1980年代、その斬新なデザインから一躍世界中で人気となったオリジナル「タグ・ホイヤー フォーミュラ1」。2024年にはオリジナルモデルがキスとのコラボレーションによって復刻され、ついに2025年の4月にはオリジナルの意匠を忠実に継承した「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフ」が登場した。この80年代心をくすぐるデザインのこの腕時計、実際はどのようなモデルなのか? 『ウォッチタイム』ドイツ版の編集長であるダニエラ・プッシュがその姿に迫る。
ブラックの文字盤にイエローベゼルが組み合わされたRef.WBY1117.FT8087は、2025年10月21日、日本標準時午後10時から、公式オンラインにて先行予約が開始。フォーミュラ1メキシコグランプリに先駆けたものだ。(Cal.TH50-00)。フル充電時約10カ月稼働。SSケース(直径38mm、厚さ9.9mm)。100m防水。予価26万9500円(税込み)。
Text by Daniela Pusch
[2025年10月15日掲載記事]
復活! 「タグ・ホイヤーフォーミュラ1」
「タグ・ホイヤーフォーミュラ1」は、モータースポーツDNAを体現するコレクションだ。1980年代の伝説的な初代タグ・ホイヤーフォーミュラ1へのオマージュとしてカラフルで特徴的なデザインをまとった「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフ」を現代へとよみがえらせたのである。
新たに設計された直径38mm(初代モデルは34mmほど)のケース、高い装着性のための改良、印象的なカラーパレット、そしてシリーズ初となる最新の光発電ムーブメントを採用し、タグ・ホイヤーはモータースポーツウォッチの世界において新たなスタートを切ったのだった。

1980年代のオリジナル「フォーミュラ1」は、今や熱狂的に収集されるウォッチアイコンだ。当時の樹脂コーティングが施されたケースを採用したクォーツモデルは、セカンダリーマーケットで思いもよらぬ高値をつけ、80年代当時には想像もできなかった“掘り出し物”へと大化けした。
セレクトショップおよびファッションブランドの、キスとのコラボレーションにより2024年に1986年モデルをアップデートして復刻したことは記憶に新しい。そして、レーシングスピリットただよう意匠へとリニューアルされた自動巻きモデルの「タグ・ホイヤー フォーミュラ1」を経て、ついにタグ・ホイヤーは初代フォーミュラ1をリニューアルしたのだ。
初代の誕生から約40年を経たこの新モデルは、80年代のスピリットを継承しながら、より洗練され、真摯なデザイン言語へと進化している。これは、同社がF1の公式タイムキーパーとしてモータースポーツとの関係を深めた姿勢にもふさわしい。
変わりゆくアイコン
タグ・ホイヤー フォーミュラ1の物語は1986年に始まった。テクニーク・ダヴァン・ギャルドとの合併後、クォーツ全盛期のなかで、ブランドは新たな腕時計製造の基準を打ち立てる必要性に迫られた。
鮮やかなデザイン、そして揺るぎないモータースポーツとの結び付きを表現するデザインのこの腕時計は発表された瞬く間に、世代を超えた“カルチャーウォッチ”となり、爆発的な支持を得た。
レギュラーモデルはシルバーカラーのステンレススティール製ケースに金属製ブレスレットを備えるモデルだ。ソーラークォーツ(Cal.TH50-00)。フル充電時約10カ月稼働。SSケース(直径38mm、厚さ9.9mm)。100m防水。28万6000円(税込み)。
2025年の4月に発表された9つの新モデルは、フォーミュラ1のエネルギーとダイナミズムを見事に映し出している。ブラック、ホワイト、ブルーの文字盤をもつ3モデルがレギュラーラインとして登場し、それぞれステンレススティール製ブレスレットを備える。さらに、ブラック×レッド、ブルー×ブラック、ホワイト×グリーンといった大胆な配色を採用した6種のリミテッドエディションも加わっている。
フォーミュラ1メキシコグランプリに先駆けて、2025年10月21日、日本標準時午後10時から、公式オンラインにて先行予約が開始される。ソーラークォーツ(Cal.TH50-00)。フル充電時約10カ月稼働。SSケース(直径38mm、厚さ9.9mm)。100m防水。予価26万9500円(税込み)。
タグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフ」(左から2番目)Ref.WBY1162.FT8105
ソーラークォーツ(Cal.TH50-00)。フル充電時約10カ月稼働。TH-ポリライトケース(直径38mm、厚さ9.9mm)。100m防水。26万9500円(税込み)。
タグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフ」(左から3番目)Ref.WBY1111.BA0042
ソーラークォーツ(Cal.TH50-00)。フル充電時約10カ月稼働。SSケース(直径38mm、厚さ9.9mm)。100m防水。28万6000円(税込み)。
タグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフ」(左から4番目)Ref.WBY1161.FT8086
ソーラークォーツ(Cal.TH50-00)。フル充電時約10カ月稼働。TH-ポリライトケース(直径38mm、厚さ9.9mm)。100m防水。26万9500円(税込み)。
タグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 ソーラーグラフ」(左から5番目)Ref.WBY1160.FT8085
ソーラークォーツ(Cal.TH50-00)。フル充電時約10カ月稼働。TH-ポリライトケース(直径38mm、厚さ9.9mm)。100m防水。26万9500円(税込み)。
いずれのモデルも、初代フォーミュラ1らしい、ケースからベゼルが切り離され、わずかに浮いたような構造を踏襲している。また、エルゴノミクス(人間工学)に基づく改良により、より快適な装着感を実現。スーパールミノバ蓄光を施した立体インデックスと、磨き込まれた針があらゆる環境で優れた視認性を発揮する。ケース径は直径38mmとやや大きくなり、3時位置にデイト表示を備えている。
イノベーションとパフォーマンス
今回タグ・ホイヤーは、フォーミュラ1コレクションに初めて最新の光発電で駆動する「ソーラーグラフ」ムーブメントを搭載した。太陽光はもちろん、人工光でも発電できるこのムーブメントは、わずか約2分間の直射日光でおおよそ1日分の駆動力を蓄える。
フル充電状態では光がなくても約10カ月間稼働し、完全に停止した状態からでもおおよそ10秒間の照射で再始動が可能だ。さらに、蓄電セルの寿命は約15年に達するという。
しかし進化は内部にとどまらない。より洗練されたプロポーション、改良されたラグ形状、ケースと一体化したリュウズガード、そして高級感ある仕上げにより、この時計はかつてないほどモダンな印象を放つ。

