだ。METAS(スイス連邦計量・認定局)によるマスター クロノメーター認定ムーブメントを搭載し、耐磁性能や精度が極めて高いレベルにある本作は、基本性能だけでなく使い心地も非常に優れた、さすがチューダーと評すべき満足度の高い1本である。

チューダー ブラックベイ“ブルー”

チューダーが2024年よりオフィシャルパートナーを務めるVisa Cash App RB F1チームのチームカラーが採用されたモデル。鮮やかなブルーと、ブラックセラミックスのコントラストが印象的だ。
佐藤しんいち:文・写真
Text and Photographs by Shin-ichi Sato
[2025年4月16日公開記事]


チューダー「ブラックベイ セラミック “ブルー”」のオーバービュー

 今回のインプレッションは、チューダー「ブラックベイ セラミック “ブルー”」である。本作のデザインは従来モデルに準じ、チューダーの名作ダイバーズウォッチのテイストをベースとしており、クラシカルさとモダンさがミックスされた魅力を持つ。

 そしてここに、本作のトピックスとしてブラックセラミックスのケースやベゼルを採用し、鮮やかなブルーの文字盤を組み合わせている。このカラーリングは、2024年にチューダーがVisa Cash App RB(ビザ・キャッシュアップRB) F1チームのオフィシャルパートナーとなったことを記念するもので、セラミックスの質感がスポーティーな本作の魅力を高めている。また、搭載ムーブメントはMETAS(スイス連邦計量・認定局)によるマスター クロノメーター認定ムーブメントのCal.MT5602-1Uであり、その基本性能は非常に高い。

今回のインプレッションは各所のディティールに注目

 本作に限らず、筆者は「ブラックベイ」を手にする時、“良い仕事はすべて単純な作業の堅実な積み重ね”という言葉をいつも思い出す。高い評価を集めるムーブメントと、それが備える高い耐磁性能や実用的なパワーリザーブといった信頼性、200mの防水性能などの、文字に表しやすいスペックだけでなく、外装の仕上げや使い心地に関わるさまざまなディティールに心を配っていることに毎度感心するからだ。

 そこで今回は、触り心地や操作感、それらを生み出す形状や構造といったディティールに注目してブラックベイ セラミック “ブルー”のインプレッションを行いたい。


指からも伝わってくるセラミックス製ケースの品質の高さ

 インプレッションの最初に触れるべきは、トピックスとなるブラックセラミックス製のケースやベゼルであろう。ステンレススティール製モデルのクラシカルな印象のあるデザインを共有しながら、ブラックのセラミックスを採用することで、モダンでストイックなツールウォッチのテイストを加えている。

チューダー ブラックベイ“ブルー”

チューダー「ブラックベイ セラミック“ブルー”」Ref.M79210CNU-0007
自動巻き(Cal.MT5602-1U)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。セラミックケース(直径41mm、厚さ14.4mm)。200m防水。74万6900円(税込み)。

 このセラミックス製ケースとベゼルの仕上がりが非常に良い。面は整っていてゆがみが見て取れず、エッジ部の稜線には鋭さがある。全体は均一なマット仕上げであるのに対し、エッジ部にはポリッシュが施され、セラミックス特有の艶感が本作の魅力につながっている。ベゼルは、サンレイ仕上げのように放射状のテクスチャーが与えられた半艶のベゼルインサートが別パーツとして組み込まれており、ケースとコントラストがある。このベゼルインサートに、浅く、かつ鋭く鮮明に掘り込みが施され、60分のスケールが付与されている。このスケールは周囲が暗いとさすがに見えづらいが、それ以外では視認性が良好であった。

 ケース側面の整った面に触れると、丹念に仕立てられたプロダクトの持つ端正さが指先に伝わってくる。日常生活で触れる大量生産の製品では、このような感覚を覚えることはほとんど無く、腕時計であってもそれなりに予算を積まなければならない。そのため、本作を手に取って鑑賞および実際に使用した際に“良い時計を所有している”という実感を得やすいと筆者は考える。これは満足感を高めることに直結する。


