ブレゲ新生マリーンが拡張する 〝エレガンス スポーティー〟の 版図 [前編]

FEATURE本誌記事
2018.08.10

MARINE 5517

自動巻き中3針の「マリーン 5517」は、新しいコレクションの中で機能的には最もシンプルなモデル。デザインも、第2世代「マリーン 5817」より一段とシンプルになった。アラームGMTやクロノグラフのような機能面での特徴に代わり、5517で際立つのは、ブレゲが導入した〝新生マリーン〟のデザインコードだ。ケースやダイアルはもとより、ディテールにまで行き渡る新鮮なデザインがニュールックを演出する。そこには都会的なラグジュアリーウォッチのセンスさえ漂う。

マリーン 5517
3時位置の日付表示、新しいタイプのブレゲ針と国際海洋信号旗の“B”を模した秒針のカウンターウェイト、立体的な蓄光インデックスなど、すべてが刷新された。自動巻き(Cal.777A)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。シリコン製ヒゲゼンマイと脱進機搭載。Ti(直径40mm)。10気圧防水。予価188万円。今秋発売予定。

シンプルだからこそ際立つ軽妙洒脱な新デザインの汎用性

 時間をかけて新作を加えてきたこれまでの慣例を破り、グランドコンプリケーションを皮切りに、アラームGMTやクロノグラフ、そしてこの中3針モデルを一挙に、しかもバリエーション豊かに発表したブレゲ。スピード感を持った驚くべき創作姿勢は、新生マリーンの全モデルに共通するデザインコードに象徴されている。

 第2世代「マリーンⅡ」で明確に示されたコンセプト、すなわち〝現代人のライフスタイルに合わせ、活動的な場面にふさわしい頑強な作りで、スポーティーかつエレガントな感覚のラグジュアリーウォッチ〟は、間違いなく最新コレクションにも受け継がれているものの、具体的なディテールをつぶさに見ていくと、ダイアルの仕上げ、ブレゲ針や蓄光インデックス、ラグ一体型ケース、側面のフルート装飾、リュウズと周辺のデザインなどなど……第2世代からの直接的な流用は皆無と言えるほど変貌している。

 一目で見て違いを感じさせるのは、チタン製の「マリーン 5517」だろう。海のテーマに即した波模様のギヨシェ彫りをあえて用いず、スレートグレーに仕上げたダイアルとスタイリッシュな構築美が際立つ新型ケースは、海よりも都会的なファッション感覚が勝って見える。重厚な老舗のイメージが強いブレゲにあって、いかにも若々しく軽妙洒脱というか、このような新鮮なキャラクターはブランドでも初めてではないだろうか。

 だがしかし、国際海洋信号旗の〝B〟をアレンジした秒針や船の舵を模した自動巻きローターなど、海の時計を示す証しがそこかしこに見て取れ、さすがに主題からの逸脱はない。いかにもシンプルとはいえ、背後には見事な計算がある。

ページ上のTiモデルに加え、WGおよびRGモデルがラインナップされる。ゴールド製のモデルはすべてダイアルにウェーブ模様のギヨシェ彫りが共通して施され、スタイリッシュなチタンに対して、よりエレガントで格調高い雰囲気を醸し出す。全モデルともストラップはレザー(アリゲーター)とラバーの2種類が用意される。(上)18KWGと(下)18KRG。ともに予価310万円。今秋発売予定。