92歳の高木ブー、ロレックスGMTマスターⅡとセイコーを愛用中。きっと思い出が詰まった2本

結成60周年を迎えたザ・ドリフターズの記念展が日本全国で大盛況だ。その中で今もなお存在感を放ち続ける92歳の高木ブーは、ウクレレ奏者としてハワイと日本をまたにかけ、活動を続けている。2地点の時刻を同時に表示するロレックス「GMTマスターⅡ」、そして品の良さがにじみ出るセイコー「ファッションウオッチ」。昭和の大スターが愛用する時計から、彼の人生と音楽への情熱が見えてくる。

沼本有佳子:文
Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年10月12日掲載記事]

高木ブー

写真提供:東京スポーツ新聞社


再び脚光を浴びる昭和の大スター ザ・ドリフターズ

 国民的コメディ集団として昭和を輝かせたザ・ドリフターズ。その結成60周年を記念する「結成60周年記念 ザ・ドリフターズ展 〜発掘!5人の笑いと秘宝たち〜」が全国の百貨店・イベントホールを巡回し、反響を呼んでいる。残すところあと2会場のみとなってしまったが、現場には世代を超えたファンが詰めかけ、入場するのに2時間待ちとなる盛況ぶりだ。

 ザ・ドリフターズは元々、1956年に音楽バンドとして結成。前身はロカビリーバンド、サンズ・オブ・ドリフターズである。その後井上ひろしとドリフターズ、櫻井輝夫とドリフターズを経て、ロックンロールからコミックバンドへと転向。さらに碇矢長一とザ・ドリフターズへと改名、新メンバー拡充の後に、1964年、ザ・ドリフターズとしてコントグループへと本格的に転向した。

 一般的にはこの1964年がザ・ドリフターズの結成年とされており、2024年に結成60周年を迎えたという経緯である。黄金期のメンバーは、いかりや長介、高木ブー、仲本工事、加藤茶、志村けんの5人。長らくこの構成が続いたが、平成になって、いかりや長介の死去により4人構成となり、さらに志村けん、仲本工事の他界を経て、現在は82歳の加藤茶と92歳の高木ブー2人構成となっている。


音楽への情熱。そして高木ブーはウクレレ奏者へ

 ザ・ドリフターズのバンドとしての最大の功績は、1966年のビートルズ日本公演において前座を務めたことである。これをきっかけにコミックソングのほか、民謡・軍歌など日本で広く親しまれていた曲の替え歌を多数発表。1970年には「第12回日本レコード大賞大衆賞」を受賞し、同年「ドリフのズンドコ節」で「第1回日本歌謡大賞放送音楽賞」を獲得した。

 その後は、お笑いの仕事が増えていくが、音楽活動については各個人がそれぞれ継続。高木ブーは加藤茶・仲本工事とともにこぶ茶バンドを結成し、1999年にマキシシングル「こぶ茶ルンバ」(「コーヒールンバ」の替え歌)をリリースしている。

 幼い頃にジャズのメロディを聴き、身体が自然に動き出すようなウキウキした気分になったという高木ブー。きっと彼にとっての音楽は、人生そのものなのだろう。「ジャズのレコードが僕を音楽の道に導いてくれたのかもしれない」と、本人もインタビューで回想している。

 ウクレレ奏者としても長年活躍し、ハワイのカメハメハ大王直系子孫でハワイ大学教授の人間国宝、ルビライト・カウェナ・ジョンソンから、ウクレレ活動を通じたハワイ文化の普及・貢献を評価され、ハワイアンネーム「ホアコクア」を授かる名誉を受けた。それはハワイ語で“友達を助け支えになる、精霊を分け与える”という意味を持つ。

 ウクレレとの出合いは15歳の誕生日、3番目の兄から贈られたのがきっかけだ。以来、ハワイアン・ミュージックに深い造詣を持ち、各地の米軍キャンプや銀座のクラブで演奏するアルバイトをしていたという。高木ブーのウクレレの腕前は相当なもので、2008年3月にはハワイで最高の名誉と言われる「ワイコロア・ウクレレ・フェスティバル」にプロ演奏者として初めて招聘され、翌2009年には30分のソロステージをこなし、2020年にも演奏を果たしている。


ロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ」を着用

 多忙を極めたザ・ドリフターズの活動中、仲間内では午後3時を「ドリフ時間」と呼んでいたそうだ。これは、ドリフが1日の仕事を基本的に午後3時から開始していたことに由来する。メンバーが2人構成になった今も、午後3時になると高木ブーの脳裏にはドリフメンバーとしての思いが駆け巡るのかもしれない。

 そんな高木ブーが愛用している時計を、公式インスタグラムの投稿に発見した。

2025年6月29日の投稿。加藤茶、フジテレビ西山喜久恵アナとともに撮影された「結成60周年記念 ザ・ドリフターズ展 〜発掘!5人の笑いと秘宝たち〜」オープニングイベントでの一枚。高木ブーの手元に見えるのは、ロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスターⅡ」だ。

 ハワイと日本を往復し、ウクレレ奏者として研鑽を積む高木ブー。その生活スタイルに実用性の高いGMTモデルが選択されていることは興味深い。

 ロレックスのGMTマスターは、1955年にプロフェッショナル向けのタイムピースとして誕生し、いまなお愛され続けているスペシャルコレクションの一つだ。その初代モデルは、パン・アメリカン航空からの依頼に応える形で開発。高い視認性とともにGMT針と回転ベゼルによりローカルタイムと第2時間帯を同時に表示できる機能を備え、一般ユーザーからも高い支持を集めた。

 その後、改良が重ねられ、1982年に後継機としてGMTマスターⅡが登場。現行モデルでは紫外線に強いハイテクセラミックスがベゼル素材に、さらにセラクロム製のインサートが採用されており、艶のある質感と高い耐傷性を誇っている。さまざmなカラーバリエーションが展開されているが、高木ブーが着用しているのは、その色合いから“コーク”の愛称で親しまれ、復活が望まれている赤黒ベゼルのモデルだと思われる。


メンバーの絆とともに、ゆったりとした時を刻むセイコー ファッションウオッチ

 また、「インターナショナル・ウクレレフェスティバル・オブ・ハワイ 2025」会場からの投稿では、セイコー製の腕時計を着用する姿も確認できた。

2025年7月28日の公式インスタグラムへの投稿。一緒に写っているのは、ハワイ応援キャラクターのホヌッピー。“ホヌ”とはウミガメのことで、ハワイでは幸運の象徴であり、家族の守り神となっている。

 インデックスの数字が大きくポップに記されたこの時計は、「セイコー ファッションウオッチ」と呼ばれたコレクションだ。若者の服装の個性化、多様化に応え、カジュアルで気軽に使える腕時計として企画された「2140」シリーズの1モデルである。ドリフの中でも控えめで、物腰が柔らかい、等身大を貫く高木ブーらしいセレクトだ。

 言われてみれば、丸みを帯びた大きな数字やダイアル全体に漂うゆったりとしたイメージが、高木ブーの愛するウクレレの音色と重なるようにも感じられる。品の良さがにじみ出る、彼らしい1本と言えるだろう。

セイコーファッションウオッチ転用禁止

セイコー「ファッションウオッチ」Ref.2140-022
1969年に10月に発売されたアーカイブモデル。現在は生産を終了している。手巻き(Cal.2140A)。21石。1万9800振動/時。SSケース。当時価格9500円。

 どちらの腕時計も現行品ではなく、過去に発売されたモデルだ。高木ブーは芸能界の数々の思い出とともに、これらの腕時計を愛用し続けているのだろう。それらにまつわるエピソードをぜひとも聞きたいものだ。


午後3時の「ドリフ時間」に託されたメンバーの絆

 昭和の芸能界を語る上で欠かせない存在であるザ・ドリフターズ。それぞれに個性が際立ったメンバーも、現在は加藤茶と高木ブーのふたりだけになってしまった。しかしながらドリフの笑いは、現代においても変わらぬ普遍的な魅力がある。

 高木ブーには、その優しい笑顔と素敵なウクレレの音色を、これからも届けてほしい。そして午後3時の「ドリフ時間」に込められたメンバーの絆が、いつまでも続くことを願ってやまない。



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