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空中戦: IWCとブライトリングのパイロットウォッチ(前編)(1/1)

Text by イェンス・コッホ

長らくIWCのトップを務めたジョージ・カーンがリシュモンを離れ、ブライトリングのCEOに着任した際に、航空関係の時計の覇権を争ったふたつのトップブランドの間に喝采のようなものが巻き起こったと思った人もいるだろう。
ここでは、このふたつのブランドがどのようにパイロットウォッチの歴史と進化に、自らの足跡を刻み込んできたかを深く掘り下げてみたい。前後編の2回に分けてお届けする。

 ダイバーズウォッチと違い、パイロットウォッチにはこれといった基準はない。どのような環境においても確保される視認性の良さがまず重要視され、そこにデザイン要素が加わり、どのような時計になるかが決まるのである。パイロットウォッチとは、パイロットウォッチに見えるもの、と言うこともできる。ただ、まさにそのデザインこそがIWCとブライトリングの異なったアプローチを顕著に表しており、また両方のブランドとも自分たちの独自のデザインそして長い伝統と歴史に根差しているのである。IWCの場合は、A.ランゲ&ゾーネやその他のドイツ空軍へ供給をしてきた会社のように、自分たちの1940年初出の大型のパイロットウォッチによるところが大きい。

アイコンモデル:(左)IWCは1940年から精密な懐中時計のムーブメントを搭載した「ビッグ・パイロット・ウォッチ」を提供してきた。(右)ブライトリングは回転式ベゼルとクロノグラフ搭載のナビタイマーを1952年に発表。両者とも、もともとはパイロット用としてデザインされている。

 12時位置にふたつのドットを伴う三角形や、装飾のない数字(プレーンでシンプルなバーが数字の1には採用されている)、ダガー型の時分針など典型的なミリタリー要素が組み込まれている。これらの要素は現在のIWCが作る全てのパイロットウォッチに見ることができる。元のモデル(1949年にロイヤルエアフォースの為に作られたパイロットウォッチ「マーク11」)は異なった数字や針を備えていたマークXVIIIでさえ、この様式を踏襲しているのである。唯一の例外はサンテグジュペリと「星の王子さま」に捧げられたモデルで、IWCは装飾性のある数字と優雅なブルーとブラウンの文字盤、シルバーカラーの針とポリッシュ仕上げのベゼルを採用している。
 
 ただIWCは、シンプルな手巻きからスプリットセコンド搭載もしくは非搭載のクロノグラフ、ワールドタイマー、パーペチュアルカレンダーに至るまで実に多くの機能を搭載したモデルを発表している。自身のアーカイブにあった限られた生産本数の「ビッグ・パイロット・ヘリテージ・ウォッチ 55」に連なるものとして、直径55㎜のケースまでも再現しているのである。オリジナルのデザインをほとんど忠実に再現したベージュの蓄光塗料やマット仕上げのケースが採用され、ただしこれにはスモールセコンドが搭載されている(オリジナルはセンターセコンドであった)。

 IWCは、その現代的側面も垣間見せる。このブランドの「トップガン」モデルは、マット仕上げのブラックセラミックケースにテキスタイル製ストラップが合わせられた現代的なミリタリー様式を備える一方、伝統的な要素も踏襲している。このため、これらのモデルはIWCのものであると非常に分かりやすい。「トップガン・ミラマー」のコレクションは、他にも興味深いデザインのバリエーションを見せてくれる。抑えた色味のグリーンの文字盤、ベージュの蓄光塗料、赤のアワーマーカー、ポリッシュ仕上げのセラミックケースにオリーブグリーンのテキスタイル製ストラップが合わされることによって、モダンでレトロな要素がミックスされた魅力を創りだしている。

現代のクラシック:ブライトリングはナビタイマーを築き上げ、そのデザイン要素は1962年以来ほとんど変わっていない。自社製自動巻きキャリバー搭載。
IWCはここ数年、自身のビッグ・パイロットウォッチに対して、とても慎重に変更を加えてきた。約7日間パワーリザーブの最新の自動巻きムーブメントが搭載されている。

 ブライトリングもそのパイロットウォッチの伝統は非常に長い。現在のアイコンともいえるナビタイマーは、明るい色の文字盤が搭載された1952年に発表されたものから、まるで数年しか経っていないように見える。これらの特徴的な回転式ベゼルを備えたクロノグラフは、数字とマーカーの両方のタイプが用意されているが、そのどちらもがすぐにナビタイマーだと認識できる。伝統的にはブラックレザーに明るいカラーのステッチが入ったものか、オフセットリンクがついた7列構成のメタルブレスレットが選べるようになっている。
 ブライトリングはこのアイコンモデルに直径43㎜と46㎜を用意。そして、クロノグラフ、第2時間帯、ワールドタイマー、フルカレンダー、パーペチュアルカレンダーなどの機能を提供している。また、1952年にパイロット達の機関"AOPA"(Aircraft Owners and Pilots Associationの略)の為に作られた最初のモデルのリバイバルや優雅なブラウンまたはブルー文字盤からブラックスティール(ブラックの針とマーカー、マットブラックコーティングのケースにブラックラバーストラップ)の現代的な外観まで、幅広い限定モデルの展開もデザインを多彩にしている。

創世記へのオマージュとして:2016年限定モデル。ふたつのブランドともに最初のパイロットウォッチのアイコニックモデルを復活させた。上の写真、IWCはオリジナルと同じ直径55mm、限定100本の「ビッグ・ヘリテージ・パイロットウォッチ55」。下の写真はAOPAロゴ入り限定500本、ブライトリング「ナビタイマー」。

 ブライトリングは、トレンドに対しても非常に強く反応するマニュファクチュールのひとつでもあり、ほとんど毎年市場に新作を投入している。これはブライトリングのパイロットウォッチで、中でも「クロノマット」と「アベンジャー」のコレクションにおいて顕著である。この2モデルは両方とも回転式ベゼルとアプライドマーカーを採用している。
 「クロノマット」はその特徴的なディテールを持つ文字盤上の数字と丸いリュウズ、もともとはポリッシュ仕上げのマーカーが採用されているが、マーカーはもともと文字盤上に四角形で置かれており、これによってブライトリングのパイロットウォッチはエレガントかつモダンな要素を与えられていた。そのうえ、クロノマットには他とは異なる数字が配されたベゼルとマーカーが採用されている。ブラックまたはアンスラサイトカラーのマーカーや針が搭載されたブラックコーティングモデルには、現代的なスポーティさが感じられる。「エアボーン」モデルはより実用的な外観を持った数字やマーカーとテキスタイル製ストラップによって、普遍的なミリタリースタイルが表現されている。

ブラックカラーのケースにテキスタイル製ストラップ、ふたつのブランド共にミリタリー調なスタイルと外観を提案している。IWC「ビッグ・パイロット・ウォッチ・パーペチュアル・カレンダー"トップガン"」とブライトリングの「アベンジャー ハリケーン」。
(つづく)


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