オメガのドレスウォッチにスポットを当て、その魅力を紹介する。「デ・ヴィル」や「コンステレーション」など、同社のドレスウォッチには、歴史と技術が詰まったアイコニックなモデルが多く存在する。今回はその中から5つの名作を取り上げる。
Text by Tsubasa Nojima
[2025年8月7日公開記事]
ドレスウォッチに見るオメガの実力
1848年に創業した老舗時計ブランドであるオメガ。月に降り立ったクロノグラフウォッチとして唯一無二の魅力を持つ「スピードマスター」や、映画作品『007』シリーズにおける主人公ジェームズ・ボンドの愛用品として知られるダイバーズウォッチの「シーマスター」など、同社のスポーツウォッチは言わずと知れた名作ぞろいだ。
そんな陰に隠れてか、大きく注目されることこそ少ないものの、ドレスウォッチにも注目すべきモデルは存在する。「デ・ヴィル」は、フランス語で街角を意味する名前の通り洗練された都会的なデザインによって、タイムレスなエレガンスを体現し、1952年に誕生した「コンステレーション」は、かつての天文台コンクールで輝かしい成績を収めた高精度機としての威厳を現代へ受け継いでいる。今回はそんなオメガのドレスウォッチにスポットを当て、その魅力を改めて紹介する。
「デ・ヴィル トレゾア」Ref.435.13.40.21.03.001

曲面を多用したドレッシーなデザインが特徴。シルク状のパターンを施したブルーダイアルがカジュアル感を醸し出し、ドレスウォッチながらも幅広いシーンで着用しやすい。手巻き(Cal.8910)。29石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ10.1mm)。3気圧防水。112万円(税込み)。
フランス語で宝物を意味する“トレゾア”をモデル名に冠した「デ・ヴィル トレゾア」。艶やかな丸みを帯びたフォルムは、まるで磨き上げられた宝石のような上品な輝きを放つ。複数のバリエーションが存在するデ・ヴィル トレゾアだが、その中でも特にシンプルなモデルのひとつが、Ref.435.13.40.21.03.001だ。
ボンベ状に湾曲したブルーダイアルは、シルクのようなパターンが施され、デ・ヴィル特有のドレッシーさに、仄かなカジュアル感をプラスすることに成功している。6時位置には日付表示が配され、シンメトリーなデザインを保ちつつ機能性を確保していることにも注目だ。インデックスと針は細く仕上げられ、上品な顔立ちを強調する。
鏡面に磨き上げたステンレススティール製のケースは、曲面を多用しつつボックス型のサファイアクリスタルを組み合わせることで、柔らかな雰囲気を創出している。シースルーバックから見えるのは、コーアクシャル脱進機を搭載し、マスター クロノメーター認定を取得した手巻きムーブメントだ。
「デ・ヴィル トレゾア」Ref.435.13.40.22.06.001

ツートンダイアルが特徴のデ・ヴィル トレゾア。6時位置にスモールセコンド、12時位置にパワーリザーブインジケーターを備える。手巻き(Cal.8934)。29石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ10.1mm)。3気圧防水。133万円(税込み)。
パワーリザーブインジケーターを搭載したデ・ヴィル トレゾア。6時位置のインダイアルにスモールセコンド、12時位置のインダイアルにパワーリザーブインジケーターを配することで、機能性を向上させているだけではなく、デザインにメリハリを効かせている。
落ち着いた印象のシルバーダイアルは外周につれて湾曲し、クラシカルな印象だ。細身のインデックスと針は、3針モデルとも共通するデザイン。グレーに仕上げられたふたつのインダイアルには、レコード状の溝が刻まれ、強い光が当たった際でも視認性を損ねないように配慮されている。
滑らかなフォルムのケースは直径40mmと、モダンなドレスウォッチらしいサイズ感。ラグからラグまでのケースの縦の長さは44.8mmに抑えられ、比較的細腕の人にも使いやすいだろう。
シースルーバックからのぞくのは、手巻きムーブメントのCal.8934。マスター クロノメーター認定を取得し、高い精度と耐磁力性を誇る。大きなブリッジに施されたアラベスク模様のコート・ド・ジュネーブなど、見応えも十分だ。
「デ・ヴィル プレステージ」Ref.434.23.42.22.10.001

