ユリス・ナルダン 最先端とメティエダールの刺激的な“X”オーバー

2025.08.07

ユリス・ナルダンの革新性を象徴する「フリーク」。それを日常使いしやすく進化させた「フリーク X」の新作は、フリークのレギュラーモデルで初めてアワーディスクを伝統のエナメル装飾で仕上げたものだ。結果、アイコニックなフライングカルーセルの回転軌道が際立ち、ある種の色気まで獲得した本作は、最先端とメティエダールをクロスオーバーさせた、ユリス・ナルダンの“今” を感じさせる1本だ。

星武志:写真
Photographs by Takeshi Hoshi (estrellas)
吉田巌:編集・文
Edited & Text by Iwao Yoshida
[クロノス日本版 2025年9月号掲載記事]


最先端の技術と伝統の手仕事を組み合わせた「フリーク X ゴールドエナメル」

フリーク X ゴールドエナメル

フリーク X ゴールドエナメル
シリコン技術を用いた独自のフライングカルーセルはそのままに、3時位置にリュウズを装備した自動巻きモデルへとアレンジした「フリーク X」の新作。エナメルによるミステリアスなブルーと、随所に用いられたゴールドカラーとのコントラストが美しく、全体としてとてもモダンな仕上がりだ。自動巻き(Cal.UN-230)。21石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KRG×Tiケース(直径43mm、厚さ13.38mm)。50m防水。世界限定120本。766万7000円(税込み)。

 通常の文字盤や針が存在せず、ムーブメント自体が回転して時刻を表示する……。2001年に誕生したフリークは、その独創的な機構で時計界に大きな衝撃を与えた。これは、重力の精度への影響を抑えるべく19世紀末に考案されたカルーセル機構を大胆に進化させたもの。リュウズの代わりにベゼルで時刻合わせを行い、巻き上げ機構もケースバックに搭載と、「異端」尽くしのこのモデルは、素材面でも新機軸が盛り込まれていた。時計業界で初めてムーブメントパーツにシリコンを採用したのだ。以後、多くのブランドに耐磁性に優れるシリコンに目を向けさせたという意味でも、真に革命的なモデルと言えよう。

 その後フリークは、まるでメゾンの実験室であるかのように先進の素材や機構が与えられ、進化し続けていく。そして2019年、フリークの革新性はそのままに時間調整と巻き上げのためのリュウズを備えた「フリーク X」が登場。日常使いに適したスリム&コンパクトなケースや、抑えられた価格でファンの裾野を広げることに成功。そこに今年、新たに魅力的なモデルが加わった。

 注目は、フリークのレギュラーモデルで初めてアワーディスクをエナメルで仕上げたところだ。ギヨシェ装飾と組み合わせることから「ギヨシェフランケ」とも呼ばれる手間のかかる加工を担当したのは、エナメル文字盤専門工房にして、現在ユリス・ナルダン傘下にあるドンツェ・カドラン。熟練職人が顔料の塗布と焼成を繰り返すため、完成までに約8時間を要する。メゾンが大切にするメティエダール、すなわち匠による芸術的手仕事を存分に楽しめる贅沢なパーツと言えよう。

フリーク X ゴールドエナメル

自社製のCal.UN-230はローターをローズゴールド製に変更。写真からも分かる通り、巻き上げ機構には、ユリス・ナルダンが長年採用してきたシンプルにして巻き上げ効率に優れるマジックレバーを採用する。テンワやヒゲゼンマイ、アンクルといったパーツは、すべて同社のシリコン専門研究所シガテックで製造したシリコン製だ。

 それをフリークの独創的な機構と違和感なくマッチさせたのもさすがだ。エナメルを幾層も塗り重ねた深みあるブルーには放射状のパターンがくっきり浮かび、時間の経過とともに回転するフライングカルーセルの動きを一層ドラマチックに見せる。

 今やフリークは、ユリス・ナルダンの代名詞であり、海外では広く認知されている。最先端の時計製造技術と伝統の手仕事という、メゾンの二大要素をデイリーユースに向く直径43mmケースの上で見事にクロスオーバーさせた本作は、さらなるブレイクの弾みになることだろう。

フリーク X ゴールドエナメル

ドンツェ・カドランの熟練職人たちが手作業で仕上げたアワーディスク。窯焼きの高温に耐える22Kローズゴールド製のプレートに繊細なサンレイパターンをギヨシェ彫りした後、半透明のエナメル顔料の塗布と焼成を幾度も重ねることで、メゾンの海洋の伝統を象徴する深くて光沢あるブルーに仕上げた。1日がかりで製作されるこのディスクは、ひとつひとつの色合いや輝きが異なり、まさに唯一無二の芸術作品と言える。



Contact info:ソーウインド ジャパン Tel.03-5211-1791

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