110万円のG-SHOCK! 30周年を祝すようにきらめく「MRG-B2100HR」を着用レビュー

2026.10.13

時計ライターの佐藤しんいちが、G-SHOCK最上位ライン「MR-G」の誕生30周年を記念する「MR-G MRG-B2100HR」を着用レビューする。本作は、箔アーティストの裕人礫翔(ひろと らくしょう)が手作業で文字盤にプラチナの箔押しを行い、カシオがベゼルやブレスレットに、構造色を生み出す微細なレーザー加工を施して仕上げている点が特徴である。プラチナ箔の輝きと呼応するように、ベゼルやブレスレットはダイナミックに色調を変えながら煌めく、存在感のある仕上がりだ。

G-SHOCK「MR-G MRG-B2100HR」

G-SHOCK「MR-G MRG-B2100HR」Ref.MRG-B2100HR-1AJR
タフソーラー。フル充電時約18カ月稼働(パワーセービング時)。Tiケース(直径44.4mm、厚さ13.6mm)。20気圧防水。世界限定800本。110万円(税込み)。2026年11月発売予定。
佐藤しんいち:文・写真
Text & Photographs by Shin-ichi Sato
[2026年10月13日公開記事]


G-SHOCKのMR-G30周年記念モデルが登場

 カシオは、G-SHOCKの最上位ライン「MR-G」の誕生30周年を記念する「MRG-B2100HR」を、2026年11月に発売する。箔アーティストの裕人礫翔(ひろと らくしょう)を迎え、彼自身が手作業でプラチナ箔を施した文字盤と、構造色による鮮やかな色彩を生み出すベゼルおよびブレスレットを組み合わせたモデルだ。ベースモデルは八角形のベゼルを備えるMRG-B2100であり、コバリオンやDAT55Gなどの高機能素材と、耐衝撃性を確保するマルチガードストラクチャーを継承している。本作は世界限定800本で、価格は110万円(税込み)となる。

 このMRG-B2100HRをインプレッションする機会に恵まれた時計ライター佐藤しんいちが、構造色とは何か? という点から本作の完成度に至るまでを、つぶさに解説してゆく。

箔アーティストとともに作り出すG-SHOCK「MR-G」30周年記念モデル

 1996年に誕生したMR-Gは、2026年に30周年を迎える。今回の記念モデルは、MR-Gが追求してきた“時を超える強さと美しさ”を、箔の伝統技法と、カシオの先端技術によって表現するものだ。文字盤には、伝統的な手仕事によるプラチナ箔を採用。その輝きをMR-Gが受け継いできた系譜になぞらえる一方、ベゼルとブレスレットには、角度によって表情を変える構造色を取り入れ、未来への挑戦を表現している。

 本作でタッグを組むのは箔アーティストの裕人礫翔である。裕人礫翔の創作の原点は西陣織を彩る箔工芸にあり、箔を和紙に貼り、細く裁断して帯などに織り込む「引箔」のための加工技術を、父である西山治作のもとで学んだ経歴を持つ。そして現在では、箔を用いる技術や表現技法を、アートやインテリアの世界へと広げている。今般のコラボレーションでは、内外面に箔を施したオリジナル作品「悠(はるか)」を制作し、裕人礫翔とMR-Gの世界観を表現している。

手作業のプラチナ箔で彩る組子格子状の文字盤

 本作の見どころのひとつは、文字盤の組子格子状のパーツに施されたプラチナ箔だ。組子格子上のパーツは規則正しく凹凸を繰り返す構造で、造形のエッジが立ち、引き締まったデザインである。この組子格子は、初代G-SHOCK「GW-5000C」の文字盤デザインから着想を得たものに筆者は感じられた。G-SHOCKの伝統を継承する、アイコニックなデザインである。

G-SHOCK「MR-G MRG-B2100HR」

組子格子状のテクスチャーを持つ文字盤には、裕人礫翔によるプラチナ箔の箔押しが施される。日光の下ではキラキラと輝き、存在感がある。暗めの屋内ではマットな表情にも見え、落ち着いた印象へと変わる。

 そして本作では、この凸部には裕人礫翔が一点ずつ箔押しを行っている。用いられているのはプラチナ箔を粉末状にした砂子であり、細かな輝きが組子格子を彩る。凸部はプラチナによる明るい反射があり、凹部は影が生まれることで陰影が際立ち、立体感のある仕上がりだ。箔押しはすべて手作業によるもののため、ひとつひとつ表情が異なり、特別な本作を唯一無二の魅力を持つものへと仕上げている点が魅力である。

超短パルスレーザーが生み出す構造色の色彩

 文字盤には伝統技術を継承した裕人礫翔による箔押しを施すのに対し、ベゼルとブレスレットには先進の技術が注がれている。採用されたのは、構造色を生み出す微細なレーザー加工技術だ。

