2021年に芸能界を離れた長瀬智也が、今、バイクレースと音楽活動に情熱を注ぐ姿が話題となっている。インスタグラムでその日常を発信する彼の左腕には、ルーレット機能を持つフランク ミュラーの「ヴェガス」が光る。芸能人としてではなく、自分らしい生き方を貫く彼の姿勢に、新たなファン層が共感を寄せている。

写真:東京スポーツ
Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年5月4日掲載記事]
バイクの楽しさを伝える“表現者”
バイクを愛好する長瀬智也の最近のインスタグラムでは、レースに関する投稿が圧倒的に多い。バイク仲間との写真の数々からは、単にレースを楽しむだけでなく、ライフスタイルとしてバイクを満喫している「バイク愛」が伝わってくる。
長瀬智也が参加するレースは、ハーレーダビッドソンやインディアンのツアラーモデルをベースにしたカスタムバイクを使用する「バガーレース」と呼ばれるものだ。ツーリングで快適な乗り心地を楽しむためのツアラーモデルを独自のアイディアでチューニングし、激しい走りを繰り広げるこのレースは、アメリカ西海岸を中心に人気を博している。
そんなバガーレースへの注目度は、ここ日本でも高まりつつある。2023年には国内でバガースタイルによるロードレースイベントが開催。より本格的なバガータイプのレーシングマシンが、2024年6月に富士スピードウエイで開催されたMCFAJクラブマンロードレースで登場した。
そのレースには、長瀬智也がバイク仲間と共に立ち上げたJapanese Chopper Racingチームも3台のバイクで参戦。長瀬智也は自身の活動をきっかけとして、バイクとロードレースの魅力を多くの人たちに知ってもらいたいとしている。
アイドルからアーティストへ。芸能界からの新たな旅立ち
長瀬智也が芸能界入りしたきっかけは、姉がジャニーズ事務所に履歴書を送ったことだ。150万通の応募に対し、たった1人の合格者として1991年に事務所に入所。その後、1994年にTOKIO最年少メンバーとなり、ボーカルを担当した。
ボーカル以外にもギターやブルースハープを演奏することができ、作詞・作曲・編曲までこなす。自作曲も多く、2015年リリースの「東京ドライブ」には、桑田佳祐からも「長瀬くんの歌が上手い、演奏力も高い。作詞・作曲・編曲をするとはすごい」と称賛されている。
一方で、俳優としても高く評価されており、映画初出演作「ソウル」では第15回石原裕次郎新人賞を受賞。2016年のドラマ「フラジャイル」ではコンフィデンスアワード・ドラマ賞・主演男優賞を受賞している。
多様な才能を持つ長瀬智也だが、2021年3月31日をもってジャニーズ事務所を退所。以降は他事務所に属さず、ゼロから新しい仕事の形を創り上げている。
現在は“表現者”として、自身のインスタグラムを中心に発信を継続。そこには男女問わず「カッコイイ」と感じさせる一本筋の通った生き様が見える。音楽、バイク、釣り、ファッションと、幅広い分野を心から楽しんでいる様子により、芸能界時代とはまた違ったファン層を獲得しているようだ。
時計選びにも哲学アリ。レアモデルを多数所有する長瀬智也の最近のお気に入り
ロレックス「デイトナ」のポール・ニューマンモデルをはじめ、「エクスプローラー」「サブマリーナー」、G-SHOCKなど多彩なモデルを着けこなす長瀬智也。彼の時計愛への背景には、自身が愛するヴィンテージデニムや古着、ストリートファッションへのリスペクトが感じられる。それぞれのアイテムが互いの世界観を邪魔することなく、彼のスタイルを完成させているのだ。
上記投稿で着用している時計はフランクミュラーの「トノウ・カーベックス ヴェガス」だと思われる。コメント欄には「ボロボロのバイクにボロボロの服。ボロボロの人生にはちょうどいいだろ。キミの人生はピカピカかい?」と歌詞の一節のようなテキストが添えられている。
世界初にして唯一のルーレット機能を搭載した腕時計
「ヴェガス・コレクション」は、フランク ミュラーが1999年に発表した世界初のルーレット機能を搭載した腕時計である。ラスベガスのカジノからインスピレーションを得たデザインで、その独創的意匠のみならず、リュウズと同軸のプッシュボタンを押すと文字盤中央のルーレット針が回転。ボタンから手を離せば、ルーレット上の数字に針が止まる。

参考モデルとして、「ヴェガス」の現行モデルから、ケースと文字盤にダイヤモンドが多数セットされた「トノウ カーベックス ヴェガス ダイヤモンド」を紹介。長瀬智也がインスタグラムの中で着用しているモデルではない。自動巻き(Cal.98)、18KWGケース(横32mm×縦45mm、ダイヤモンド装飾付き)、回転ダイヤモンドディスクによるルーレット表示、日常生活防水、1056万円(税込み)。
躍動感のあるサーペント針やインデックスのビザン数字を含め、既成概念にとらわれない自由な発想で作られた時計である。フランク ミュラーが得意とする遊び心を存分に表現した作品のひとつであり、腕時計という枠を越え、創造的なライフスタイルを形にしたアイテムだ。
この時計は長瀬智也のコレクションの中では異色だが、カジノのルーレットに賭ける際の緊張感や高揚感が、彼が人生やバイクレースで感じる感覚と重なり、購入に至ったのではないかと推測できる。針が止まる先は誰にもわからない。だが、それこそが長瀬智也の人生哲学なのかもしれない。
彼の自由な選択と挑戦の旅は、まだ始まったばかりだ。