外観が良く、操作感も非常に良好な各所のディティール

 モダンなセラミックスが外装に用いられているのにもかかわらず、本作の随所からはクラシカルなテイストが感じ取られる。このクラシカルさを醸し出すのに一役買っているのが、ベゼル外周の刻みと大きなリュウズといったディティールだ。

 ベゼルは薄い仕立てで、外周部の刻みは細かく、エッジが効いていてダレたところがない。これがクラシカルな印象を生み出しつつ全体を引き締めている。そして、この刻みがグリップ力を確保しながら指が痛くならないバランスであって操作感が良好である。

 ベゼルを操作してみて気付くのは回転機構の精度の高さだ。上下方向の遊びがほとんどなく、回転させる際も引っ掛かりの無いスムーズなもので、カチリカチリとクリック感は明確。そして、意図しない回転が生じない適度な重さがある。非常に完成度が高いベゼルであるので、オーナーは是非とも積極的に使用していただきたい。

チューダー ブラックベイ“ブルー”

リュウズに配されたバラの紋章はブラックベイのアイコンである。繊細でクラシカルな印象を本作に加えている。モダンなケースシェイプと対照的に細かなベゼルの刻みにも注目。デザインの重要な要素であるのと同時に、操作感を高めている。

 リュウズの刻みもエッジが効いており、端面のバラの紋章は繊細で、こちらもクラシカルさをデザインに加えている。ねじ込み式リュウズのねじの嚙み合わせも良好で、スムーズに操作可能であり、これを緩めて解放するとポコンと明確にリュウズが飛び出してきて分かりやすい。


セラミックス製バックルの完成度も極めて高い

 また、本作に組み合わされるセラミックス製のバックルの完成度も非常に高い。ケース同様のマットな仕上がりで本作全体のテイストにマッチしたものであり、ルックスや質感が良い。そして、ベゼル同様に“ガタ”につながるような遊びが小さく、ロックした際の一体感が見栄えの良さや安心感につながっている。

チューダー ブラックベイ“ブルー”

ロック状態の写真。“TUDOR”と書かれた部品がダブルロックとして働く。ガタが小さいため、目に見える隙間も小さく、ロック状態での一体感が生まれて見栄えも良い。

 ロック機構が堅牢で不意に外れるようなこともないうえに、ロックと解除はスムーズである。この操作感の良さはロック機構に採用されたセラミックス製のボールによるもので、セラミックスの摩擦の小ささがスムーズさを生み、しかも摩耗の心配が低い。非常に小さい部品だが、その効果は絶大である。筆者はインプレッション中、バックルに不安や不満を持つことはまったくなかった。時計の着脱の機会は意外に多いので、バックルにストレスが無い、あるいは操作していて作りの良さを感じるということは、愛用する中での満足感につながる大きな要素となることだろう。

チューダー ブラックベイ“ブルー”

未ロック状態のバックルの様子。写真左方向に飛び出すのが盾形の部品で、“TUDOR”と刻まれたダブルロック機構(先の写真参照)が覆いかぶさる。盾形の部品のサイドにはロック解除時に人がつまみやすいように刻みが設けられている手の込みようである。ダブルロックが引っかかるのは、写真中央部の白い球状のセラミックパーツで、ロック、ロック解除をスムーズにしつつ、確実に係合するキーパーツだ。


スポーティーなテイストに良く似合うデザイン

 文字盤デザインはコンサバティブなダイバーズウォッチに準じたもので、トライアングル、ドット、バーのインデックスを使い分けて視認性を高めている。ここに、フラットな「スノーフレーク」型の時針と、ペンシル型の分針が組み合わさることで、文字盤デザイン全体がモダンでコンテンポラリーなテイストに変容している。特に、フラットな仕上げの針がポップな印象を生み出し、“カワイイ”雰囲気が加えられている点は、ブラックベイの特徴かつ魅力であると筆者は考えている。