ポインターデイトを搭載した「デ・ヴィル プレステージ」。18Kイエローゴールドとステンレススティールのコンビケースが、華やかな印象だ。自動巻き(Cal.8936)。39石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS×18KYGケース(直径42mm、厚さ12.3mm)。3気圧防水。141万9000円(税込み)。
オーソドックスなドレスウォッチらしいデザインが特徴の「デ・ヴィル プレステージ」。まず紹介するのは、ポインターデイトを搭載したモデルだ。サンレイ仕上げの深いグリーンのダイアルには、PVDによってゴールドカラーに仕上げられたインデックスと針が組み合わされ、上品に纏め上げられている。ホワイトのプリントによる1から31までの数字は、三日月形の針と合わせて読み取るデイト表示だ。サークル状のヘアラインによって、視認性も確保されている。
丸みを帯びたステンレススティールケースには、18Kイエローゴールド製のベゼルが組み合わされ、華やかさを強調。ケースサイズは直径42mm。ドレスウォッチとしてはやや大ぶりだが、その分上品なダイアルを手元いっぱいに楽しむことができる。
本作もシースルーバックを採用しており、機械式自動巻きムーブメントのCal.8936を鑑賞することが可能だ。もちろんマスタークロノメーター認定を取得しているため、パソコンやスマートフォンなどを使用する際に、磁気帯びを心配する必要がない。
「デ・ヴィル プレステージ」Ref.434.10.41.21.03.001

日付表示やパワーリザーブインジケーターを備えた機能性に優れるモデル。モノトーンのため、多機能であっても見た目の煩雑さが抑えられている。自動巻き(Cal.8810)。35石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径41mm、厚さ10.8mm)。3気圧防水。95万7000円(税込み)。
6時位置にパワーリザーブインジケーター、9時位置にスモールセコンドを備えた、デ・ヴィル プレステージ。デ・ヴィル プレステージには、機能や素材、ケースサイズ、ダイアルカラー、ベルトなど、豊富なラインナップがそろっており、自分に合った1本を選ぶ楽しみもある。ここで紹介するのは、直径41mmのステンレススティールケースに、淡いブルーのダイアルを採用したモデルだ。
全体的な印象はシンプルなドレスウォッチだが、十分な機能性を備えていることも本作の魅力だ。日付表示はビジネスシーンでの利便性を向上させ、パワーリザーブインジケーターは巻き上げ状態を可視化してくれる。デスクワークが多い人の場合は、自動巻き機構だけで主ゼンマイを十分に巻き上げられないこともある。そんな時でもパワーリザーブインジケーターがあれば、不意に止まってしまう前に手巻きをするなど、対処しやすいだろう。
ステンレススティールブレスレットは、ドレッシーな7連タイプ。汗ばむ季節でも気兼ねなく着用できるのは、金属製ブレスレットのメリットだ。
搭載するCal.8810は、マスター クロノメーター認定を取得した機械式自動巻きムーブメントである。
「コンステレーション」Ref.131.23.41.21.11.001

セドナゴールドとバーガンディ、ブラックのカラーリングが華やかなモデル。ラグがない分、細腕の方でも着用しやすい。自動巻き(Cal.8900)。30石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS×18Kセドナゴールドケース(直径41mm、厚さ13.5mm)。5気圧防水。159万5000円(税込み)。
1982年に登場した「コンステレーション “マンハッタン”」のデザインコードを受け継ぐモデル。「コンステレーション」にもさまざまなバリエーションが存在するが、今回取り上げるのは、パーティシーンなどの華やかな場で着用したい1本だ。
深みのあるバーガンディダイアルは、ラッカーによって仕上げられている。外周に向かって暗くなるグラデーションや、光沢感を楽しむことができるサンレイ仕上げが、見る角度によって多彩な表情を見せてくれる。針やインデックス、オメガのロゴ、そしてコンステレーションを象徴する星は、すべて18Kセドナゴールド製だ。
ローマ数字が並ぶベゼルと、そのサイドに配された爪は、“マンハッタン”から続く意匠だ。ステンレススティール製のケースは、ベルトへシームレスにつながるデザインを与えられている。ベルトは、ダイアルに合わせたバーガンディカラーのアリゲーター製。ラバーを組み合わせることで、汗などの水分への耐性を高めている。
ムーブメントは、Cal.8900を搭載。Cal.8800系に比べて径が大きく、自動巻き機構にはスイッチングロッカー式を採用している。シースルーバックからは、アラベスク模様のコート・ド・ジュネーブを鑑賞することができる。