腕時計を長持ちさせるコツは? 正しいケアの方法を時計専門誌の編集長が伝授

FEATUREぜんまい知恵袋
2022.10.28

自分にとって大切な腕時計は、いつまでも長く愛用し続けたいもの。重要となるのは日々の手入れだが、正しい方法でケアを行えば、100万円以上もするような高級時計でなくても、寿命を大幅に延ばすことができる。今回は、腕時計の適切な手入れ方法を解説しよう。

広田雅将

2018年9月13日掲載記事

日頃のクリーニングが腕時計の寿命を延ばす

 モノを長い期間使い続けるためには、日々の適切なケアが非常に大切だ。特に腕時計は、毎日の生活を共にし、いつまでも愛用したいというユーザーも多いだろう。

腕時計の寿命は、ユーザーの取り扱い方法によって大きく変わってくる場合がほとんど。丁寧に使いさえすれば、時計の寿命はぐっと延びるはずだ。しかし間違った方法で使い続けるとたちまち不具合が起きて寿命を短くし、最悪の場合使えなくなってしまうケースもある。

 効果的な手入れ行うためには、ポイントを押さえた正しい方法を知ることが重要である。

汚れを布で拭き取る

 何日間も腕時計を着用し続けると、ケースとブレスレットのつなぎ目やリュウズとケースの間などに、汗や皮脂、ホコリなどの汚れがたまってくる。汗をかく夏場は特に要注意で、1日着用しただけでも皮脂汚れがたまりやすい。また、ヴィンテージウォッチなどのひと昔前の時計は、使われている金属の種類によって、汗などの水分が長期間たまると錆びるものも少なくない。

 着用した後は、ひとまず汚れを落とすことが何より大切。最も手軽な方法は、布を使って汚れを除去することだ。市販のマイクロファイバークロスやセーム革といった柔らかい生地を使用し、腕時計の表面全体を優しく拭き取る。綿棒を使うと、より細かな隙間にも手が届くだろう。

メンテナンス

腕時計の裏蓋側やベルト部分、リュウズは直接肌に触れるため重点的にチェックする。またケースの素材が18Kゴールドの腕時計は、布で強く擦ると表面に傷がついてしまう恐れがあるため、特に優しく慎重に行う。

 また、濡れたタオルやティッシュは汚れをよく落としそうだが、ケース内に水分が入り込む可能性があるため基本的にNG行為。防水性の低いモデルや非防水のヴィンテージウォッチならばなおさらだ。


レザーストラップは水分に注意

 生物の革を使用した天然のレザーストラップは水分に弱いとされている。しばらく使用したら交換するのが一般的だが、着用後に乾いた布で汗を丁寧に拭っておけば、靴や鞄などと同様に何もしないよりも寿命が延びる。また、保管の際は温度の高い場所や、直射日光の当たる場所には置かないことが重要だ。

ストラップ

近年では、レザーストラップでも防水性を高めたものが販売されている。革にコーティングを施したり、裏地にラバー素材を貼り付けたりとさまざまだ。写真はレザーブランド、ジャン・ルソーの撥水レザーを使った「ウォーター・リピレント アリゲーター ストラップ」。寿命を延ばすため、このような新しいタイプのストラップを選ぶのもひとつの手だ。


ムーブメントへの気遣いも忘れずに

 外装はもちろんだが、時計を駆動させるケース内部のムーブメント(駆動装置)への気遣いも重要だ。電池で動くクォーツ式、ゼンマイを巻いて動く機械式、どちらも細かなパーツの集合体であることは変わりないため、常に衝撃が加わるような雑な使い方は避けるべきだ。

 また直射日光は、文字盤やストラップに限らずムーブメントにも悪影響を及ぼす。その理由は、密閉されたムーブメント内部は日光によって高温になり、ムーブメントのさまざまな場所に使われている油が変質する恐れがあるからだ。こうなってしまった場合は、放置せずに時計店などでオーバーホールの依頼をすることが重要である。

ムーブメント

写真はクロノグラフ機構を搭載した自動巻きムーブメント。油が注されているのは、パーツ同士が接触するレバー類や、回転する軸の摩耗を防ぐ人工ルビー製の穴石(ピンク色の部分)。この油が変質すると時計の精度が安定しなくなるだけでなく、ボタンの操作性も悪化する。

 そして、腕の動きでゼンマイを巻き上げる自動巻き時計は、一度止まったら、あまりリュウズを手で巻かないことも覚えておきたい。あくまでも自動巻きムーブメントの手巻き機構は、時計を始動させる補助に過ぎないので、使いすぎると歯車などのパーツが摩耗して故障につながってしまう。こちらに関しては「自動巻き時計が止まった場合、手巻きをすべきか? / ぜんまい知恵袋〜時計の疑問に答えます〜」の記事をチェックしてほしい。


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