 構造色について説明する前に、光と色の関係と、一般的な色素による着色から説明しよう。人の目が感じ取る光の色は波長によって異なり、可視光では波長の長い側から赤、橙、黄、緑、青、紫へと変化する。紫よりもさらに波長が短くなると、目には見えない紫外線となる。白色光にはさまざまな波長の光が含まれており、そのうちどの波長の光が、どの程度目に届くかによって、物の色が決まる。

 色素による着色では、一部の波長の光を色素が吸収し、残った光が目に届くことで色が見える。例えば、赤い色素は青や緑の光を吸収し、赤い光を多く反射、あるいは透過する。これに対して構造色は、微細な構造によって光の進み方や重なり方を変え、特定の波長の光が強く目に届くことで生まれる色だ。身近な例が、CDの記録面に見られる虹色の輝きである。データを記録する微細な凹凸が並ぶトラックは、規則的な間隔で配置されている。この並びが回折格子として働き、光を波長ごとに異なる方向へ送り出すため、見る方向によって色が変わる構造色を生み出す。

G-SHOCK「MR-G MRG-B2100HR」

赤が強く出たショットと青が強く出たショット。立っている位置は同じで、手首やカメラの角度を調整することで、ここまで大きく色調が変化する。G-SHOCKではさまざまなカラーリングが提案されてきたためか、赤と青という全く異なるカラーでもしっくりくる点が面白い。

 本作のベゼルとブレスレットは、このような構造色を利用している点が特徴だ。超短パルスレーザーで表面に微細な加工を施し、光の当たり方や見る角度によって変化する色彩を生み出す。そしてこれが、手首を動かすことで表情を大きく変えるデザインとなり、プラチナ箔を用いた裕人礫翔の伝統技法と呼応している。

微細加工だけではない手の込んだ外装設計

 本作の外装は、“金属製外装に超短パルスレーザーによる微細な加工を施したもの”とだけ評するのは不十分だ。カシオがこれまでに培ってきた外装設計や加工技術が盛り込まれているのだ。

 本作は、従来のMR-Gと同様に外装の素材は部位によって使い分けられており、ベゼルのトップ部分には純チタンの約4倍の硬度でプラチナ同等の輝きを持つコバルトクロム合金のコバリオン、ブレスレットには純チタンの約3倍の硬度を備えるDAT55Gを採用。ケースや裏蓋、ボタン、リュウズには64チタンを用いている。

 これらの素材で作られた各部品にレーザーによる微細な加工を施すとしても、素材の表面が平滑でないと微細な加工が埋もれてしまう。そのため本作では、成形したパーツを均一にポリッシュし、そこに構造色を生み出す微細加工を行っている。さらにその上から、耐摩耗性を高めるDLCコーティングを施して、本作特有の表情を長く保ちつつ、構造色の色彩を際立たせるダークな色調に仕上げている。

G-SHOCK「MR-G MRG-B2100HR」

ポリッシュを施したコバリオン製ベゼルトップと、レーザー加工後、DLCコーティング後の比較。レーザーによる微細加工により、橙、緑、青、紫と多彩に変化する構造色が見事に生まれている。なお、本作では構造色が注目されがちだが、広い面に均一にポリッシュを施すカシオの技術力にも注目。

 また、外装のパーツ構成も従来モデル同様に細分化されている。細分化して、それぞれに仕上げを施すことで、複雑なケース形状、ブレスレット形状でありながら、キレのある造形を実現する。ブレスレットリンクのディンプル部も別体パーツとなっており、リンク全体には微細加工で構造色を生み出しているのに対し、ディンプル部には加工を施さずに素材本来の表情を残すことで、造形のコントラストを生み出している点が面白い。

 さらに、マルチガードストラクチャーも引き続き採用される。一般的なG-SHOCKでは外装とムーブメントの間に緩衝材を挟んで耐衝撃性を確保するが、MR-G特有のパーツの細分化によって、緩衝材のためのスペースが確保できない。そこでマルチガードストラクチャーでは、ケースにT字バーと板バネを組み合わせたサスペンションを配置して耐衝撃性能を確保する。

精緻な造形、構造色特有の煌めき、軽快な着用感と、本作の魅力が融合している。

 実際に手に取ると、本作をはじめとするMR-Gシリーズの完成度の高さを改めて実感する。筆者は以前にも「MRG-B2100」シリーズの実物を見ていたが、じっくりと観察すると、整った面や鋭いエッジが目を引く。各部品の精緻な組み付けから感じられる剛性感も印象的だ。

G-SHOCK「MR-G MRG-B2100HR」

オフホワイトのカットソーとの組み合わせ。もっとスポーティーでも、アメカジ系でも、ビジネススタイルにもマッチする懐の深さが、G-SHOCKのアナログモデルの魅力である。