幅広で発光性に優れた針と立体的なアプライドインデックスが、フォーミュラ1らしい大胆なルックスを際立たせる。マットとポリッシュを組み合わせた外装仕上げは、より複雑で上質な表情を生み出す。
また、文字盤仕上げにも新しい試みが導入された。初代モデルがマットでシンプルだったのに対し、本作の文字盤は、繊細な光のニュアンスを感じさせる仕上げとなっている。

基本的にリミテッドモデルにはラバーストラップが採用されるが、レギュラーモデルにもラバーストラップが採用されたモデルが存在する。ただし、レギュラーモデルのブレスレットがタイヤをイメージしたストラップに変わったもので、リミテッドモデルのストラップとは意匠が異なる。インデックスが部分的にアラビア数字のものになっていることも要注目。ソーラークォーツ(Cal.TH50-00)。フル充電時約10カ月稼働。SSケース(直径38mm、厚さ9.9mm)。100m防水。26万9500円(税込み)。
さらに注目すべきは、新素材であるTH-ポリライトの採用だ。軽量かつ高耐久で、ほぼ無限のカラーバリエーションを可能にするこの素材は、新しい両方向回転ベゼルに用いられている。回転時にはより精密なクリック感と上質な機械音を奏でるのだ。このことは、クラシックなモータースポーツの象徴であるフォーミュラ1シリーズへの敬意と捉えられないだろうか。
実際に着用!

マット仕上げのステンレススティール、もしくはTH-ポリライト製で展開される38mmケースは、オリジナルモデルへの敬意を示しながらも、格段に高い装着感を実現。オリジナルの小ぶりなプロポーションに比べてサイズが大きくなったにもかかわらず、軽快でコンパクトな印象を保っている。