生粋の実用時計として誕生したダイバーズウォッチだが、今や高級腕時計にとっても一大ジャンルとなっている。多くの時計愛好家を虜にする高級ダイバーズウォッチより、100万円以上という条件を設け、5本のモデルを紹介する。
Text by Tsubasa Nojima
[2025年12月29日公開記事]
ハイスペックと個性的なデザインが時計愛好家を虜にする!
軍や職業ダイバーに向けて開発されたダイバーズウォッチは、もともと専門的な機材であった。その後、マリンスポーツの流行に伴い一般にも普及したが、実際のレジャーシーンで使用されることを想定してか、当初はややカジュアルまたはツールウォッチ然とした印象のモデルが多かった。
そんなダイバーズウォッチもやがて、高級腕時計ブームの盛り上がりとともに徐々に高級化への道を歩み始める。現在では、凝った仕上げの外装やハイスペックな自社製ムーブメントを採用した高級機が多くのブランドから発売され、高級腕時計の一大ジャンルにまで拡大した。
過酷な環境での使用を想定したダイバーズウォッチと、職人技を駆使した高級腕時計は、一見相いれない組み合わせにも思える。しかし、ドレスコードの解釈に多様化が進んだ現代においては、ビジネススーツにダイバーズウォッチを合わせることも珍しくはなく、むしろスポーティーなデザインと優れた機能性を楽しむことができるとして注目を集めている。
そこで今回は、100万円以上の高級ダイバーズウォッチより、おすすめ5選を紹介する。ダイバーズウォッチは、必ずしも夏の海辺だけで活躍するものではないのだ。
ブランパン「フィフティ ファゾムス オートマティック」Ref.5007 1130 71S

モダンダイバーズウォッチの祖と言われる「フィフティ ファゾムス」。2025年には待望の小径化を果たしたが、防水性は変わらず300mを誇る。自動巻き(Cal.1150)。28石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約100時間。SSケース(直径38.2mm、厚さ12mm)。300m防水。270万6000円(税込み)。(問)ブランパン ブティック 銀座 Tel.03-6254-7233
1953年に発表され、現代のダイバーズウォッチの礎を築いたブランパンの名作が、「フィフティ ファゾムス」である。1950年よりブランパンCEOを務めたジャン=ジャック・フィスターがダイビング中に遭難しかけ、機能性の高いダイバーズウォッチの必要性に気付いたことをきっかけに開発されたフィフティ ファゾムスには、押し込まなければ回転させることのできないロック機構付きの潜水時間計測用のベゼルと、100mの防水性、耐磁性を備えていた。
フィフティ ファゾムスは、現代でもブランパンを代表する人気コレクションのひとつだ。しかし、2007年から販売されているレギュラーモデルの大ぶりな45mmケースは、万人向きとは言い難かった。そのような中、同社は2024年遂に42mmケースモデルを発表し、2025年にはさらに小径な38mmケースモデルをコレクションに加え、幅広い好みを持つ時計愛好家たちに魅力的な選択肢を与えたのだ。
サイズが異なっていても基本的なデザインは共通しており、ここで紹介する直径38mmケースのモデルも、初代モデルの意匠を受け継ぐレトロなデザインを特徴とする。サンバースト仕上げのダイアルに、アラビア数字とトライアングルのインデックスを組み合わせることで上品さとスポーティさを両立させ、サファイアクリスタルに覆われたベゼルが艶やかな煌めきをもたらす。
搭載するムーブメントは、45mm、42mmケースモデルと異なる薄型小径のCal.1150だ。耐磁性に優れたシリコン製ヒゲゼンマイや約100時間ものロングパワーリザーブなど、高いスペックを備えている。
オメガ「シーマスター プラネットオーシャン」Ref.217.30.42.21.01.00

2025年にモデルチェンジを果たした「シーマスター プラネットオーシャン」。ケースデザインを大きく変えた一方、アイコニックなダイアルがこれまでのモデルとの連続性を感じさせる。自動巻き(Cal.8912)。39石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS×Tiケース(直径42mm、厚さ13.79mm)。600m防水。134万2000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087
2025年に第4世代へとアップデートを果たした、オメガの「シーマスター プラネットオーシャン」。プラネットオーシャンは2005年に誕生した600m防水のハイスペックなダイバーズウォッチであり、2008年に公開された映画作品『007 慰めの報酬』では、“ボンドウォッチ”として活躍したことでも知られている。
今回のアップデートで大きく進化を遂げたのが、ケースデザインだ。これまでのモデルではツイストしたラグと10時位置のヘリウムエスケープバルブを備えていたが、今作では直線基調のシャープなケースデザインへと変更され、ヘリウムエスケープバルブは廃止された。
ケース構造も見直され、「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ」の開発で培った技術を生かし、ケースバックとインナーリングにはグレード5チタンを採用している。600m防水を保ったまま前作から2mm以上の薄型化を果たし、ケース厚が13.79mmに抑えられていることも特徴だ。
ステンレススティールブレスレットは、ケース同様シャープなデザインに変更され、中央のリンクをポリッシュ仕上げとすることで、高級腕時計らしい華やかさを添えている。
ムーブメントは、自動巻きのCal.8912を搭載。コーアクシャル脱進機とシリコン製ヒゲゼンマイを備え、METASによるマスター クロノメーター認定を取得した高い実用性が魅力だ。
ブライトリング「スーパーオーシャン ヘリテージ B31 オートマチック 44」Ref.UB3112161C1S1

