永遠に語り継がれるタイムピース #02 オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」

今年、オーデマ ピゲはその長きにわたる複雑時計製造の歴史の中でも、とりわけ象徴的な永久カレンダーに焦点を当て、創業150周年のアニバーサリーイヤーを顕彰した。発表したのは新開発の超薄型ムーブメントによって実用性を格段に高めたモデル。この革新的機構によって永久カレンダーは、また新たなフェーズへと突入した。

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」

新開発のムーブメントCal.7136を搭載した、直径38mmのロイヤルオーク パーペチュアルカレンダー。外装素材にピンクゴールドを用いたこのモデルは、ベージュのグランドタペストリーダイアルにスネイル仕上げを施したインダイアルを組み合わせ、ケースとダイアルにエレガントな調和をもたらしている。
奥山栄一:写真
Photographs by Eiichi Okuyama
ギズベルト・L・ブルーナー:文
Text by Gisbert L. Brunner
Edited by Yuzo Takeishi
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]


複雑時計150年の伝統と革新の最前線、実用的永久カレンダーの極北

 1875年、時計師ジュール=ルイ・オーデマがジュウ渓谷で独立した時、彼が製作した時計はすでにカレンダー表示を備えていた。81年には同じく時計師のエドワール=オーギュスト・ピゲが加わり、正式に社名を「オーデマ ピゲ」とした。ふたりは複雑機構を備えた機械式時計、とりわけ当初から永久カレンダーを搭載する時計に大きな野心を抱いていた。そのメゾンが150年後も一族の手にあり、年間売上が20億スイスフランを超えるとは、当時の彼らでさえ夢にも思わなかっただろう。一族の後継者たちの下、1921年には初めてのカレンダー付き腕時計が誕生。しかしそれは、31日未満の月では日付を手動で修正する必要があった。

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」

直径38mmモデルにはダイアルの外周リングに週番号の表示がなく、すっきりとしたデザインに。文字盤レイアウトの刷新により、日付表示も従来の3時位置から12時位置へと移設され、指針が日付数字のセンターを指し示すことで直感的に読み取れるようになっている。

 その後、独立時計師アルフレッド・オーベールの支援を受け、57年までに計12本の複雑時計が製作された。中でも、Ref.5516に採用されたキャリバー13VZSSQPを搭載した9本は閏年表示で、そのうち3本は6時位置に48カ月表示を、6本は12時位置に世界初となる4年周期を示す針を備えていた。

 78年にはキャリバー2120/2800が、Ref.5548に搭載された。永久カレンダーとムーンフェイズを備えながらも厚さは3.95mm。閏年表示はなく、だがそれでも他ブランドの手本となった。97年には厚さ4.05mmの自動巻きキャリバー2120/2802が登場。閏年表示を加えることで、長期間調整しなかった際の再設定を容易にした。

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」

ケースバックからは新開発のCal.7136が姿を覗かせ、コート・ド・ジュネーブをはじめとする繊細な装飾を鑑賞できる。

 そして2015年、オーデマ ピゲはキャリバー5134によって、新しいカレンダー表示の時代を迎えた。ベースには徹底的に改良されたキャリバー2120が用いられ、厚さは4.31mmと2120/2802より0.26mm厚くなったが、それは新設計のカレンダー機構とふたつの新機能のためであった。ひとつはISO8601に準拠した週番号表示で、その年の最初の木曜日を含む週を第1週とする方式。もうひとつは新たに計算し直されたムーンフェイズ表示で、125年317日経過するまでに1日の誤差しか生じない高精度を実現した。

 長年使われてきたキャリバー2120は、2018年に発表された世界記録を持つカレンダー機構のベースにもなった。直径32mmのキャリバー5133である。本機が2.89mmの薄さを可能にしたのは、日付、曜日、月、閏年、ムーンフェイズを示す機構を文字盤側に配置したため。ムーンフェイズ表示は125年に1度だけ修正を要する精度を誇るほか、8時位置には昼夜表示が加えられ、カレンダー操作を助けた。

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」

象徴的なケース一体型ブレスレットは、表面をサテン、斜面をポリッシュで仕上げ分け。ソリッドな印象を与えるが、テーパードされた形状により、装着感は高められている。

 22年にはキャリバー7121を発表。開発に5年を要したこのムーブメントは、巻き上げ機構に切り替え車式の独自システムを用い、パワーリザーブは約55時間。可変慣性テンプと平ヒゲゼンマイを備え、従来から大幅な進歩を果たした。

 そして今年、オーデマ ピゲは創業150周年を迎えた。創業者ジュール=ルイ・オーデマが1875年にすでに永久カレンダー機構に取り組んでいたことを考えれば、この年に再びこの複雑機構が中心となるのは必然とも言えよう。

 直径38mmに縮小された最新の「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」に搭載されるのは、新世代の自動巻きキャリバー7136で、永久カレンダー機構はさらに進化を遂げた。ベースは日付表示を持たないキャリバー7121で、文字盤側にカレンダー機構を組み込んでいる。キャリバー7136は5133の発展型で、閏年と高精度なムーンフェイズ表示を備え、厚さは4.1mm。文字盤レイアウトの刷新により、読み取りが直感的に行えるほか、リュウズのみですべてのカレンダー操作が可能となった。他方、直径41mmのロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーに搭載されるキャリバー7138は、中央に配した針で週番号を示す機能が搭載されている。

 これらは、いずれも創業時より複雑機構を手掛け、得意としてきたオーデマ ピゲが、その150年の歴史の中で磨き上げてきた技術革新の最前線とも言うべき、永久カレンダーの傑作である。

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」

ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー
外装に用いられているのは、オーデマ ピゲが2024 年に発表した独自開発の素材で、ピンクゴールドとホワイトゴールドの中間に位置するような淡い色調を持つサンドゴールド。Cal.7138 を搭載しており、週表示の機能も備わる。自動巻き(Cal.7138)。41石。2万8800 振動/時。パワーリザーブ約55時間。18Kサンドゴールドケース(直径41mm、厚さ9.5mm)。50m防水。要価格問い合わせ。
オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー」

ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー
パーペチュアルカレンダー機構を搭載しながらも、直径38mmのケースサイズを実現した新鋭。今年発表された直径41mmのパーペチュアルカレンダーモデルと同様、リュウズ操作のみで年と月、日付、時刻、曜日、月齢のすべてを修正できる。自動巻き(Cal.7136)。41石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KPGケース(直径38mm、厚さ9.4mm)。50m防水。要価格問い合わせ。



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https://www.audemarspiguet.com/com/ja/watch/2025-novelties.html



Contact info:オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000


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