INSIDE CHANEL ─〝完璧〟を紡ぐ人々─ DAY.1

2018.04.13

ムッシュー ドゥ シャネル
2018年新作の限定モデル。稀少なブラックエナメル文字盤の中心に、シャネルのシンボルであるライオンをあしらっている。また、インデックスの数字と目盛りもゴールドカラーに変更されている。手巻き(キャリバー 1.)。30石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約3日間。18Kベージュゴールド(直径40mm)。世界限定20本。予価1020万円。今秋発売予定。

 ゴティエの工房には、焼き入れ同様、さまざまなテクニックが残っている。歯車の軸であるホゾは、ルーラージュという手法で硬さを与えている。焼き入れした素材を押しつぶしながら磨くことで、より硬さを持たせているわけだ。また、使われるネジも、完全に自製だ。棒材を削り出し、ネジの溝を切り、焼き入れして長持ちするネジに仕上げていく。当然、ネジの頭は、高級時計にふさわしく鏡面仕上げだ。現在、スイスやドイツにはさまざまな高級時計の工房がある。しかし、ゴティエのように、ネジを内製するメーカーはいくつもない。線材を叩いてネジに加工するメーカーはあるが、棒材から切削するメーカーとなればさらに少ない。

 「シャネルの投資は、会社が大きくなることを助けてくれた」とゴティエも認めるように、工房には最新の工作機械が並んでいる。しかし、と彼は語る。「設計など、ほかの部分は進歩したが、時計を加工する機械自体は実は劇的には進歩していない。100年前の時計師たちは、最新の機械なしでも優れた時計を製造した」。

 では何がゴティエの作る部品を他とは違うものにしているのか。「私たちは、削るためのツールを毎年更新している。また、機械の温度が上がると加工精度が変わるため、室温も一定に保っている。しかし、それ以上に重要なのはチャレンジを怠らないことだ。私たちは、付加価値を与えるため、不可能を可能にしたい」。

シャネル初の自社製ムーブメント、キャリバー 1.。240°という角度で動く分レトログラードと、それに完全に同期したジャンピングアワー機構を備える。シャネルの完璧主義を思わせるのが、ふたつの香箱と2番車、3番車を固定する穴石の直径。軸の太さが違うにもかかわらず、外径が同じものを特注で製作させた。
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