1957年に誕生した、初代「スーパーオーシャン」のデザインを受け継ぐクラシカルなダイバーズウォッチ。自社製の自動巻きムーブメントを搭載している。自動巻き(Cal.B31)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約78時間。SS×18KRGケース(直径44mm、厚さ12.17mm)。200m防水。117万7000円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707
「スーパーオーシャン ヘリテージ」は、1957年に発表された「スーパーオーシャン Ref.1004」のデザインを受け継いだコレクションだ。ダイバーズウォッチ黎明期を感じさせるクラシカルなデザインと、現代の技術を用いた優れたスペックが魅力である。
深いブルーのダイアルにはサンレイ仕上げが施され、長めの砲弾型インデックスとともに、ドレッシーな雰囲気を醸し出す。12時位置のインデックスに重なる大型のドットと矢印型の時針は、オリジナルを想起させるデザインだ。インデックスと針には蓄光塗料が塗布され、暗い海中でも時刻を読み取ることができる。
18Kレッドゴールド製のベゼルには、光沢感と耐傷性を備えたブルーのセラミックス製インサートが取り付けられている。ステンレススティール製ケースにはねじ込み式のリュウズが採用され、200mの防水性を発揮する。すっきりとしたラグやリュウズガードの無いサイドビューなど、スポーティーさを抑えたデザインは、幅広いシーンで着用しやすい。
ストラップは、メッシュパターンが施されたラバー製。しなやかな肌触りとフォールディングバックルによって、快適に装着することができる。
本作には、約78時間のパワーリザーブを誇るブライトリングの自社製3針自動巻きムーブメント、Cal.B31が搭載されている。コート・ド・ジュネーブを施したブリッジや地板のペルラージュをシースルーバックから鑑賞することが可能だ。
ロレックス「オイスター パーペチュアル サブマリーナー」Ref.124060

自動巻き(Cal.3230)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm)。300m防水。
ブランパンのフィフティ ファゾムスと並び、ダイバーズウォッチの歴史を作り上げてきたロレックスの「オイスター パーペチュアル サブマリーナー」。1953年の誕生以降、大きくデザインを変えることなくアップデートを繰り返し、高級ダイバーズウォッチとしての完成度を高めてきた。
現行モデルは直径41mmと、それまでのモデルに比べてやや大きめのケースを採用している。しかし、ラグ幅を拡大しラグそのものをシャープに絞るなど、細部に微調整を加え、プロポーションは前作の40mmケースに比べてスタイリッシュに改められた。
ブラックのダイアルには、ドット、バー、トライアングルを組み合わせたインデックスと、象徴的な時分針が組み合わされている。インデックスと針には暗所でブルーに発光するクロマライトが塗布され、昼夜を問わず高い視認性を発揮する。逆回転防止機構が備わったベゼルには、高い硬度を誇るセラクロム製のインサートが採用され、艶やかな質感を楽しむことができる。
ミドルケースとブレスレットは、耐蝕性に優れ白く輝くオイスタースチール製だ。三重の防水システムであるトリプロックリュウズと堅牢なねじ込み式ケースバックによって、300mの防水性を発揮する。
ムーブメントは、自動巻きのCal.3230を搭載する。日差-2~+2秒の高精度やブルー パラクロム・ヘアスプリングによる優れた耐磁性、パラフレックス ショック・アブソーバがもたらす耐衝撃性、約70時間のパワーリザーブなど、実用性を突き詰めたムーブメントである。
ゼニス「デファイ エクストリーム ダイバー」Ref.95.9600.3620/21.I300

ヘリウムエスケープバルブを備え、600m防水を誇る本格的なダイバーズウォッチ。「デファイ」らしいエッジの効いたケースラインが魅力だ。自動巻き(エル・プリメロ Cal.3620 SC)。26石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。Tiケース(直径42.5mm、厚さ15.5mm)。600m防水。159万2800円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861
1969年に登場したゼニス「デファイ」。本作は、当時そのコレクションにラインナップしていたダイバーズウォッチ、「デファイ ダイバー」に着想を得たモデルだ。直線基調のケースラインやベゼルにあしらわれた12角形など、オリジナルを想起させるデザインを取り入れつつ、現行モデルに相応しいモダンなデザインに仕上げられている。
サンレイ仕上げのブラックダイアルにあしらわれているのは、ダブルZモチーフのパターンだ。太くはっきりとしたインデックスと針には、蓄光塗料がたっぷりと塗布され、抜群の視認性を発揮する。3時位置には日付表示を配し、日常使いでの利便性も確保。
12角形のベゼルは、外側にセラミックス製の逆回転防止のリングを組み合わせた立体的な構造を採用している。ヘアラインとポリッシュに磨き分けられたケースは、耐蝕性に優れ軽量なチタン製。3時位置にはシャープなリュウズガードがネジによって固定され、9時位置には飽和潜水で使用するヘリウムエスケープバルブが搭載されている。
ベルトは、チタン製ブレスレットに加えてラバーストラップとファブリックストラップが付属する。いずれもケースとの一体感を高めたデザインを採用し、ラグ裏のボタンを操作することで簡単に交換することのできるインターチェンジャブルシステムを搭載している。
シースルーバックから覗くのは、3針仕様のエル・プリメロ Cal.3620 SC。毎秒10振動のハイビートや約60時間のパワーリザーブ、シリコン製脱進機による優れた耐磁性を誇る。



