ハミルトン「カーキ アビエーション パイロット パイオニア」はルックス、操作感ともにヴィンテージの雰囲気が詰まった1本

2025.11.04

ケースサイズ43mmの「カーキ アビエーション パイロット パイオニア」は、2021年秋にリリースされたモデルだ。第2次世界大戦中にハミルトンが生産したポケットウォッチを、デザインのインスピレーションソースとするのみならず、ムーブメントにユニタス(Cal.ETA 6498-1)を採用したこのモデルは、コアな愛好家の興味を大いに引きつけたが、今回インプレッションした新作はケース素材にブロンズを用い、ヴィンテージの雰囲気を一層強めている。

ハミルトン カーキ アビエーション パイロット パイオニア

竹石祐三:写真・文
Photographs & Text by Yuzo Takeishi
[2025年11月4日公開記事]


ヴィンテージ調デザインを特徴とするコレクションの新作

 アメリカ初の定期航空郵便がワシントン〜ニューヨーク間で開始されたのは1918年のこと。ハミルトンは、その公式時計に採用されたことを端緒として、1930年代にはアメリカの主要民間航空会社4社の公式時計を担当し、その後はニューヨーク〜サンフランシスコ間の大陸横断便公式タイムキーパーにも選出されている。「カーキ アビエーション」はこのような、ブランドと航空との深いつながりを現在に示す、アビエーションウォッチのコレクションである。

 今や、多彩なモデルを展開するに至った同コレクションの中でも、「カーキ アビエーション パイロット パイオニア」は、ハミルトンが航空と関わり続けた歴史にオマージュを捧げたシリーズだ。ラインナップはいずれもヴィンテージライクなデザインを特徴としており、ここに取り上げる43mmモデルの初作は2021年秋に発売。その第2弾モデルとして2025年10月にリリースされたのが、ブロンズケースの本作だ。

ハミルトン カーキ アビエーション パイロット パイオニア メカニカル ブロンズ

ハミルトン「カーキ アビエーション パイロット パイオニア メカニカル ブロンズ」Ref.H76709510
手巻き(Cal.ETA 6498-1)。17石。1万8000振動/時。パワーリザーブ約50時間。ブロンズ(直径43mm、厚さ13mm)。10気圧防水。23万9800円(税込み)。

搭載するのは時計ファン感涙のユニタス

 実のところ、43mmモデルの実物を手にしたのは、今回のインプレッションを依頼された日が初めて。偶然にもこの日は36mmケースのカーキ アビエーションを着けていたため、サイズの違いが大きかったのは事実なのだが、それでも目にした瞬間、思わず「デカっ!」と声が出てしまったほど、その存在感は圧倒的だった。それもそのはず、このモデルが搭載しているのは手巻き式のCal.ETA 6498-1。担当編集言うところの、「時計好きなら、みんな大好き!」なユニタスだ。

 ユニタスはもともと懐中時計用に設計されたムーブメントで、実用化されたのは1960年代。直径36.6mmのムーブメントは、腕時計に搭載するにはやや大きめであるものの、それでも今なお、誕生から50年以上が経ったこのムーブメントが使われるのは、精度や耐久性を含め、信頼性が高いからだろう。

 シースルー仕様のケースバックからは、このムーブメントが確認できる。直線で構成された受けのデザインによってソリッドな表情を見せるとともに、大きめのテンプがゆったりと揺り動く様子もまたいい。リュウズを巻く際も、カリカリと音を立てながら、主ゼンマイの確かな巻き上げの感触が得られるなど、古い時計に触れているような感覚が得られるのも、ユニタスのムーブメントを搭載した本作の醍醐味だろう。

ハミルトン カーキ アビエーション パイロット パイオニア

大きく開かれたシースルー仕様のケースバックからは、Cal.ETA 6498-1がその姿を見せる。

判読性を重視したミニマルで質感高いダイアル

 前述の通り、本作のデザインにおけるインスピレーションソースとなったのは、ハミルトンが第2次世界大戦中に製造したポケットウォッチ「モデル23」。この時計は当時、主にアメリカ軍の航空部隊が使用したワンプッシュクロノグラフで、時分針+6時位置のスモールセコンドの本作とは構成に若干の違いはあるものの、インデックスのフォントやカテドラル針、レイルウェイミニッツトラックなどのエレメントはモデル23を踏襲し、アビエーションウォッチらしい高い視認性を実現している。

