ハミルトンは、アウトドア、ミリタリー、ヴィンテージテイスト、インフォーマルなど、幅広いラインナップを持つブランドであり、2025年も多彩な、そして魅力的な新作モデルを発表している。定番モデルに追加された新機能や、新たな文字盤表現への挑戦など、チャレンジングな製品も含まれており、注目すべきものは数多い。そこで、ハミルトンが2025年に発表した新作の中から、注目モデルを5本選出して紹介しよう。

Text by Shin-ichi Sato
[2025年10月30日公開記事]
2025年も注目モデルが盛りだくさんなハミルトン
今回の特集は、ハミルトンが2025年に発表した新作の中から特筆すべき、そして、筆者が欲しいと感じたモデルを5本選出して紹介する。幅広いラインナップを持つハミルトンらしく新作も多様であり、魅力的なモデルは数多い。さらに、ピックアップしたモデルのカラーバリエーションやケースサイズ違い、ストラップ、ブレスレットの仕様違いが数多く存在する。本特集を足掛かりに、時計店に足を運んで、自分にピッタリの1本を選んでいただきたい。
ハミルトン「カーキ フィールド メカ」Ref.H69509930

手巻き(Cal.H-23)。17石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径40mm、厚さ11.95mm)。10気圧防水。13万4200円(税込み)。
最初に注目するのは、フィールドウォッチの超名作に追加された「カーキ フィールド メカ パワーリザーブ」だ。本作は、「カーキ フィールド メカ」伝統の手巻きムーブメントを採用しつつ、9時位置にパワーリザーブ表示を加えたモデルである。
デザインは、アラビア数字インデックスと13時から24時に対応する表示の組み合わせ、そして視認性向上のために先端を鋭利にしたシリンジ型時分針といったミリタリーウォッチの系譜が感じられるものだ。また、パワーリザーブ表示は測時に影響を及ぼさないように文字盤中央寄りに配置されている。パワーリザーブ表示のデザインは、赤文字の「F(満)」と「E(空)」で状態を明示し、クラシカルなクロスカントリーカーの燃料計を思わせる仕上がりである。各針とインデックスの三角マークには、オールドラジウムカラーのスーパールミノバが塗布され、クラシックなテイストを加えている点が魅力だ。
本作に合わせてデビューとなるのが、新開発の手巻きムーブメントであるCal.H-23である。このムーブメントは巻き上がり状態でリュウズが固く止まることを防ぎ、巻き過ぎによるムーブメントの負荷を抑えつつ操作の快適性も高める設計で、手巻き式を手にしたことがないユーザーも安心の構造と言えるだろう。
なお、紹介するブラック文字盤にグリーンのNATOストラップの組み合わせ以外にも、ホワイト文字盤が用意され、3列ステンレスブレスレット仕様もそれぞれラインナップされた、計4つのバリエーションとなる。従来モデルに準じた王道のバリエーションで、カーキ フィールドに興味があるなら、選択肢にぜひ入れたい1本だ。
「カーキ ネイビー スキューバオート GMT」Ref.H82565930

自動巻き(Cal.H-14)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブロンズケース(直径43mm、厚さ13.9mm)。30気圧防水。24万9700円(税込み)。
続いては紹介するのは「カーキ ネイビー スキューバオート GMT」である。コンセプトは、船乗りに向けた冒険のためのウォッチとなっており、過酷な環境でも安心の30気圧の防水性能を備えたパッケージに、GMT表示機能を加えている。
紹介モデルはブロンズ製ケースで、ブロンズ特有の温かみのある色調と呼応するブロンズカラーの針やインデックス、ブラウンのラインの入ったNATOタイプストラップの組み合わせとなる。本作の特徴であるブロンズの魅力が引き立つコーディネートであり、これが本作の選出理由だ。
24時間表示の逆回転防止ベゼルにはセラミックス製インサートがはめ込まれ、素材由来の艶によって高級感が加えられている。ブラック文字盤はわずかに荒らした仕上げで乱反射を防いで視認性を確保しつつ、ベゼルの艶とコントラストを生んでいる点にも注目だ。
搭載される自動巻きムーブメントのCal.H-14は、パワーリザーブ約80時間を備える。これは、現代基準で魅力的なスペックであり、長い航海をはじめとした旅ウォッチとして歓迎されるものである。もちろん、デイリーユースにも安心感がある。
ブロンズ製モデルのほかには、ホワイト文字盤に、ステンレススティールケースとブレスレットの組み合わせもラインナップされる。
「カーキ アビエーション パイロット パイオニア」Ref.H76255810