チューダー ブラックベイ“ブルー”

筆者の周長約18cmの手首でのリストショット。スポーティーな外観に合わせてマウンテンパーカーをコーディネートした。

 本作の文字盤は、ビザ・キャッシュアップRB F1チームのチームカラーであるビビッドなブルーで仕上げられており、スポーティーな印象が強いモデルだ。ケースがマットなセラミックス製であるため、それとのコントラストが高く、着用時には文字盤が浮かび上がるとか、文字盤が光って見えるような錯覚も覚えた。このようなコントラストの高さは、豊富なブラックベイコレクションの中でも珍しいもので、本作特有の魅力と言えるだろう。

 着用感も非常に良い。セラミックスの軽量さと、ラバーストラップの軽快さが効いている。ケース径41mmとダイバーズウォッチとしては標準的なサイズで、ラグの長さや角度も適切で手首に沿い、フィットする人も多いことだろう。ケースがブラックであるため引き締まったように見え、41mmという数値よりもコンパクトに見えた。


恐るべき性能を持ったムーブメントを安定して製造する高い技術

 搭載ムーブメントのCal.MT5602-1Uは、METAS(スイス連邦計量・認定局)によるマスター クロノメーター認定ムーブメントであり、その基本性能はまさに“折り紙付き”。マスター クロノメーターは、スイス公式クロノメーター検定協会(COSC)によるクロノメーター認証が“入学試験”であり、1万5000ガウスの磁場にさらされた場合でも精度を維持すること、パワーリザーブ残量による精度の変動が小さいことなどのさまざまな項目について、ムーブメント単体の状態とケーシング後の状態で、全数検査を10日間にわたって行う。

 検査にはコストがかかるし、検査の途中で“落第”が生じれば余計なコストが必要となる。この観点から考えれば、耐磁性能と高い精度を獲得する優れた設計に加え、それらを安定して実現する、品質管理を含む高レベルな製造技術が必須となる。それを高コストなセラミックス製ケースに収めながら、本作を74万6900円(税込み)で提供していることは恐るべきことであり、チューダーの実力を示すものである。

チューダー ブラックベイ“ブルー”

ケースバックからはCal.MT5602-1Uが鑑賞できる。ブラックに仕立てられており引き締まった外観だ。

 ケースのカラーに合わせてムーブメントはブラックに仕立てられており、ストイックな印象にまとめられている。開口部が小さいムーブメントのブリッジ構成は見るからに剛性が高そうだ。このあたりにも、高精度の秘訣があるのかもしれない。

 また、主ゼンマイを手巻きする際の巻き上げ感はスムーズで、時間合わせも遊びが小さくてピタリと決まってくれる優れた操作感を備える。性能だけでなく、操作感からも“良いムーブメント”であることが伝わってくる仕上がりだ。パワーリザーブが約70時間である点も安心感がある。

オメガとチューダーの取得で知られるMETASの認定制度「マスター クロノメーター」とは

FEATURES


「さすがチューダー」と言いたくなる高い完成度

 本作を詳しく観察・検証しても、ネガティブな印象がまったくなかった。唯一、ベゼルインサート上の表示が暗所で見えづらいことが気になったぐらいだが、少しでも明かりがあれば視認性は十分に確保できた。気になったのは本当にそれだけである。

 筆者はインプレッション前から本作の完成度の高さを確信しており、安心感を持ってインプレッションにあたった。そのようなハードルが上がった状態であっても、本作の外観品質の高さや操作感の良さ、使い心地の良さに感心しきりであった。「さすがチューダー」の一言である。



Contact info:日本ロレックス / チューダー Tel.0120-929-570


2025年 チューダーの新作時計を一挙紹介!

FEATURES

チューダーの2025年新作「ブラックベイ 58」は、バーガンディーカラーよりも〝完全刷新〟に注目したい

FEATURES

高い評価に納得の実力。チューダー「ブラックベイ フィフティ-エイト 925」を実機レビュー/インプレッション

FEATURES