 また、アビエーションウォッチは本来、太陽光による影響を受けにくいブラックダイアルを備えるのが一般的だ。しかし本作はホワイトダイアルではあるものの、ベージュに近い色味を帯び、さらに表面には微細な凹凸とマットな質感を組み合わせたグレインド仕上げのダイアルを採用しているため、太陽光の下でも時刻を確実に判読できる。むしろ、やや大きめのサイズと余計なエレメントがない、ごくシンプルなダイアルデザインであるため、視認性はかなり高い。

ハミルトン カーキ アビエーション パイロット パイオニア

第2次世界大戦中に使用されたモデル23のデザインを踏襲したダイアル。シンプルなレイアウトと、卵の殻を思わせるグレインド仕上げのダイアルにより、高い視認性を確保している。

 43mmのケースは、時計単体で見た時は大きく感じられたものの、実際に着けてみると手首の細い筆者でもそこまで大きさを感じることはなかった。むしろ、重衣料を着用することの多い秋冬シーズンでは、トップスとのバランスも取りやすいだろうし、逆に軽装になる春夏でも手首にアクセントを添えられると考えれば、このケースサイズはシーズンを問わずに使えそうだ。

 そして、ケース素材にブロンズを用いている点も、本作を魅力的にしている要素のひとつ。落ち着いた色合いは肌の色とも馴染みがよいうえに、ほどよいエレガンスを放ってくれる。しかも、ブロンズは経年変化が楽しめることでも知られる素材。残念ながら今回は2週間ほどのインプレッションであったため、経年変化を確認するには至らなかったが、長く使い続けることで、このヴィンテージライクな時計がどのような表情に移り変わっていくのかは、興味をそそられる。

ハミルトン カーキ アビエーション パイロット パイオニア

ケース素材は、使い込むことによって風合いが増すブロンズを採用。肌に直接触れるケースバックの一部にはチタンを用いるなど、ユーザーへの配慮も抜かりない。

 このヴィンテージライクなデザインを引き締めているのが、経年変化したような風合いを持つパティーナ調のカーフレザーストラップ。試用した時計が新品同様であったためストラップはまだ硬質だったが、こちらも使い込んでいくほどに柔らかくなって風合いを増し、ヴィンテージの雰囲気を強めていくことだろう。

ハミルトン カーキ アビエーション パイロット パイオニア

ストラップには使い込んだような質感を持たせたパティーナ調のカーフレザーを採用。ブロンズケースと同様、長く使うことでストラップのエイジングも楽しめるはずだ。

魅力はハミルトンお得意のヴィンテージ調デザイン

 本作をはじめ、1970年代にイギリス空軍が使用した「6BB」に着想を得た36mmケースのミリタリーウォッチや手巻き式のクロノグラフモデルなど、カーキ アビエーションは、往時の時計をアレンジしたデザインが絶妙だと感じる。しかも本作はユニタスのムーブメントを搭載して、ヴィンテージウォッチのような感触を持たせているのだから、コアなファンの好評を得ているのも納得がいく。

 正直、筆者は本作に対してノーマークで、同コレクションの中ではむしろ、手巻きのクロノグラフに引かれていたのだが、ヴィンテージ感たっぷりなデザインと機械式時計らしい使用感から、43mmケースの本作に心が傾きつつある。それほどまでに43mmケースのカーキ アビエーション パイロット パイオニアは、時計好きを魅了する要素が詰まっている。

ハミルトン カーキ アビエーション パイロット パイオニア

43mmのケースは、手首に載せてみると意外にも大きく感じない。ブロンズの落ち着いた色合いは肌に馴染みやすく、ケースのシルエットも現代的であるため、日常的にも使いやすい。



Contact info: ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン Tel.03-6254-7371


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