機械式腕時計の〝新しい楽しさ〟が詰まった「からくりの森 2025」は11月18日(火)まで!

FEATUREその他
2025.11.11

腕時計の新たな可能性を育み、さまざまな楽しさを体験する活動、「Seiko Seed」。この一環として、2025年11月5日(水)〜18日(火)まで、東京・南青山で展覧会「からくりの森 2025」が開催中だ。機械式腕時計の楽しさ、そして新たな可能性を求めてきたSeiko Seedならではのインスタレーションが並ぶ本展示会に行ってきたので、その様子をお届けしたい。

鶴岡智恵子(クロノス日本版):写真・文
Photographs & Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2025年11月11日公開記事]


東京・南青山で開催されている「からくりの森」に行こう

「からくりの森」は、2022年に誕生したSeiko Seedの活動の一環だ。Seiko Seedの“Seed”は「Seiko Experience Engineering and Design」の略で、「エンジニアリングとデザインで創り出した、腕時計のさまざまな楽しさを体験する活動」という意味が込められている。セイコーグループのスローガンである「時代とハートを動かすセイコー」を体験する活動を発信しており、Seiko Seed誕生のオープニングを飾る展覧会として開催されたのが、からくりの森であった。

 そんなからくりの森の第4弾が、東京・南青山のライトボックススタジオで開催中だ。

時計好きもあっと驚き、楽しめるようなインスタレーションが並ぶ「からくりの森」。会期中、時間が許すユーザーはぜひ立ち寄ってみてほしい。

イベント詳細

【イベント名】からくりの森 2025
【会期】2025年11月5日(水)〜18日(火)
【時間】11:00〜20:00(入場は19:45まで)
【場所】LIGHT BOX STUDIO
【住所】〒107-0062 東京都港区南青山5丁目‑16-7
【入場料】無料
【特設サイト】https://www.seiko-seed.com/karakurinomori2025/

青山骨董通りを少し外れた、静かな場所に立地するLIGHT BOX STUDIO。最寄は東京メトロ千代田線、銀座線、半蔵門線の表参道駅で、B1出口から向かおう。


ついつい見入ってしまうインスタレーションの数々

 からくりの森は、これまで機械式腕時計のメカニズムの魅力と新たな可能性を求めて、深化してきたという。第4回目となる今年は、機械式腕時計の“動き”と“音”からインスピレーションを得た作品の数々が展示されている。

 参加しているクリエイターは、セイコーウオッチのデザイナーとアーティストの小松宏誠(こまつ こうせい)、エンジニアリングデザイン集団のSpline Design Hub(スプラインデザインハブ)、そしてデザイナーの三好賢聖(みよし けんしょう)だ。それぞれが自身の専門分野から、機械式腕時計の魅力を検証、発想、表現している。プロデューサーはTRUNKの桐山登士樹(きりやま としき)である。

建物の外観からも見える「PUWANTS(プワンツ)」

小松宏誠と三好賢聖による作品。通りに面した窓際に設置されているため、会場に向かっている時に目に入り、気になった存在だ。

並べられたガラス製のオブジェと水泡を利用して、機械式ムーブメントの輪列を表現したインスタレーションの接写。

 エントランスを入ってすぐに設置されているのが、「PUWANTS(プワンツ)」だ。プワンツは2014年から始まったアート作品で、2024年までで、12種類が制作された。発生させた水中の気泡の浮力を利用して、ゆったりと動くインスタレーションで、今回は時間や腕時計がインスピレーション源。水槽の底から出てくる気泡によって、オブジェが回転したり、浮き沈みしたりする様を、時間の経過とともに幻想的に楽しめる作品となっている。

鶴岡的イチオシ。「時の軌跡」

大木大輔:写真
Photograph by Daisuke Ohki
セイコーウオッチ株式会社所属のデザイナー、杉田尚弥による作品。白く広大な砂上に特徴的なオブジェが取り付けられ、砂上にさまざまな円が描かれている。

使われているのはセイコーのベーシックな機械式ムーブメントで、トルクなども特に変わりはないという。

 個人的イチオシが、「時の軌跡」だ。機械式腕時計の針の動きを拡張し、砂の上に模様を描くことで、時間を可視化するというこの作品。セイコーで使われているベーシックな機械式ムーブメントが、中心部に大きな、そして弧を描いた白いオブジェを取り付けられて砂上にいくつか置かれており、まるで日本庭園を思わせるような空間だ。

 ユニークなのが、これらのオブジェが、時計の時・分の針が取り付けられる位置に、それぞれ配されていることだ。つまり、それぞれのオブジェは1時間あるいは1分で一周する。この時間に合わせて模様が徐々に描かれるようになっており、時間を目で見て楽しむことができるのだ。