 そして、鮮やかな構造色が強いインパクトを生み出している。写真で伝えられるように奮闘したが、写真ではコントラストが強く出る傾向で、実際には鮮やかな反射と、落ち着いた弱い反射まで“ダイナミックレンジが広い”印象だった。このような濃淡が奥行き感や表情を生み出しており、「実物を見てほしい」と言いたくなる仕上がりである。室内では構造色が落ち着きつつ、時折見せるキラリとした反射にハッとする場面もあった。

 本作では微細加工後にDLCコーティングを施しているため、コーティングが微細な凹凸を埋めてしまったり、表情を鈍らせたりするのではないか? と考えたりもしたが、それは不要な心配であった。狙った外観に仕上げるDLCコーティング条件の調整に、カシオのノウハウが盛り込まれているのではなかろうか。

 着用してみると、外装の多くの部分にチタン系の素材を用いているため、ブレスレット調整状態で筆者実測115gと非常に軽量で軽快である。メタリックな質感から重厚なイメージがありつつ、ラバー製の「DW-5600」(筆者実測55g)を愛用する筆者が着け替えても違和感がなかった。重量バランスの良さも効いているのだろう。この軽快さは、デイリーユースやアクティブなシーンにマッチする大きな魅力である。

 筆者の手首周長は約18cmと、G-SHOCKを着用するうえで有利な体格であることは考慮すべきだが、ラグ部での浮きはなく、フィット感に優れて好印象であった。ただし、ラグ部分のブレスレットの可動域は広くないので、筆者よりも手首の細いユーザーでは要チェックポイントとなる。一方で、軽量な仕立てのため、浮きが生じても良好なフィット感が得られる余地もある。

G-SHOCK「MR-G MRG-B2100HR」

手首周長約18cmの筆者ではラグ部分の浮きが生じずにフィットする。なお、ケース側から1コマ目の可動域が狭いが、2コマ目は直角まで可動する。筆者の手首では2コマ目がわずかに開いているため、もう少し細い手首でも収まりがよさそうだ。

 着用した感想をまとめると、精緻な造形やハイレベルな仕上げ、構造色特有の煌めき、軽快な着用感といった、本作の魅力が押し寄せてくるかのようなインパクトのある仕上がりであった。このようなインパクトを感じ取るのは、それぞれの完成度が高く、しかも、それらがうまく融合しているためではないだろうか。

ハイエンドなG-SHOCKらしい充実した機能

 機能面では、ハイエンドなG-SHOCKらしい充実したものとなっている。タフソーラーによる光発電を備え、マルチバンド6の標準電波受信機能による自動時刻修正に対応する。さらに、Bluetoothによるスマートフォンリンクに対応し、専用アプリ「CASIO WATCHES」上での時刻修正や時計の設定に加え、受信・発電状況などの確認、時計の動作を診断するセルフチェックを利用できる。

 さらに、日付と曜日表示、暗所で文字盤を照らすLEDライト、針位置自動補正機能を搭載する。フル充電後は、発電がなくても約5カ月にわたって機能を使用でき、パワーセービング状態で約18カ月稼働する。実際に運用してみると、こまめにパワーセービングに入っているのか、着用しようと手に取ると秒針が動き出すことがあった。節電と実用性の両立がうまいと感じるポイントである。


記念碑的モデルに留まらない完成度の高さ

 本作はG-SHOCK MR-G誕生30周年記念モデルとして世界限定800本でリリースされる。価格も110万円と、従来のG-SHOCKやMR-Gの中でも特に高額である。そのため、記念碑的なモデルとして捉えられるかもしれないが、そうではないと筆者は感じた。

 スリムで視認性が高く、完成度が高いG-SHOCKのアナログモデルをベースとして、コバリオンやDAT55Gなどを採用した分割構造のケースとブレスレットを作り、そこに優れた仕上げを施している。そしてここまでが、非常に贅沢な本作の“下地”である。

 ここに、固有の表情を生み出す箔押しを盛り込んだ文字盤に加え、超短パルスレーザーでこれまでにない構造色の煌めきをケースに与えた。その煌めきは時には派手に、時には落ち着いた印象となり、幅広いシーンに取り入れやすいものであった。よって、デザインの完成度が高く、実用的でもある。

 本作を手にできるのは限られた人数のオーナーのみとなるが、カシオはきっと、この超短パルスレーザーによって構造色を生み出すアプローチをレギュラーモデルのワンポイントとして取り入れてくれるのではないだろうか。インプレッション中は、そんな期待も感じられる仕上がりであった。



Contact info:カシオ計算機お客様相談室 Tel.03-5334-4869


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