永遠に語り継がれるタイムピース #07 ジラール・ペルゴ「ロレアート フィフティ」

ジラール・ペルゴは、現在の時計業界ではすっかり定着した垂直統合型生産体制である「マニュファクチュール」の嚆矢である。1791年創業の老舗にして、今なお時計業界の第一線で伝統と革新を紡ぎ続けている。230年以上のその長い歴史を振り返れば、数々の傑作が次々と思い浮かぶが、2025年のハイライトは、今年誕生50周年を祝した「ロレアート フィフティ」である。

ジラール・ペルゴ「ロレアート フィフティ」

クル・ド・パリ装飾が施されたサンレイグレー文字盤には、ベゼルとブレスレットのセンターリンクのイエローゴールドの色味に合わせた、イエローゴールドカラーのインデックスと時分秒針が配され、そのコントラストが存在感と品格を醸成する。注目すべきは、日付表示ディスクの色をダイアルカラーに合わせている点だ。こうしたディテールの積み重ねにこそ、ジラール・ペルゴのマニュファクチュールとしての成熟が見て取れる。
鈴木幸也(本誌):文
Text by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
Edited by Yuzo Takeishi
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]


誕生から半世紀を経て、なおも魅力を高める時計製造技術とデザインセンスの結晶

 実は、1975年誕生の初代「ロレアート」そのものが、現在に連なるジラール・ペルゴの先見性と革新性の象徴でもあったと言える。特徴的な八角形のベゼル、そのベースとなるトノー型ケースと、ケース一体型のブレスレット、そして自社開発のクォーツムーブメントを搭載した、紛れもない当時の革新モデルであった。今でこそ、普及品となってしまったクォーツウォッチだが、ロレアートが誕生した時代においては先端技術であった。そもそも、現在の国際標準であるクォーツムーブメントの振動数3万2768Hzは、1971年にジラール・ペルゴが確立したものである。その先端技術を、意匠においても当時の先端を走る、今で言う〝ラグジュアリースポーツウォッチ〞の造形でパッケージングしたのだから、すべてが斬新の塊であった。

ジラール・ペルゴ「ロレアート フィフティ」

1994年に登場したジラール・ペルゴを代表する基幹ムーブメントCal.3300以来、実に約30年ぶりに発表された新たな基幹ムーブメントCal.GP4800。パワーリザーブは、Cal.3300の約46時間から約55時間へと延長され、自動巻き機構と併せて、実用性が高められた。性能面だけでなく、自動巻きローター、受け、地板には10種類以上の仕上げが施され、ムーブメントの美観にも抜かりがない。

 その誕生から50年。ちょうど半世紀を経て、ロレアートは原点回帰と同時に、さらなる進化を遂げて、その全貌を現した。10月7日に発表されたばかりの最新作「ロレアート フィフティ」の見所は、大きくふたつ。デザインとムーブメントだ。初代を彷彿とさせるイエローゴールドとステンレススティールのコンビネーションによる外装をまといつつも、その中身には最新の自社開発ムーブメント、キャリバーGP4800を搭載しているのが最大の注目ポイントだ。

 クォーツムーブメントを搭載し、時代背景と併せて小ぶりであった初代を意識してか、ロレアート フィフティは直径39mm、厚さ9.8mmと〝今〞の潮流に則ったコンパクトなサイズを実現。外装に採用したステンレススティールとイエローゴールドのコンビネーションは、単に初代の意匠をなぞったわけではない。最も目を引く八角形ベゼルの土台となるトノー型ケースのエッジに施された面取りは、より鋭角的に見直された。加えて、初代では全面ポリッシュ仕上げであった八角形ベゼルは、サテンとポリッシュ仕上げに改められ、結果、ベゼルとケース、ブレスレットに連なる一体型の造形に、一層の立体感とメリハリ、さらなる一体感が与えられた。

ジラール・ペルゴ「ロレアート フィフティ」

両開きのトリプルフォールディングバックルの開閉部には同メゾンを象徴する “ブリッジ” のモチーフがあしらわれる。さらに、ブレスレットを4mm調整できる微調整システムも搭載され、日常使いのフィット感にも配慮される。

 今やロレアートは、いわゆる〝ラグジュアリースポーツウォッチ〞というカテゴリーに分類されるが、その特徴のひとつが、ケースと一体化されたブレスレットである。リファインされた〝新生ロレアート〞では、初代のバイカラーデザインを踏襲しつつも、バックルに向かって徐々に細くなるテーパードされたH型リンクを採用し、かつひとつひとつのリンクを短くすることで、ブレスレット全体の一体感を高めるとともに、細かなリンクがブレスレットに与える滑らかな曲線によって手首への装着感も一層向上した。

 加えて、ポリッシュ仕上げされたイエローゴールド製のセンターリンクは、上面を弯曲させることで、ヘアライン加工されたフラットなスティール製リンクよりもわずかに盛りが上がる。このごく細部の意匠の効果と、ヘアラインとポリッシュ仕上げのコントラストによって、各リンクを短くしたにもかかわらず、ブレスレット全体にボリューム感がもたらされ、ロレアート フィフティをひと目で〝忘れられない〞存在へと昇華させた。

ジラール・ペルゴ「ロレアート フィフティ」

1975年発表の初代ロレアート。その名称は、当時のジラール・ペルゴのイタリア代表が提案した「資格を有するもの」という意味を持つイタリア語「Laureato」に由来する。

 一方、新たに搭載された新型キャリバーGP4800は、長年にわたって同メゾンにおいて信頼を築いてきたGP3300に次ぐ、新たな基幹キャリバーとしての任を負う。新開発の強みを生かし、緩急針を廃した両持ちの可変慣性テンプや、シリコン製脱進機の導入などにより、現代にふさわしい性能と信頼性が与えられた。ムーブメントの意匠も、「スリーブリッジ」をアイコンとする同メゾンらしく、ムーブメント全体を3つに分割された大きなブリッジ(受け)で支えることで、審美性と耐久性を両立させた。

 新たな心臓を得た新生ロレアート。その高鳴る鼓動とともに、ロレアートは誕生半世紀を経て、その存在感を確固たるものとし、未来へと受け継ぐべきレゾンデートルを得たのだ。

ジラール・ペルゴ「ロレアート フィフティ」

ロレアート フィフティ
ロレアートの次世代を担うべく、現代的にスペックアップされた新型ムーブメントCal.GP4800を搭載。外装も細部に至るまでリファインされた。初代では12 時位置に配されていた「GP」ロゴが、より “クワイエット” なブランド表記に改められた点も好感が持てる。自動巻き(Cal.GP4800)。19石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18Kイエローゴールド×SSケース(直径39.00mm、厚さ9.80mm)。15気圧防水。世界限定200本。375万1000円(税込み)。



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https://www.girard-perregaux.com/jp_jp/81008-63-3412-1CM.html



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