創業者F. A. ランゲが製作に関わった劇場備え付け時計にインスピレーションを受けた「ツァイトヴェルク」。同コレクション随一の使い勝手を誇る「ツァイトヴェルク・デイト」に新色が加わった。
Text by Shin-ichi Sato
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年11月号掲載記事]
「ツァイトヴェルク・デイト」に新色が追加

2019年初出の「ツァイトヴェルク・デイト」に加わった新色。文字盤デザインを踏襲しつつ、ピンクゴールドの華やかな印象をグレー文字盤によって引き締めている。日付リングはガラス製で、赤いセグメントが透けて見えて日を指し示す。手巻き(Cal.L043.8)。70石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KPGケース(直径44.2mm、厚さ12.3mm)。3気圧防水。要価格問い合わせ。
ドイツ語で「時の仕組み」を意味する「ツァイトヴェルク」は、ドレスデンのゼンパー歌劇場にある幕式の五分時計に着想を得たモデルだ。この特異な表示形式は、どの席からでも明確に時刻が読み取れるようにすることが目的とされており、王家召し抱えの時計師ヨハン・クリスチャン・フリードリッヒ・グートケスの下、A.ランゲ&ゾーネ創業者のフェルディナント・アドルフ・ランゲが開発に取り組んだ歴史がある。このような創業者の功績とその魅力を広く伝えるものとして、アイコニックなデジタル表示を踏襲しつつ腕時計のパッケージに収め、1分刻みの作動に改めたのが、2009年の初作であった。
今回はその発展型である日付表示付きモデル「ツァイトヴェルク・デイト」に、新色が追加された。シルバー製のグレーダイアルも18KPGケースも、これまでツァイトヴェルクコレクションにラインナップされていながら、意外なことに、この組み合わせは初だという。見慣れたデザインとカラーのコンビネーションながら、仕上がりの華やかさとエレガントさは歴代でも屈指だ。
搭載するキャリバーL043.8は、ツインバレルによって約72時間のパワーリザーブを誇る。その動作は、エネルギーの蓄積と解放を繰り返すものであり、安定性を高めるために、伝達トルクを一定に保つルモントワールが採用される。その効果もあり、深夜12時ちょうどには、時分を表示する3つの瞬転数字式ディスクと文字盤外周部の日付リングが、安定して同時に切り替わる様子を楽しめる。同社の機構学に対する深い知見により作り上げられた緻密な機構のすべてが噛み合って、ひとつの機能を実現する本作の醍醐味を堪能できる瞬間であろう。