自動巻き(Cal.H-10)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径38mm、厚さ11.4mm)。10気圧防水。15万9500円(税込み)。
続いては、「カーキ アビエーション パイロット パイオニア」の新色を紹介する。カーキ アビエーション パイロット パイオニアは、第二次世界大戦中にアメリカ軍に使用されていた、当時の最先端ポケットウォッチ「モデル 23」からインスピレーションを受けたモデルである。従来は、ヴィンテージミリタリーウォッチを想起させるブラック文字盤に、オールドラジウムカラーのスーパールミノバと、アイボリーのアラビア数字インデックス、レイルウェイミニッツトラックを組み合わせたモデルがラインナップされていた。
紹介する新作は、基本デザインをそのままに、エッグシェルホワイトの文字盤と、モスグリーンのベゼル、ベゼルと同色のレザーストラップのカラーコーディネートである。ミリタリー系でグリーンと聞くとオリーブドラブが思い浮かぶが、それよりもグリーンの強い色調である。一方、彩度を高めすぎずに、わずかに焼け思わせる落ち着いたカラーにすることでモダンさを抑え、ヴィンテージテイストを残している点が興味深い。
コブラ型の時針とシリンジ型の分針はどちらもヴィンテージテイストで、シンプルな文字盤デザインによって視認性も高い。また、手袋着用時にも操作がしやすいダイヤモンド型で大径のリュウズによって、パイロット向けモデルの系譜を表現している。ケース径は38mmと現代基準では比較的コンパクトな仕立てで、この点もヴィンテージモデルを想起させる。
このように、全体のパッケージングと各所のディティールはヴィンテージミリタリーのテイストに基づきつつ、アレンジによってモダンに寄り過ぎないようにバランスさせるセンスに、ハミルトンの“うまさ”が見える。この点が、本作の選定理由だ。
「カーキ アビエーション パイオニア メカニカル クロノ」Ref.H76409140

手巻き(Cal.H-51-Si)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40mm、厚さ14.35mm)。10気圧防水。33万9900円(税込み)。
ハミルトンによる軍隊への納入実績が反映された「カーキ アビエーション パイオニア メカニカル クロノ」にも新作が追加されている。カーキ アビエーション パイオニア メカニカル クロノは、1970年代にイギリス空軍(Royal Air Force)へ納入していたモデルをベースとしたクロノグラフモデルである。リュウズガードによるアシンメトリーデザインが目を引くケースシルエットと、“ふたつ目”タイプの文字盤がアイコンだ。
これまでは、オリジナルに準じたブラック文字盤によってヴィンテージテイストたっぷりのモデルがラインナップされ、人気を集めてきた。ここに追加されたのがブルー文字盤モデルである。彩度を抑えてシックな印象もあるブルーの文字盤には、ホワイトの各種針と蓄光塗料、印字が組み合わされ、モダンテイストに仕立て直されている点が注目だ。さらに紹介モデルでは、ミラネーゼブレスレットを新たに採用し、ドレッシーな一面も加えている。筆者はこの取り合わせに面白さを感じ、本作を選出した。
搭載ムーブメントのCal.H-51-Siは、オリジナルモデルにならった手巻き式である。また、約60時間のパワーリザーブ、シリコン製ヒゲゼンマイ採用による耐磁性能を備える。手で巻き上げるヴィンテージライクな時計との付き合い方を、現代的な実用性の中で楽しむことができる点は、本作の魅力である。
ハミルトン「ジャズマスター オープンハート オート」Ref.H32215142

自動巻き(Cal.H-10)。25石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約80時間。SSケース(直径36mm、厚さ10mm)。5気圧防水。16万6100円(税込み)。
最後に紹介するのが、人気かつ定番の「ジャズマスター オープンハート オート」の新作である。ジャズマスターコレクションには、クラシカルやコンサバティブなテイストを基調として、都会的なイメージを持つモデルが並んでいる。また、文字盤カラーが豊富で、オープンワークが施されたモデルがあることも特徴だ。ハミルトンブティックのショーケースをのぞけば、カラフルでさまざまなデザインのジャズマスターが並んでおり、人気のコレクションであることが分かる。このことを踏まえて、注目のモデルを選出した。
新作のRef.H32215142は、ネイビーをベースに、アベンチュリンから着想を得た金色の煌めきをちりばめた文字盤が目を引くモデルだ。テーマは、都会的な設計が放つ現代性と、無限の宇宙を表現した文字盤の融合である。従来モデルではサンレイ仕上げやグラデーションカラーなど、さまざまな表現が用いられてきたジャズマスターコレクションであるが、本作のような煌めきを加えたモデルは、少なくとも近年ではなかったように思う。文字盤の煌めきと呼応して、ゴールドカラーの針とインデックスが採用されており、文字盤からのぞき見える輪列とテンプにもゴールドカラーが見られる。リズミカルに往復するテンプが、ダイナミックな宇宙を想起させる仕上がりだ。
ピックアップしたのは、コンパクトな直径36mmのケースにブレスレットを組み合わせたモデルである。時計の仕上がり厚さは10mmと薄い仕立てで、エレガントさを生み出すのと同時に、着用感向上にも寄与する。また、文字盤カラーと合わせたネイビーストラップ仕様も用意されている。このほか、直径42mm、厚さ11.44mmのケースのブレスレット仕様、ストラップ仕様が用意され、幅広いユーザーの多様なニーズに合わせて選択可能となっている。この点からも、ジャズマスターが人気で、ハミルトン側もニーズに応えた企画を展開していることが伺える。