 いくら機械式ムーブメントのトルクが強いとはいえ、こういった巨大なオブジェを、砂に絵を描きながら回転させるのは難しいと思われる。杉田にトルクが通常のものと異なるのかなど聞いたところ、「トルクは一緒です。このトルクで回転させられるオブジェの大きさや重さ、そして砂の重さなどを計算しました」という回答を得た。ちなみにオブジェはプラスティック製だ。

目を引く「螺旋の律動」

Spline Design Hubによる作品。会場内でも目を引く巨大なオブジェは、実は繊細に振動している。デザイナーらは「目に見えぬ時間の輪郭を静かに描き出しています」とコメントしている。

「螺旋の律動」は、主ゼンマイやヒゲゼンマイの存在から着想を得た作品だ。とりわけピンセットでテンプを持ち上げた際、釣り下げられたヒゲゼンマイを彷彿とさせるように、螺旋(らせん)を描く金属片はモーターによってかすかに振動している。デザイナーチームによると、主ゼンマイまたはヒゲゼンマイをそっと持ち上げた時、「時を駆動する力とリズムを宿す器のように思えた」のだという。なお、搭載されるモーターはこの作品のためにのみ使われるものとなる。

月齢を繰り返す「月のモビール」

大木大輔:写真
Photograph by Daisuke Ohki
小松宏誠による作品。回転によって満ち欠けする月の様相が面白く、ずっと眺めていたくなるインスタレーションであった。

 ゆっくりと回転する円盤が特徴的な「月のモビール」。その名の通り、光を移した円盤を回転させることで光と影の比率が変わり、月の満ち欠けを表した作品となっている。1分間に一回転となっており、腕時計の針が時を刻むようにも見えることがポイントだ。

ルーペでのぞく世界「時の交わり」

大木大輔:写真
Photograph by Daisuke Ohki
セイコーウオッチ株式会社所属のデザイナー、檜林勇吾による作品。ルーペでのぞいてようやく見える世界であったため、スマートフォンでの撮影が難しかった。

まるで「やあ」なんて声が聞こえてきそうな、人形同士の交わり。しかし1分間で一周するため、その交わりはすぐに終わってしまう。もっとも1分待てば、またこの交流が始まる。

 ふたつのムーブメントと、そこに取り付けられた秒針が回るこのインスタレーション。よくよく見ると、秒針の先端に小さな人形が載せられており、並べられたふたつのムーブメントの針が一点ですれ違う時、それぞれの人形同士が、あたかも挨拶したり、ボールや壁をタッチしたりするかのような光景を観賞することができるのだ。なお、動きを干渉しないために、オブジェ同士は実際には接していない。

 本作の針・人形はアルミ製で、非常に長いリーチが取られているうえに人形が搭載されるが、こちらもトルクは通常のものと変わらないという。力強い機械式腕時計だからこそできる、ユニークなインスタレーションである。

機械式腕時計で音楽を!? 「時のムーブメント」

大木大輔:写真
Photograph by Daisuke Ohki
三好賢聖による作品。機械式腕時計の「音」好きにはたまらないインスタレーションだ。

「時のムーブメント」では、機械式ムーブメントが日々刻む、かすかな機械音を採取し、組み合わせることで、ひとつの音楽とした作品である。セイコーの毎秒6振動、8振動、10振動のテンプが刻むチクタク音、そしてローターの回転音を素材に、3つの楽章が実演される。機械音を楽しむことは珍しくないが、音楽にしてしまうというのは、さすがSeiko Seedの試みである。


機械式時計好きも、そうでないユーザーも

 Seiko Seedの一環として開催されている、「からくりの森 2025」を取材した。冒頭でも紹介した通り、本展示会はこれまで「機械式腕時計のメカニズムの魅力と新たな可能性」を求めてきており、今回の展示品もまた、そんなコンセプトを体現している。

 一方で「機械式腕時計好きでないと楽しめない」などといったことはない。数々のインスタレーションは腕時計の知識を持たずとも、目でみたり、音で聴いたりして楽しめるものばかりだ。なお、2階はアーカイブ展となっており、これまでセイコーが手掛けてきた製品や「専用すぎる腕時計展」という、Seiko Seedで開催されてきた展示品などを、什器越しに観賞することができる。

 機械式腕時計好きも、そうではないユーザーも、会期中に時間が許せば、からくりの森に立ち寄ることを強くお勧めしたい。


Contact info: セイコーウオッチお客様相談室 Tel.0120-061-012


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